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アフリカの決済サービスFlutterwaveが約185億円を調達、企業価値が約1090億円以上に

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アフリカ全土におけるフィンテックサービスの成長は今も続いており、この業界にあふれるビジネスチャンスをとらえようと、さまざまな投資会社が変わらず強気の姿勢で挑んでいる。そんな中、新しいユニコーン企業が頭角を現した。アフリカの決済サービス会社Flutterwave(フラッターウェーブ)が1億7000万ドル(約185億円)を調達し、企業価値を10億ドル(約1090億円)以上に押し上げたことを発表したのだ。

シリーズCラウンドを率いたのは、ニューヨークに拠点をおく投資会社Avenir Growth Capital(アベニア・グロース・キャピタル)と、米国でヘッジファンドと投資をてがけるTiger Global(タイガー・グローバル)だ。参加した投資会社には、DST Global(ディーエスティー・グローバル)、Early Capital Berrywood(アーリー・キャピタル・ベリーウッド)、Green Visor Capital(グリーン・ビザー・キャピタル)、Greycroft Capital(グレークロフト・キャピタル)、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)、Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)、Tiger Management(タイガー・マネジメント)、Worldpay FIS(ワールドペイ・エフアイエス)、9yards Capital(ナインヤーズ・キャピタル)など、新設の会社から基盤のある会社までさまざまな企業が集まった。

2018年、フラッターウェーブはシリーズBで3500万ドル(約38億円)、シリーズAで2000万ドル(約22億円)を獲得し、その1年後にシリーズCラウンドに突入した。結果として合計2億2500万ドル(約245億円)を調達し、アフリカで2億ドル(約218億円)以上の投資を確保した数少ないスタートアップ企業の1つとなった。

フラッターウェーブは、2016年にナイジェリアと米国を拠点とする決済サービス会社として誕生し、Lagos(ラゴス)とサンフランシスコに拠点を構えた。以来、APIを経由するカスタマイズ可能な決済アプリケーションを構築できるよう多くの企業をサポートしている。

同社がシリーズBで投資を獲得した際、我々はフラッターウェーブが54億ドル(約5880億円)に相当する1億7万回もの取引を処理したことを報じた。これまでにこの数字はさらに膨れ上がり、取引回数は1億4000万回、金額は90億ドル(約9800億円)を超えている。アフリカ外部の企業が同大陸で事業を拡大する支援も同社では行っており、これまでにBooking.com(ブッキングドットコム)、Flywire(フライワイヤー)、Uber(ウーバー)といった大手多国籍企業を顧客としている。

現在、29万社以上がフラッターウェーブのプラットフォームを使って決済を処理していると同社はいう。声明によると、同社のサービスでは「150種類の通貨に対応しており、現地のカードから国際カード、モバイルウォレット、銀行振込、Barter by Flutterwave(バーター・バイ・フラッターウェーブ)など複数の決済モード」を利用できるということだ。

ウェブサイトからは、アフリカの11の国で積極的に事業を展開していることが伺えるが「GB」のニックネームで知られるフラッターウェーブのCEOであるOlugbenga Agboola(オルグベンガ・アグブーラ)氏はTechCrunchの取材に応じ、同社がアフリカの20の国でサービスを提供し、同社のインフラは同大陸の33以上の国に広がっていると答えた。

設立5年の同社にとって、2020年は大きな転換点となる年だった。2回目の投資が行われたのは、新型コロナウイルス感染症がアフリカを直撃する直前のことだった。一部の企業とは異なり、フラッターウェーブのような決済サービス会社はマイナスの影響を受けることはなかった。

アグブーラ氏が具体的な数字を挙げることはなかったが、2020年はパンデミックの影響で収益が100%以上増えたと話す。この成長もあって、2018年からの複合年間成長率は226%にも上った。

CEOによるとこの成長は「新型コロナウイルス感染症の恩恵を受けた分野」(フラッターウェーブは、パンデミックによってプラスの影響を受けた分野をこのように表現している)のアクティビティが増加した結果だという。例えば、ストリーミング、ゲーム、送金、eコマースといった分野がこれに該当する。アグブーラ氏は加えて、こうした分野の成長にあやかり、引き続き事業の拡大を進めていくつもりだと話す。

また、パンデミックによるロックダウン期間中、フラッターウェーブが業者向けにFlutterwave Store(フラッターウェーブ・ストア)の導入に取り組んだこともプラスとなった。このサービスは15のアフリカ諸国で展開され、2万社以上がこのサービスを使ってオンライン店舗を立ち上げ、ネット販売を開始した。

画像クレジット:Flutterwave

シリーズCにおける投資は、フラッターウェーブが目標としている、世界的な決済サービス会社へと成長するために活用される。この資金を活かして、現在の市場における顧客獲得をスピードアップさせる予定だという。また、ユーザー数が50万人を超える同社の既存サービス「バーター」などを改善する。Flutterwave Mobile(フラッターウェーブ・モバイル)は同社が導入を進めている新規サービスの1つで、これは設立者の言葉を借りると「業者のモバイルデバイスをPOS化して決済することで、販売できるようにする」サービスだ。

アグブーラ氏は声明のなかで、300人を超える社内のスタッフに加え、投資家、顧客、さらにはCentral Bank of Nigeria(CBN、セントラル・バンク・オブ・ナイジェリア)などの規制機関を挙げ、フラッターウェーブの成功を支えてくれていることに感謝の意を表している。

ナイジェリアの規制機関がここのところ、フィンテック企業に不都合かつ疑問の余地がある規制を課していることを考えると、CEOが最後に規制機関を挙げたことを不思議に思う読者もいるだろう。

だが、アグブーラ氏はそのように考えていない。現行のCBN総裁の管理によってセントラルバンクの規制の枠組みが安定したおかげで、フラッターウェーブなどのフィンテック企業が成長できているということを次のように語っている。

「例えば、フラッターウェーブが設立されたのは、総裁の着任直後でした。ライセンスを取得し、事業を拡大できたのは、我々に有利な制度があったからです。あまり知られていませんが、ナイジェリアにはBVNシステムやNIPシステムなど、世界の先駆けとなるイノベーションがいくつもあります。ナイジェリアは決済イノベーションの最前線を10年以上にわたって常に進んでいますが、これは将来を見据えたCBNの方針があってこそのことです」

売却か、買収か、そして企業価値10億ドルへの扉

この時期に紛れもなく決済サービスで頂点に立ったフィンテック企業は、Interswitch(インタースイッチ)だ。2019年にVisa(ビザ)が株式の20%を取得し、現在は企業価値10億ドル(約1090億円)の大手決済サービス会社となった。ナイジェリアでこのレベルまで拡大したフィンテック企業は、インタースイッチとフラッターウェーブの2社だけである。アフリカ全土で見てもその数は4社のみで、残る2つは上場企業であるアフリカのeコマース会社Jumia(ジュミア)と、エジプトの決済サービス会社Fawry(ファウリー)である。

1億7000万ドル(約185億円)を調達し、10億ドル(約1090億円)の企業価値を得たフラッターウェーブの大躍進は、アフリカのスタートアップ業界における歴史的なマイルストーンといえる。先述した企業の価値を疑う余地はないが、何をもって「スタートアップ企業」あるいは「アフリカの企業」と定義するかには疑問が残る。

例えば、インタースイッチが設立されたのは2002年までさかのぼるため、非公開会社だったとはいえスタートアップ企業とはいいがたい。ファウリーは2007年に設立されたが、上場した翌年の2020年まで10億ドル(約1090億円)の企業とはならなかった。上場企業のジュミアは非公開会社として2016年にユニコーン企業としての地位を獲得したものの、アフリカの企業かどうかという点は賛否両論だ。

一方、企業価値10億ドル(約1090億円)のアフリカのスタートアップ企業として、フラッターウェーブはすべての条件を満たしている。アフリカに拠点をおき、アフリカ人によって設立され、設立後10年以内に企業価値が10億ドル(約1090億円)まで到達したからだ。

アフリカのテクノロジーエコシステムに携わる関係者のほとんどは、フラッターウェーブがここまで成長することをある程度予測していたものの、そのタイミングは大方の予想よりも早かった。フラッターウェーブが2020年にシリーズBで3500万ドル(約38億円)を調達したのち、次のラウンドでその約5倍の資金を獲得し、翌年に10億ドル(約1090億円)の企業価値に達するとは誰も思っていなかっただろう。

フラッターウェーブの新しい成長指標についてアグブーラ氏に尋ねてみたところ、このような数字はほとんど意味を持たないということだ。「言ってみれば、価値という指標には理論以外のファクターも絡んでいますよね。以前、YC(ワイシー)の『アフリカで最も価値の高い企業』に選出されたこともありましたが、指標は上がったり下がったりするものなので、そこまで重視していないんです。私たちが常に重視している指標は、収益と顧客成長率、そしてリテンション率です」と彼は語った。

確かにその通りではあるが、企業が成長するにつれ、採算性や売却に関する疑問というのは頻繁に生じるものだ。

Paystack(ペイスタック)はフラッターウェーブとよく比較されるナイジェリアの決済サービス会社だが、2億ドル(約218億円)を超える額でStripeに2020年買収された。この頃、フラッターウェーブも買収されるのではないかといううわさが広がったが、シリーズCで資金を調達したため、現時点で同社に売却の予定はなさそうだ。仮にYCの後押しを受ける同社が売却する場合は、IPOを申請することになるかもしれない。

「私たちも他のスタートアップ企業と同じように、投資家向けに売買の指標となるツールを作れないか模索しています。上場も検討事項の重要な部分ですが、顧客に最高の価値を提供することに注力しているのが現状です」とアグブーラ氏は述べる。

同社のこれまでの発展には、パートナーシップが大きく関わってきた。2019年には、フラッターウェーブはビザとパートナーシップを結び、アフリカと中国間でバーターとAlipay(アリペイ)のデジタル決済を展開した。2020年にはアフリカ地域での決済サービス展開のため、ワールドペイ・エフアイエスとのパートナーシップ締結を発表したのである。

フラッターウェーブは複数の大企業とパートナーシップを結んできたが、アグブーラ氏は小規模の企業とも同じようにパートナーシップを築き、買収の可能性を探っていきたいと話す。

「事業を拡大するにはパートナーが必要なので、決済にはパートナーシップが必要だと考えています。私たちのビジョンは、アフリカを1つの国にすることです。パートナーシップを締結して拡大するなかで、同じような起業精神とビジョンを持つ前途有望な企業と出会ったときには、買収も検討しますよ」

サハラ以南のアフリカの大部分でサービスを提供するようになった今、フラッターウェーブの次の計画は北アフリカに進出することだとアグブーラ氏は話す。北アフリカではファウリーなど現地企業との競合が待ち受けていると考えられるが、そこは問題にならない。アフリカのフィンテック市場は非常に大きいため、複数の企業が共存できる余裕があるからだ。

これこそ、投資家がこぞってアフリカに投資する理由の1つである。現地のみならず世界の投資家も力を入れるほど人気があるこの分野には2020年、さまざまな調達元からベンチャーキャピタルの合計投資額の25~31%が集まった。

しかし、こうした企業のウェブサイトによると、フラッターウェーブの主な投資企業であるアベニア・グロース・キャピタルとタイガー・グローバルが、アフリカのフィンテック業界のスタートアップ企業を支援するのは、今回が初めてとのことだ。前者が初めて支援するアフリカのスタートアップ企業はフラッターウェーブであるとのことだが、タイガー・グローバルは以前にもナイジェリアのメディア企業iROKOtv(イロコ・ティービー)と南アフリカのeコマース会社Takealot(テイク・ア・ロット)への投資で知られている。

アベニア・グロース・キャピタルのJamie Reynolds(ジェイミー・レイノルズ)氏とタイガー・グローバルのScott Shleifer(スコット・シュライファー)氏はどちらも、国際的で世界レベルの決済サービス会社を目指すフラッターウェーブの歩みを後押しすると述べている。

アグブーラ氏は今後の展望として、フラッターウェーブが注力するのは29万もの業者を継続的に支援して、ビジネスをグローバルに展開できるようサポートすることだと断言する。

「今後もアフリカからさらに多くの事業を世界に発信しつつ、世界のさまざまなサービスをもっとアフリカに取り入れていきます。大陸全体に投資を拡大し、当社のプラットフォームを私たちの生活や暮らしにさらに組み込んでいけることが楽しみです」。

関連記事:2020年におけるアフリカのスタートアップの資金調達状況

カテゴリー:フィンテック
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画像クレジット:Techpoint Africa

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)