富裕層以外の投資家にも道を開くエクイティクラウドファンディングをメインストリームに押し上げたいGumroad

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自分の作品を販売したいクリエイターたちを支援するスタートアップのGumroadが、600万ドル(約6億5500万円)を資金調達する。時価総額は1億ドル(約109億1100万円)だ。総額のうち100万ドル(約1億900万円)はAngelListの共同創設者のNaval Ravikant(ナヴァル・ラヴィカント)氏とBasecampの創業者であるJason Fried(ジェイソン・フリード)氏が出資するが、残りの500万ドル(約5億4600万円)はちょっと捻りが効いている。100ドル(約1万900円)以上を支払う気さえあれば、誰でもこのラウンドに投資できるのだ。

Sahil Lavingia(サヒール・ラヴィンギア)氏が創設したGumroadは、米国時間2021年3月15日に通過した米証券取引委員会(SEC)の新しいルールを利用している。エクイティクラウドファンディングキャンペーンで調達できる最高金額が引き上げられ、投資家と創設者が調達できる金額は、前年の107万ドル(約1億1700万円)から、年間最高500万ドル(約5億4500万円)までに緩和された。

この引き上げは時価総額900億ドル(約9兆8200億円)のような世界では大した話題にもならないだろうが、ラヴィンギア氏はこの新ルールがベンチャーキャピタリストや創設者にとって、資金調達の道筋をつける新たな手段になると考えている。適格投資家でない人たち、すなわち友達やユーザー、富裕層でない投資家も、新しくリミテッドパートナーになれるのだ。

「これが上手くいけば、スタートアップの創設者はもっと頻繁に直接資金調達できるようになる」とラヴィンギア氏はいう。

ベンチャーキャピタルがアセットクラスとして成長しているにもかかわらず、創設者が所有権を維持し、資金にアクセスできるようにするための、代替手段による資金調達がいっそう人気を博している

Gumroadはこれまで、Kleiner Perkins、First Round、Max Levchin、SV Angelなどからの800万ドル(約8億7300万円)を超える資金調達を、2011年以来行ってきた。ただしラヴィンギア氏の考えでは、このがGumroadの資金調達方法の長期的な転換点になる。すべてが上手くいけば、Gumroadはクラウドファンディングによる資金調達を、上場を果たすまで毎年継続する予定だ。

企業がクラウドファンディングで年間500万ドルを調達できるようになったことで、ラヴィンギア氏が利用しているWeFunder、StartEngine、SeedInvest、Republicのようなプラットフォームには、最近の資金調達の情勢に大きく揺さぶりをかけるチャンスが巡ってきている。

これまでのところ、Gumroadは目標額の500万ドルのうち、340万ドル(約3億7100万円)を3458名の投資家から調達している。クラウドファンディングの投資家には、Figmaの創設者であるDylan Field(ディラン・フィールド)氏やVCファームのパートナーたちと並び、Gumroadで活動するパートタイムのクリエイターや、ラヴィンギア氏のTwitterのフォロワー、ユーチューバーなどがいる。投資家の多様性を促進するために、Gumroadは最初の数日間、個人による投資総額に1000ドル(約10万9000円)の上限を設けていた。

同社は今回の資金調達イベントで所有権の6%を放棄し、投資家はSAFEがラウンドに転換されて初めて株式を受け取ることになる。このプロセスに1年はかかるだろうとラヴィンギア氏はいう。これが起こる転換ラウンドは、IPO、買収、または1000万ドル(約10億9500万円)のプライスドラウンドになるかもしれない。同氏によれば、このプライスドラウンドは来年通常のシリーズAラウンドで行われる可能性が高く、その年間の限度額は7500万(約81億8700万円)ドルだ。

SAFEのキャップは現在の3.5倍の収益マルチプルに設定されている。2020年にGumroadの売上高は前年から87%増の920万ドル(約10億410万円)となり、純利益は前年から286%増の108万ドル(約1億1790万円)となった。

背景

機関投資家によれば、この新たに引き上げられたクラウドファンディング投資の上限額には欠点もある。単純に言えば、数百人もの投資家にわずかの金額で自社の株式を分け与えるのは管理上の負担になるということだ。それとは別に、ある投資家がTechCrunchに語ったところによれば、機関投資家が投資分野のエキスパートということがしばしばあり、そのような場合は数百人の少額の投資家よりも有利に働く。また、クラウドファンディングの上限額は年間500万ドルで変わらないのだから、この方法はStripeのようなレイターステージの企業にとっては効果が少ない可能性があり、こうした企業は従来どおり投資家に購入してもらうことが必要だ。

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こうした懸念はあるものの、最近のGumroadの資金調達はラヴィンギア氏が先頭に立ってきた2つのトレンドの延長上線にある。情報公開とベンチャーキャピタルの民主化だ。ラヴィンギア氏はGumroadの取締役会を毎回Clubhouse とZoomでライブストリーミングし、売上高や収益などほとんどの非公開企業が公表を拒むような業績指標を公開している(実は筆者が今回の資金調達の計画を知ったのも、数カ月前に読んだ同氏のニュースレターだった)。

読者のみなさんは、ラヴィンギア氏がAngelListプラットフォームを利用してローリングファンドを立ち上げた先駆者の1人だったことを覚えているだろう。これは投資家が公の場で継続的に投資を募ることを認めた米国証券取引委員会規則506(c)を利用している。ベンチャーキャピタルファンドの資金調達は長らく密室で行われてきたから、当初この動きには賛否両論があった。

「ローリングファンドには皆困惑していましたよ、(ベンチャーキャピタル)業界を丸ごと締め出そうとするのを見たらどう思うか、想像がつくでしょう」ラヴィンギア氏はAngelListのラヴィカント氏との会話を振り返る。

注意しなければならないのは、事前調査をできるかどうかだ。通常のクラウドファンディングやシリーズA+では、スタートアップは株式の提供と売却を区別できる。提供ならば創設者が「事前調査」をしてクラウドファンディングラウンドが関心を呼びそうかを確認できる。こうした防護柵はあるとはいえ、コミットメントとは資金そのものではない。例えばあるスタートアップが100万ドルのコミットメントを獲得したが、実際に調達できたのは10万ドル止まりだったことがある、とラヴィンギア氏はいう。意図していた購入に対する実際の購入の転換率のせいで、創業者が厳しい立場に取り残されることもあるだろう。

これに対処する方法は、危険を明確にしておくことと、透明性を確保することで、これはGumroadの主張とも一致している。

「今回の資金調達の前に、Gumroadで社員として働いているのは自分1人だと、ブログに投稿しました」と同氏は語る。「これは変だと感じる人が(投資を)恐れて近寄らないようにしたいのです」。

ラヴィンギア氏の他にも、Backstage CapitalのArlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏がRepublicを利用して自社の運営費をクラウドファンディングで調達している。ハミルトン氏は2021年3月初めに8時間で100万ドル(約1億900万円)を調達し、歴史を築いた。今日、同氏は新しいキャップを利用して同じように自社の投資を募り始め、すでに240万ドル(約2億6200万円)を獲得している。

TC Session Justiceで資金調達について語ったとき、ハミルトン氏は、別のアセットクラスが生まれると期待している、なぜならベンチャーは「壊れた」「古い」システムだから、と述べていた。

「私はおそらくBackstageを大転換させると思います。やり方を見つけますし、すでに始めています」と同氏はいう。「私たちがRepublicで行った資金調達は、そうあって欲しいと望んだようなものではなかったのです。ファンドとしての群衆を選択するような能力ではありませんでした」と同氏は語った。

「始まるときは普通の人と同じやり方ではないのです」とラヴィンギア氏は言い、こう続ける。「先陣を切る人、おもしろいアングルから物を見る人がやり始めたことが、後に時間の経過とともに民主化されていくのです」。

創業者がパートタイムのベンチャーキャピタリストに転じて、自分の会社の資金調達にクラウドファンディングを使用していること自体、考えだしたら際限がないことだ。けれども、同氏はこれがクラウドファンディングをメインストリームに押し上げ、魅力的なアセットクラスにしていくチャンスと捉えている。

長期的に、スタートアップの公開クラウドファンディングラウンドは資金調達完了前のわずかな金額でしかないかもしれないが、何千人もの普通の人たちが初めてスタートアップの株式を保有する手段になる可能性がある。

「私が基本的にやろうとしているのは、非公開市場のChamath(チャマス)になることです」とラヴィンギア氏はいう。SPACの近頃のブームと人気で高い評価を得ているSocial Capitalの背後にいるビリオネアのことだ。「プライベートエクイティやスタートアップへの投資、さまざまな方法で自在に動かせる人たちのチームに結びつけた巨大ブランドを築きたいと思っています」。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Gumroad資金調達エクイティクラウドファンディング米証券取引委員会 / SEC

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)