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支援を求めるExxonMobilを横目にスタートアップ企業は炭素回収に取り組む

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米国時間4月19日、温室効果ガスの排出量が最も多い企業の1つであり、長年気候変動に関する規制に抵抗してきたExxonMobil(エクソンモービル)は、メキシコ湾沖の地層に何億トンもの二酸化炭素を貯留する1000億ドル(約11兆円)の大規模プロジェクトの提案(政府も一部支援)を発表した。

Exxonの厚かましい支援の要請と対照的に、複数のスタートアップ企業がすでに二酸化炭素の回収・貯留や炭素利用プロジェクトに取り組み、商業化に向けた重要なマイルストーンを発表している。

Charm Industrial(チャームインダストリアル)は、Stripe(ストライプ)との契約により、同社の技術の初回パイロットテストを完了したばかりだ。このパイロットテストでは、416トン相当の二酸化炭素を大気中から除去した。Exxonがメキシコ湾岸に設置するとされる仮説的なプロジェクトで回収するはずの1億トンに比べればごくわずかにすぎないが、両者の違いはCharm Industrialが実際に二酸化炭素を回収することに成功していることだ。

Shopify(ショッピファイ)、Microsoft(マイクロソフト)、CarbonPlan(カーボンプラン)、CarbonDirect(カーボンダイレクト)などの外部機関によって検証されたCharmの技術では、バイオマスをオイル状の物質に変換し、その物質を地下に封じ込めることで、二酸化炭素を永久に隔離することができるという。

Charmは将来的に、そのバイオマス由来のオイル状物質を使って「グリーン水素」を生産する。可燃性の燃料を必要とする産業は石油や天然ガスの代わりにグリーン水素を利用することになるだろう。

Charmがバイオマスをオイル状物質に変換して地下に貯蔵する一方、CarbonCure(カーボンキュア)、Blue Planet(ブループラネット)、Solidia(ソリディア)、Forterra(フォーテラ)、CarbiCrete(カービクリート)、Brimstone Energy(ブリムストーンエナジー)などは二酸化炭素を回収して建築資材に固定している。

CarbonCureの創業者かつCEOであるRob Niven(ロブ・ニヴェン)氏は次のように話す。「CarbonCureには、2030年までに年間5億トンの二酸化炭素を削減するという使命があります。イノベーションの面で、私たちは、CO2をバリューチェーンの中で付加価値をつけて極めて低いコストで利用する科学分野のパイオニアです」「私たちはCO2を、コンクリート生産を行うための付加価値のあるインプットと見なしています。利益は出るはずです」。

CarbonCureは、CarbonBuilt(カーボンビルト)と並んで、2000万ドル(約22億円)の炭素回収技術XPRIZEの半分を獲得したばかりだが、仮説的な二酸化炭素除去ソリューションではないとニヴェン氏は強調する。同社はすでに世界各地で330のプラントを稼働させ、排出された二酸化炭素を回収して建材に封じ込めている。

炭素利用の適用は、産業界のCO2排出量を削減するために重要だが、各国が気候変動に対する目標を達成するためには、世界中でCO2をまき散らすエネルギー源への依存を大きく減らし、同時にすでに大気中に存在する大量の温室効果ガスを恒久的に削減する必要がある。

ExxonMobilの二酸化炭素の永久封じ込めを検討する大規模なプロジェクトの提案は、提案元に疑問があるだけで必ずしも間違っているわけではない。

米国エネルギー省は、メキシコ湾岸には5000億トンの二酸化炭素を貯蔵できる地層があると考えている(ExxonMobilは、米国の産業界と発電所の総排出量の130年分以上に相当すると発表している)。しかしExxonMobilは、この計算を根拠に、同社が(政府からもっと多くの補助金を獲得しながら)今までどおりのビジネスを続けることができるとしている。

ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたExxonMobilのトップの説明は次のとおりだ。

ヒューストンのCCS(二酸化炭素回収・貯留)イノベーションゾーンのコンセプトは、バイデン大統領が提唱した気候変動問題に対する「政府一丸」のアプローチを必要とします。私たちの大規模プロジェクトの経験から、このアプローチは、CO2を回収するための装置を製造・設置し、それをパイプラインで輸送して貯蔵するために必要な数万人の新規雇用を創出することができると考えています。また、このようなプロジェクトは、CO2排出量を削減しようとしている産業における何千もの既存の雇用を守ることにもなります。つまり、大規模なCCSは、CO2排出量を減らしながら経済を守ることができるのです。

石油業界の経営者たちは、再生可能エネルギーや環境に優しい経済への移行が米国の雇用を奪うという誤ったストーリーに踊らされている。Scientific American(サイエンティフィック・アメリカン)に掲載された研究結果によると、石油産業の雇用が失われるのは事実だが、他の雇用機会がそれに置き換わるという。

Marilyn Brown(マリリン・ブラウン)氏とMajid Ahmadi(マジッド・アフマディ)氏は次のように著す。「より積極的な60ドル(約6500円)の炭素税を導入した場合、米国の雇用はリファレンスケースの予測を上回るが、その増加幅は25ドル(約2700円)の場合よりも小さい」「60ドルの炭素税では、エネルギー産業の雇用は大きく減るが、エネルギー価格の上昇によりエネルギー効率化が必要になるので、それによる雇用の増加の方がさらに大きい。全体として、2020年から2050年の間に3500万人分の雇用が創出され、ほぼすべての地域で雇用が純増するだろう」。

ExxonMobilをはじめとする石油メジャーに、世界的に構築されつつある新しいエネルギー経済の中で果たすべき役割があることは間違いないだろう。しかし、これらの企業が従来どおりの考え方で事業を続けることはできない。彼らは石炭と同じように、徐々に時代遅れになっていき、何千もの雇用や地域経済が失われるリスクがある。

二酸化炭素回収・貯留はこのような事態を避けるための解決策の一部であるが、石油会社は事業を継続し、株主に価値を提供するためになすべきことは他にもある。ExxonMobilは過去130年間の排出量に注目するのではなく、今後130年間のゼロエミッション化を目指すべきだ。

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タグ:ExxonMobil二酸化炭素アメリカ

画像クレジット:sharply_done / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)