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体外受精の複雑な世界の解明に挑むスタートアップ「Alife Health」

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世界では約1億8千万人が不妊に悩んでいる。米国では、8家庭に1家庭が妊娠に悩んでいる。男性不妊や流産も増え続けており、統計は悪化の一途をたどっている。

Paxton Maeder-York(パックストン・メーダー・ヨーク)氏が設立したサンフランシスコのスタートアップ企業Alife Health(アライフ・ヘルス)は、その手助けができると考えている。このスタートアップ企業は、人工知能を使って不妊治療の成果を高めたいと考えており、具体的には、体外受精を最適化しようとしている。体外受精は、成功率にばらつきがあり、高額で精神的にも負担のかかる一連の処置を必要とする不妊治療だ。

2020年設立されたこのスタートアップ企業は、Lux Capital(ラックス・キャピタル)に主導されて950万ドル(10億3155万円)のシードラウンドを実施したばかりだ。その他の投資企業としては、Amplo、IA Ventures、Springbank Collectiveの他、23andMeの創業者兼CEOであるAnne Wojcicki(アン・ウォイッキ)氏、Intuitive Surgical(インテュイティブサージカル)とAuris(オーリス)の創業者であるFred Moll、MosとSequoia Scoutの創業者であるAmira Yahyaoui(アミラ・ヤヒアウイ)氏などのエンジェル投資家がいる。

メーダー・ヨーク氏は「個別化された治療によるケアの質の向上と、成功率の向上によるコスト削減は、広範な集団だけでなく、特にマイノリティグループにも大きな影響を与えることができると個人的に考えています」と語る。

創業者であるメーダー・ヨーク氏は、2019年にJohnson & Johnsonに買収されたAuris Health(オーリス・ヘルス)で、肺がんと闘うための手術用ロボットを作ることからキャリアをスタートさせた。現在は、医師や患者が体外受精を行う際に役立つ方法の発見に取り組んでいる。

体外受精とは

体外受精(IVF)は、妊娠するまでに平均して3〜6回のサイクルが必要で、1回のサイクルにかかる費用は米国では1万〜2万ドル(約108万~217万円)と言われている。体外受精を行う女性は、毎週または隔週でホルモン剤を注射しなければならないが、それでも成功するかどうかはまちまちだ。また体外受精は、費用や期間だけでなく、精神的な負担も大きいのが特徴だ。

アライフ・ヘルスが成功すれば、複雑なプロセスの不確実性を軽減することができるかもしれない。

最近では、複数のスタートアップ企業が体外受精のコストアクセスのしやすさを変えることに注力している。メーダー・ヨークは、体外受精のプロセスを解決する唯一のソリューションはないと考えている。そのため、教育や意識向上、臨床のワークフロー、実際の胚の選択など、各部分を段階的に最適化していくつもりだ。

アライフ・ヘルスの長期的な目標は、体外受精のプロセスのすべての面でAIを使用することだが、現時点のアライフ・ヘルスでは、胚の選択プロセスという1つのステップにのみ使用されている。

アライフ・ヘルスは、AIを活用した体外受精ソリューションを、胚の選択から始める予定だ。体外受精では、親となるカップルが複数の胚を作ることがある。それから医師が顕微鏡でその胚の画像を見て、患者の情報を考慮しながら、どの胚が最も生き残る可能性が高いかを判断する。

アライフ・ヘルスは、膨大な過去のデータに基づいて機械学習を行い、それを胚を選択する方程式の構築に組み入れている。メーダー・ヨークによれば、データを利用して「最適な移植の順番」を理解し、妊娠の可能性を高めることで、3回目、4回目の体外受精をしなくても済むようにする計画だという。

「機械学習は、何千何万という画像をもとに行われており、この画像とこの患者が妊娠に成功したということが分かります」と彼はいう。機械学習がパターンを見つけたら、それを推薦することで、将来の両親がどの胚を優先して移植するかを決定するのに役立つ。

パンデミック・ベビー

アライフ・ヘルスだけではない。他の2つのスタートアップであるEmbryonic(エンブリオニック)とMojo(モジョ)は、健康な胚を見分け、体外受精の成功率を高めるために必要なAIを持っていると主張している。

関連記事:AIが健康な胎芽を特定し体外受精の成功率を高めると謳うEmbryonics

イスラエルに拠点を置くエンブリオニックは、事業の初期段階にあり、現時点では有効性の証明は最小限にとどまっている。モジョは、顕微鏡のハードウェアとAIソフトウェアを使って精子の数に着目し、体外受精用の強い精子を優れたやり方で選ぶことができる。Mojo Pro(モジョ・プロ)の社内テストでは、手動での精子カウントと比較して97%の精度を示している。

アライフ・ヘルスはハードウェアに依存しないプログラムであるため、例えばモジョとは異なり、プロバイダーが製品を使用するために特別な顕微鏡を使用したり購入したりする必要がない。

ラックス・キャピタルのパートナーであるDeena Shakir(ディーナ・シャキール)は、アライフ・ヘルスの取締役会に参加する予定だ。シャキールは、最終的に投資を行う前に、1年以上かけてアライフ・ヘルスのチームや他の体外受精に特化したスタートアップ企業と会って論文を作成したという。アライフ・ヘルスが注目された理由として、体外受精のプロセスにおけるエンド・ツー・エンドのソリューションに焦点を当てていることや、臨床医に優しいアプローチをとっていることなどを挙げている。

「他の不便なソリューションは、追加のインターフェース、ハードウェア、時間を必要とします。臨床医は、日々のワークフローの中でそんなことをしたいとは思っていません。直感的に使えるものでなければなりません」と彼女は語る。

ラックス・キャピタルのパートナーであるディーナ・シャキール氏と、アライフ・ヘルスの創業者であるパックストン・メーダー・ヨーク氏(画像クレジット:アライフ・ヘルス)

アライフ・ヘルスは、ソフトウェアのみのソリューションであることに加え、クリニックとのパートナーシップを競争力の一部と考えている。アライフ・ヘルスは、体外受精治療を受けるすべての人に役立つ集団的なデータを得るために、何年もかけて体外受精クリニックのネットワークを構築し、過去の症例、治療、結果に関するデータを収集してきたという。

メーダー・ヨーク氏は「残念ながら、女性の研究参加率は一貫して低く、マイノリティの女性、特に黒人女性の研究参加率は驚くほど低いのです。今回のデータセットは、これらのグループを代表する層別化されたデータです。つまり私たちは、これらのマイノリティグループの患者を診察した際に、その患者に答えを出し、個別化されたケアを提供することができるという非常にユニークな立場にあることになります」と述べる。

アライフ・ヘルスは、自社のAIの有効性に関する情報の公開を拒否している他、まだ規制当局の承認を得ていない。しかし、数百万ドル(数億円)の資金があれば、次の重要な段階に進むことができるはずだ。

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カテゴリー:フェムテック
タグ:Alife Health人工知能妊娠資金調達体外受精 / IVF

画像クレジット:CHRISTIAN DARKIN / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)