学術研究 / 学術調査 / アカデミックリサーチ(用語)

学会に最先端の感覚を持ち込むバーチャル会議・出版プラットフォーム「Morressier」

次の記事

保険大手Lemonadeのウェブサイトで顧客の個人情報が漏洩するバグが発覚

バーチャル会議の分野では、ユニコーン企業のHopin(ホーピン)が存在感を見せているが、同じ分野でまだ未開拓のニッチ、学会に焦点を当てて、数百万ドル(数億円)の資金を調達したスタートアップがある。

科学界に特化した仮想会議・出版プラットフォームを提供するMorressier(モレシア)が、米国時間5月13日、Owl Venturesが主導するシリーズAラウンドで、1800万ドル(約19億7000万円)を調達したことを発表した。このラウンドには、既存の投資家であるCherry VenturesとRedalpine Venture Partnersも参加した。

創業者のSami Benchekroun(サミ・ベンチェクルン)氏は、医療関係の仕事に就いていた両親の影響で、子どもの頃から医学・科学関係の学会に多く参加していた。やがて彼は、すべての会議の間にパターンがあることに気づき始めた。

「世界中の人々が集まり、印刷したポスターやプレゼンテーションを入れたUSBメモリなどの物理コンテンツを文字通り持参していました。でも3日後にはすべてのコンテンツが失われてしまうのです」と彼はいう。「がんの研究やHIVの研究をしている人たちが、完全にオフラインで会議に参加し、その場でさまざまなアイデアを共有しているのに、そのすべてが失われてしまうのです」。

その何とも言えない流れが気になった彼は、2014年に、学会で行われている初期知識の交換をデジタル化する試みを始めた。

「『民主化』というと安っぽい感じがしますが、本当にそうなんですよ」と彼はいう。「アフリカやアジアの人々は、主に米国やヨーロッパで行われている注目度の高いカンファレンスにアクセスする機会がないので、すべてをデジタル化することで、情報の共有ができるのです」。

Morressierは、儚く消えていくコンテンツに着目してスタートしたが、創業から7年近く経った現在、Morressierは学術会議の体験も、その中で行われている研究と同じくらい最先端のものにしたいと考えて、エンド・ツー・エンドのソフトウェアレイヤーを構築した。

まず、Morressierはとある学会と協力して、今後開催される学会のランディングページを作成している。そして研究者たちは、その会議での研究発表のために、応募することができる。その後、Morressierは、提出されたすべての研究投稿をまとめて、学会の研究者に研究の妥当性を検証して判断してもらうピアレビューのプロセスを開始する。ピアレビューのプロセスは、エクセルシートやワード文書などを使ってオフラインで行われることが多いが、Morressierはオペレーション全体のオンライン化を支援する。ピアレビューが終わると、Morressierがコンテンツライブラリを作成し、それたをバーチャルまたは対面式のカンファレンスに合わせて期限なしに公開することができる。

さらには、イベント主催者のためにコンテンツの配布をホストする。このことでイベント後の分析が可能になり、主催者はが発表された研究がどのように受け入れられたかを知ることができる。

ベンチェクルン氏は「説得力のあるエンド・ツー・エンドのソリューションを提供するために、2020年の初めにライブストリームビデオのコンポーネントを追加しました」という。

画像クレジット:Morressier

Morressierのサービスには70万以上のアカウントが登録されていて、American Chemical Society(アメリカ化学会)、Institute of Packaging Professionals(包装専門家協会)、Society of Photo-optical Instrumentation Engineers(国際光工学会)などと会議を開催している。同社は、学会と直接取引を行い、学会の組織や査読プロセスを管理するためのプラットフォームの定額利用料を請求することで収益を得ている。また、ドキュメント単位の料金体系も採用しているため、データベースにアップロードされる研究が多ければ多いほど、Morressierの収益は増える。

画像クレジット:Morressier

新しい資金を調達したばかりのMorressierにとって、さらなる成長は当然のことだが、これまでもMorressierは決して低迷していたわけではない。2020年に同社は、プラットフォーム上の著者数が6倍、ドキュメント数が13倍に成長し、売上は450万ドル(約4億9000万円)になった。このアーリーステージのスタートアップは、2020年の初頭には28人のスタッフを抱えていたが、2021年末までにはその数を100人に成長させる計画だ。

もちろん、創業者のベンチェクルン氏はこの成長の一因がパンデミックにあることを認めている。このことが教育現場に存在してきたこれまでの慣習を打ち破ることになったのだ。

彼は、採用のスピードに関しては「私はいつもこのことに関しては控え目に、けれども率直にお話しているのですが、研究や教育の分野では、残念ながら行政の構造のために、物事に時間がかかるのです」と語っている。実際同社は、最初の売上を得るまでに4年かかっている。それから3年後の現在、バーチャルイベントこそが未来だという世界的な理解のおかげで、Morressierは新たな資金を調達した。今こそ、パンデミックの影響で高成長ビジネスへの道が開かれたことを、Morressierが証明する時なのだ。

関連記事
リモートワーク疲れの市場を狙うバーチャルオフィススタートアップ
初期段階の研究をネットメディア上で一般公開しシェアするMorressierは研究の安定成長を支援

カテゴリー:EdTech
タグ:Morressier資金調達ビデオ会議学術研究

画像クレジット:Bryce Durbin / Bryce Durbin

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:sako)