これからのスタートアップ市場への賭け

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これからのスタートアップ市場への賭け

先週、米国中西部への投資に焦点を当てるベンチャーキャピタルM25が、3180万ドル(約34億5000万円)相当の新しいファンドを発表した。The Exchengeが目にした同VCのリリースによれば、今回のファンドはこれまでのものに比べて約3倍の規模があるという。

M25のパートナーであるMike Asem(マイク・アセム)氏に、今回のラウンドについての話を聞いた。アセム氏がM25に参加したのは、パートナーのVictor Gutwein (ビクター・グートゥイン)氏が、2016年に小規模な100万ドル(約1億1000万円)のファンドで先陣を切ったあとだ。アセム氏とグートゥイン氏の2人は、(同VCにとっては2つめとなる)最初の重要なファンドから同VCを率いてきた。

アセム氏は、第3のファンドでは、彼のチームは2500万ドル(約27億1000万円)から3000万ドル(約32億6000万円)を目標としていたという。つまり資金調達という面ではよそよりも大きなものとなった。今日のベンチャーキャピタル市場で、資金がVCファンドとスタートアップの両方に投資されている勢いを考えれば、それは驚くべきことではない。

アセム氏はThe Echangeに対して、M25がその第3のファンドからすでに投資を行っていると語った。その投資対象には、成長率について良い話を耳にするCASHDROP(キャッシュドロップ)などが含まれている(M25が資本を入れたCASHDROPについてのさらなる詳細はこちら)。

それらはみな、けっこうな話だが、M25のおもしろい点は、同社が中西部に本社を置くスタートアップだけに投資しているということだ。地理的に特別な注力をおこなっているファンドに話を聞いてみると、多くの場合、それは単に「注力している」というだけの答になる。この答は、よりハードで速いM25のルールとは対照的だ。グループはその信念に従う形で、今より多くの資本と年間12〜15の案件を行う予定だ。

アセム氏によれば、M25はその取引の3分の1を拠点であるシカゴで行っているが、これまでのところ24の都市でスタートアップに資本を投入しているという。TechCrunchは先週初めに、そうした企業の1つであり、500万ドル(約5億4000万円)以上の新しい資金を調達した、Metafy(メタファイ)を取り上げた。

なぜM25は、中西部のことを、資本を投入する場所であり、大きなリターンを生み出す場所だと考えるのだろうか?アセム氏は、チームの命題を支える多くの視点を挙げた。それは、中西部の経済力、M25を設立する前にパートナーと彼が地域で開発したネットワーク、そして彼の会社が投資する段階で、その地域での評価額が魅力的であることが証明できるという事実などだ。そうした企業は、十分に特色を持っているので、彼の会社は約1億ドル(約108億6000万円)程度の、より大きな資本をつぎ込むVCが好む規模には足りないエグジットでも、立派なリターンを得ることができるという。

そうした代替地域に賭けているのはM25だけではない。The Exchangeは米国時間5月7日に、Armory Square VenturesSomak Chattopadhyay(ソマック・チャトパディエイ)氏にも話を聞いた。Armory Square Venturesはニューヨーク州北部に拠点を置き、私たちがポスト製造都市と呼ぶ場所にあるB2Bのソフトウェア会社に投資しているVCだ。その投資先の1つが公開され、同グループの最新ファンドは最初のファンドの規模の数倍となった。Armoryは現在、約6000万ドル(約65億1000万円)の運用資産残高(AUM)を所有している。

つまり、ベンチャーキャピタルブームは、a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)のような会社が、そこでさらに10億ドル、こちらでさらに10億ドルといった調達ラウンドを行う手助けをするだけではないということだ。しかし、スタートアップと非公開資本向けの、全体として熱い市場が、たとえ小規模企業でも比較的新しい分野に挑戦する際に、より多くの資本を調達することを助けてくれる。心強い話だ。

オンデマンド課金と、保険ゲームの理解

先週The Exchangeは、Twilio(トゥイリオ)のCFOであるKhozema Shipchandler(コゼマ・シップチャンドラー)氏から、彼の会社の業績レポートについての話をきいた。より詳細な数字についてはここで読むことができる。手短に言えば、良い四半期だったとのこと。しかし、私たちの対話で最も重要だったのは、シップチャンドラー氏がTwilioがどこを収益の中心に据えるのかを繰り返し語ったことだった。

簡単にいうなら、Twilioは開発者が通信サービスを活用できるAPIの開発でよく知られた存在だ。それらを使う開発者とその雇い主は、Twilioの使用量に応じた支払いを行う。しかし、歴史を重ねながらTwilioは次々に多くの企業を買収し、2016年のIPOの後には、多様なプロダクトセットを構築している。

そこで私たちは興味本位の質問をしてみた。現在、ソフトウェア業界で論争になっているオンデマンド課金とサブスク課金に関する議論では、同社はどちらの立場に立つのだろうか?Twilioは、SaaSサービスであるSegment(セグメント)を買収したにもかかわらず、最初のスタイルを頑固に守っている。シップチャンドラー氏によれば、Twilio の収益はいまでも70%以上がオンデマンドであり、同社は、顧客が自社の売上を伸ばせるときに限って彼らのサービスをよりたくさん購入するようになって欲しいと考えていると語る。

ということでスタートアップたちは、スケールアップ時におそらくオンデマンド価格をあきらめなくても良いだろう。Twilioは巨大で、そのことをしっかり続けていくだろう。

その後、Root(ルート)の業績報告も手に入った。そちらも詳細はここで読むことができる。The ExchangeはRootのIPO後のパフォーマンスに注目しているが、それは非公開時代の最終段階で特に注目していたからだけではなく、まだ非公開である新しいインシュアランス企業(ネオインシュアランス)たちの、先行モデルの役割を果たしているからだ。それは同様のネオインシュアランス企業であるHippo(ヒッポ)が、この先SPAC(特別買収目的会社)を介して公開を行う際に重要なものとなる。

Rootの最高経営責任者であるAlex Timm(アレックス・ティム)氏によれば、彼の会社の第1四半期の業績は好調で、予想よりも多額の直接保険料を得て、損失率も低くスタートできたという。同社はまた、IPO後も非常に現金豊富な状態を維持してティム氏は同社のデータサイエンスの仕事が、Rootの保険引受モデルをまだまだ大幅に改善できると確信している。

ということで、予想よりも速く成長し、多くの現金を持ち、経済性が向上して、攻めの技術を持っているとくれば…Rootの株は当然爆上げだよね?残念。そうではない。Rootの公開市場での値動きは少々ハラハラさせるものだった。The Exchangeはティム氏に対して、彼の考える会社の業績並びに将来と、現在の市場での評価の間の差異につどう見ているのかを質問した。彼は、保険業界の人々が常に彼らの技術を活かせるわけではなく。技術系の人々も必ずしもRootのインシュアランスビジネスを理解しているとは限らないと答えた。

それは厳しい話だ。しかし現在のバーンレートから計算される残された何年もの時間を考えるなら、Rootはこれからの10四半期程度のうちに、そのモデルが成り立つことを示して、批判が間違っていることを示せるだけの十分な余裕は残されている。とはいえ、たとえNext Insurance(ネクスト・インシュアランス)が、再び新しいより高い評価額で、新規の資金調達を行ったばかりだとしても、Rootの株価は、まだ非公開のネオインシュアランス企業たちにとってすばらしいとはいえないものだ。

関連記事:中小企業向け保険テックのNext Insuranceが276.8億円を調達、1年足らずで評価額を4428億円超に倍増

企業支出業界にとって大きな動きが

この記事をみなさんが読む頃には、Bill.com(ビル・コム)が企業支出ユニコーンのDivvy(ディビー)を、25億ドル(約2714億円)で買収しているはずだ。もし気になるなら、調べた細かい数字はここにある。

しかし、Divvyの競合他社であるRamp(ランプ)とBrex(ブレックス)のCEOから受け取ったメモをご紹介した後に、さらにご紹介しておきたいコメントを受け取った。企業支出スタートアップAirbase(エアベース)の創業者でCEOのThejo Kote(テジョ・コート)氏が、Bill.comが投資家たちに共有したDivvyの数字にちょっとした計算を行い、同社の3月の支払い額とアクティブな顧客アカウントから「同社の1顧客あたりの平均支出額は4万4400ドル(約482万円)」だというのだ。

それは良いのだろうか?それとも悪いのだろうか?コート氏は感心していない。なにしろ彼はAirbaseの「1顧客あたりの平均支出額はDivvyのほぼ10倍」で「おおよそ月額37万5000ドル(約4071万円)」だというのだ。何がこの違いを生み出しているのだろうか?コーテ氏の見立てでは、AirbaseがDivvyよりも、より大きな企業に注力して手広く営業を行ってBill.com自身やExpensify(エクスペンシファイ)のソフトウェアを上回る機能を持つことで、結果を出せているのだ。

この大小企業の支出管理における戦争が、ソフトウェアの機能でヒートアップしているということをお伝えしておきたい。Divvyを除くと、おそらくRampが企業カードに関係するソフトウェアに課金しない企業の中で、最大のプレイヤーだ。Brexは、定期的に課金を行うソフトウェア製品を最近リリースした(興味がある場合は、ここからさらにBrexについて読むことができる)。

その他のことなど

最後の2つのノートは、読者を笑わせるか、苦虫を噛み潰させるか、はたまた叫ばせるかのいずれかだ。

  1. The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)のEliot Brown(エリオット・ブラウン)氏は、The Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)のデータのいくつかを、先週ツイートした。その内容は2020年行われたおおよそ40社のSPAC(特別買取目的会社)案件のなかで、18社が半分以上の価値を失っているというものだ。そして、それらSPACの平均価値低下率は38%なのだ。やれやれ。
  2. そしてついに、すべてがピークに

今週は、よりたくさんのニュースをお届けする予定だ。たとえばKaltura(カルチュラ)とProcore(プロコア)のIPOについての続報や、Krispy Kreme(クリスピー・クリーム)のS1申請に関する何らかの調査結果だ。なにしろドーナツは命綱だからね。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchangeサブスクリプション保険SaaSSPAC

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)