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コンテンツモデレーションやオブジェクト識別などをAIベースのAPIで支援するHiveが92億調達

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ソーシャルメディアのプラットフォームにおいて、不適切なコンテンツの監視、削除は引き続き重要な課題で、プラットフォームはコンテンツモデレーションを迫られているか、少なくともその取り組みを強化することを求められている。このたび、物体やテキストの自動検出などのタスクを支援するデータセットと画像モデルを構築したスタートアップ企業が、多額の資金調達ラウンドを発表した。

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Hive(ハイブ)は、世界各地の約200万人分のクラウドソースに基づいてトレーニングデータを構築し、それを元に対象物の画像や単語、フレーズを自動識別する際に利用できるAPIのセットを提供している。このプロセスは、コンテンツモデレーションプラットフォームだけでなく、自律システムのアルゴリズム構築やバックオフィスのデータ処理などにも利用されている。同社は8500万ドル(約92億円)の資金調達ラウンドを完了し、評価額は20億ドル(約2200億円)となった。

Hiveの共同創業者かつCEOのKevin Guo(ケビン・グオ)氏は、次のように話す。「私たちの事業の中心は、これまで手動で行っていた作業を自動化することのできるAIモデルを構築することです」「RPA(Robotic Process Automation、仮想知的労働者)などのワークフローの自動化も重要なことですが、それらのシステムによって確立されたのは、非常に構造化されたタスクは人間がやらなくてもいい、ということだけで、構造化されていない他の多くのタスクには対応できません」。Hiveのモデルは、そのようなタスクを構造化して「人間に近いレベルの精度」を提供できる、とグオ氏は主張する。

今回の資金調達では、Glynn Capital(グリンキャピタル)が5000万ドル(約55億円)のシリーズDラウンドを主導し、General Catalyst(ジェネラルカタリスト)、Tomales Bay Capital(トマレスベイ・キャピタル)、Jericho Capital(ジェリコキャピタル)、Bain & Company(ベインアンドカンパニー)、その他の匿名の投資家が参加。Hiveは2020年にTomales Bay Capitalが主導した3500万ドル(約38億円)のシリーズCで、Bain & CompanyとVisa(ビザ)からの新たな戦略的投資を受けたことも認めている。同社はこれで1億2100万ドル(約130億円)を調達したことになる。

2017年に設立されたHiveはこれまであまり注目されていなかった。創業者のグオ氏が過去に手がけていたスタートアップ、すなわち彼がスタンフォード大学に在籍していた頃のプロジェクトから生まれたKiwiというQ&Aプラットフォームを戦略変更したものと考えられていたからだ。しかし同社はその後、Reddit(レディット)、Yubo(ユーボー)、Chatroulette(チャットルーレット)、Omegle(オメグル)、Tango(タンゴ)をはじめ、NBCUniversal(エヌビーシーユニバーサル)、Interpublic Group(インターパブリックグループ)、Walmart(ウォルマート)、Visa(ビザ)、Anheuser-Busch InBev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)など、興味深い顧客を水面下で獲得。合計約100社の顧客を持ち、2020年1年間で300%以上の成長を遂げた。

Hiveは画像識別からスタートし、自律的なシステムを構築する企業と協力してきた。実際、Zoomでグオ氏と話していると、ゴールデンゲートブリッジを駆け抜けるクルマなど、同社の事業のスクリーンショットが背景になっているのを観ることができる。

しかし最近では、Hiveの事業のほとんどはモデレーションに移行し、画像を含むコンテンツや、テキストやストリームオーディオを含むコンテンツがテキストに変換された後、適切にモデレーションされるようになった(自律走行車のモデリングは今でも背景として使用されているが、これは下の写真のようなコンテンツモデレーションの画像よりも邪魔にならないからだと思われる)。

画像クレジット:Hive under a CC BY 2.0 license.

Hive以外にも多くのスタートアップが、ハラスメントを含むオンラインの迷惑行為を管理したり、コンテンツモデレーションを支援したりできるプラットフォームを構築している。AIを使用することで解決される、または解決がサポートされると想像できる非常に古典的な問題でもあり、今日のインターネット上で大きな問題になっているのがその理由だ。

例えばSentropy(セントロピー)Block Party(ブロックパーティ)L1ght(ライト)Spectrum Labs(スペクトラム・ラボズ)などが挙げられるが、もちろん、大手テクノロジー企業が自社で開発したツールも数多くある(Instagram(インスタグラム)は、ユーザーがDMにおける迷惑行為に対処するための最新ツールを現地時間4月21日に発表したが、完全に自社開発とのことだ)。

しかし、グオ氏がいうように、Hiveが他社と差別化されるのは「クラウド」にある。ここ数年、同社は約200万人のユーザーからクラウドソーシングでフィードバックを得て、徐々にデータの蓄積を進めてきた。ユーザーは「通常の」お金かBitcoin(ビットコイン)で報酬を得て、さまざまな画像やテキストを調べて「迷惑行為」などを特定する(グオ氏によると、当時ビットコインは端役に過ぎなかったが、現在ではユーザーの大部分がビットコインを選ぶとのこと)。

このデータベースは、Hiveの顧客が独自のモデレーションツールや、頻度が高く迅速な識別を必要とするワークフローの実行に使用するAPIセットを強化するために使用される。

現在、Hiveのシステムにおける言語学習のほとんどは、英語の他にもスペイン語やフランス語などのよく使用される言語が中心だ。今回の資金調達の一部は、より多くの言語に対応するなど、システムの適用範囲を拡大するために使用される。Hiveが構築したデータとテクノロジーのユースケースも増えることになるだろう。

グオ氏によると、その1つが、ユーザーが読んだり観たりしたものに関連した広告を配信する、新しい広告手法だという。これは、(匿名化されているかどうかにかかわらず)ユーザーのデータやユーザーのオンラインブラウジング活動に基づくデータをまったく使用しないので、GDPR(EU一般データ保護規則)対応としては非常に優れた方法である。IP保護やレピュテーション・マネジメントのためにHiveを利用していたブランドが、自社の広告をするためにより効果的にHiveを活用できないかと検討している例もある。

今回の資金調達ラウンドで投資家を引きつけた理由の1つが、HiveのAIが持つ将来性である。AIがクラウドで構築されたことに焦点を当てると、その拡張性が強調される。

Glynn CapitalのプリンシパルであるCharlie Friedland(チャーリー・フリードランド)氏は、声明の中で「クラウドコンピューティングは、近年、驚異的に普及していますが、クラウドベースの機械学習ソリューションを活用している企業は今でもごく一部に過ぎません」「私たちは、クラウドで提供される機械学習モデルが、今後のクラウドの成長において最も重要な要素の1つになると考えており、Hiveはこの分野における当初からのリーダーとして有利な立場にあります」と述べている。

注目すべきは、少なくとも今のところ、Hiveの顧客の中に大手テクノロジー企業が公表されていないことだ。機密保持契約も理由の1つだと思われるが、グオ氏は、人が大量に関与する社内活動であるが故に、これまでは顧客の意欲があまり強くなかったと指摘している。しかし、AIツールが進歩しているだけでなく、ソーシャルメディアのコンテンツモデレーション担当者に関する物議を醸す話の続出や、彼らが被ったトラウマなど、複数の要因によって、状況は変わるかもしれない。

今後の取引については、Hiveの戦略的支援者や戦略的パートナーシップを介して行われる可能性がある。Hiveは現在、Cognizant(コグニザント)、Comscore(コムスコア)、Bain(ベイン、出資者)などの企業と提携しており、これらの企業は、人によるモデレーション作業の一部を外注することを選択した大規模なハイテク企業にコンサルティングやサービスを提供している。人によるモデレーション作業を移行しない場合でも、迷惑行為に関するポリシーの策定と遵守の両方を体系化しようとする大きな潮流においては、テクノロジーが果たす役割が大きくなる可能性はある。

5000万ドルと3500万ドルの2つの資金調達ラウンドがあることを明記して更新しました。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:コンテンツモデレーションHiveAPI資金調達誹謗中傷画像認識GDPR

画像クレジット:Wenjie Dong / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)