結局、SPACは悪いアイデアだったのかもしれない

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こんにちは。私は先日、「モデルナ症候群」と呼んでいる症状でヘタっていた。2回目のワクチン接種でやられてしまって、お菓子を食べたり、犬と遊んだりして休日を楽しむこともできず、基本的に1日中ソファの上で身動きできずに過ごした。つまり、Coinbase(コインベース)とDoorDash(ドアダッシュ)の業績報告の発表は見逃してしまったということだ。

Coinbaseは事前に発表した予測値を達成し(詳細はこちら)、株価は横ばいとなった。対照的に、DoorDashは市場の期待を上回り、私がこの記事を書いている現在、25%強の値上がりを見せている。

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しかし、それぞれの会社は、大きな業績を上げているにもかかわらず、両社ともに最近記録した過去最高の株価をはるかに下回っている。Coinbaseは、先日つけた史上最高値429.54ドル(約4万7000円)から値下がりして、現在では1株あたり265ドルほど(約2万9000円)になっている。そしてDoorDashは、過去52週間の最高値256.09ドル(約2万8000円)をはるかに下回る、145ドル(約1万6000円)の価格をつけている。

勢いを失った新しい公開銘柄は彼らだけではない。多くのSPAC出身銘柄も落ち目だ。しかし、CoinbaseやDoorDashは、現在のレベルでもまだ十分な評価額を保っていて、未公開企業だった頃よりもはるかに価値があるが、SPACの資金を得て上場したスタートアップの中には、もちろん上手く行っていないものがある。

Bloomberg(ブルームバーグ)が指摘するように、SPACで公開を果たした電気自動車メーカー5社は、一時600億ドル(約6兆6000億円)の価値を持っていた。現在、ほとんど収益を上げていないその上場EV企業たちは「それぞれのピーク時から、合わせて400億ドル(約4兆4000億円)以上の時価総額を失った」といわれている。やれやれだ。

また、SPACの宣伝マンであり、有名投資家でもあるChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏は、彼の取引のリターンについてさんざんな批判を受けている。面倒な話だ。これは、公平に言って、私たちが最初から予想していたこととほぼ同じだ。

意味のあるSPACの組み合わせが、ないわけではない。実際存在する。しかしほとんどの場合には、それは実体のあるビジネスというよりも、不確かな誇大広告だったのだ。だからこそ、CoinbaseやDoorDashは、SPACという松葉杖をついてまで、公開を行う必要がなかったのかもしれない。確かに、市場はまだ彼らの実際の価値を見出していないが、だからといって、彼らが本当に困っているわけではない。しかし、株価調整前にSPACを介して株式公開することに合意し、取引が完了するのをいまでも待っている企業については、しばし考えてみて欲しい。

業績見通しが保守的だと思えるとき

The Exchangeは、最近決算報告を行ったいくつかの上場企業のCEOに、電話で話を聞いている。そういった会話の後には、業績見通し(ガイダンス)についての話も少ししなければなならない。何故かって?なぜなら、それは多少不満の残るやりとりだからだ。

公開企業の中には、単に予測を提供しない企業もある。結構だ。たとえばRoot(ルート)は、四半期ごとの業績見通しを発表していない。まあいいだろう。業績見通しを発表する会社もあるが、超保守的な形式でしか行わない。これは、実質的には何の見通しでもないと思う。企業に対して無謀な要求をしているつもりはないが、彼らはしばしば市場に、何かを伝えることと、役に立つことを伝えることの間で、ふらふら奇妙なダンスをしていることが多い。

Appian(アピアン)のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンズ)氏は私のお気に入りの人物だが、彼が将来予想について語るときには、その業績見通しはフラストレーションを感じるほど「間違いなく保守的」だという。しかし、彼は続けて、Appianは短期的な経営に集中はしていない(良いことだ)と語ったあと、もし企業が楽観的な見通しを並べたら、実際に出せた結果ではなく、事前に吊り上げられた期待によって判断されてしまうと述べた。このような考え方からは、超慎重な業績見通しが合理的なものに思えてくる。

ウォール街が独自の期待を持っていることを思うと、これは何よりも哲学的な議論なのだ。企業がウォールストリートの期待値を下回る見通しを発表したり、外部の投資家の期待と異なる結果を出したりすると、財務上の問題が生じる。ということで、業績見通しはある程度重要なのだが、人びとが考えるほどではないという扱いなのだ。

先日の電話会議で、BigCommerce(ビッグコマース)のCEOであるBrent Bellm(ブレント・ベルム)氏は、上場企業が世間の期待以上に保守的な見通しを行う理由についていくつかの指針を示した。それは過剰な支出を防いでくれるからだという。同氏は、もしBigCommerceが(見通しの根拠となる)保守的な計画を立てているなら、短期的資金をあまりたくさん投入することはできないという(ちなみにBigCommerceは非常に堅調な四半期を終えた)。

BigCommerceの場合は、収益では大幅増収となっても、調整後の利益が大きくならないことを望んでいるからだと、ベルム氏は続けた。そのため、収益が予想を上回った場合には、より多くの支出を行うことができるが、短期的な利益率を最大化させることはしない。そして、彼はアナリストにもそのように伝えているという。つまり、業績見通しを低く抑えるということは、過剰支出を抑え、調整後の利益を台無しにしないようにするということであり、逆に増収傾向があれば、より積極的な支出が可能になるということなのだろうか?

納得できない、というのがこれらに対する私の感想だ。公開企業のCEOが、公開市場で上手にこなしてくれるのは非常に良いことだが、私が大いに望むのは、スタートアップたちがやっていることに近いことをしてくれることだ。高い成長を誇るハイテク企業では、取締役会の承認した計画と、より積極的な社内計画があることが多い。公開企業の場合、これは基本シナリオと拡大シナリオのようなものだ。両方とも見せて貰えないだろうか?真実を知るために、ガチガチに保守的な数字を解析することにはうんざりしている。

もちろん、業績見通しに幅を持たせることで、公開企業はそうしたことも一部行っている。しかし、十分ではない。私は、隠しごとのための隠しごとは嫌いだ。

ということで今回の不満の垂れ流しはここまでとしておこう、BigCommerceの業績報告については、可能ならまた来週にでも。もし興味があるなら、Appianやより大きなローコードムーブメントについてのThe Exchangeの記事はこちらから。

2度と戻ることはない

今日は少し長くなってしまったので、いくつかの予想をして店じまいにしよう。

私が2020年、話を聞いたスタートアップで、その時点でスタッフが20人以下だった企業は、ほぼすべてがリモートファーストのチームだった。これは、パンデミックの時期に生まれたことに加え、多くのアーリーステージスタートアップ企業が、必要な人材、余裕のある人材、引き寄せることのできる人材を近所で見つけることができないために、グローバルに採用することが手っ取り早くなっているからだ。

スタートアップは、必要な人材を確保し、(そしておそらく)維持するためには、勤務地に関する縛りを緩和することが重要であると考えている。だが、そう考えるのは彼らだけではない。ビッグテックも同じような状況だ。The Information(ザ・インフォメーション)が先日以下のように報じた

米国時間5月12日の朝、Google(グーグル)のとある社内掲示板に、多くの社員がリモートワークに関するポリシーが緩和されたと受け止めたニュースが流された。掲示板で共有されたあるミームには「Facebookのリクルーター」というキャプションのついた、泣いている人物が写っていた。また「San Francisco landlords」(サンフランシスコの大家)と添えられた悲しげな人物の写真もあった。

これを笑わない人は、おそらく人生を楽しんでいる人かもしれない。しかし、私はこれを生業としているので、この引用には死ぬほどウケた。

オフィスの外でも多くの人が多くの仕事をこなせることは明らかであり、労働力を購入する側(雇用者)は、労働力を売る側(従業員)が正確で十分な仕事をしているかどうかを確認するために、「1984」式の監視を行いたいと考えているだろうが、実際にコードを書いている住人たちは「まっぴらだ」と思っているだろう。文字どおり、タイピングを生業とする人々に支えられたキャッシュフローに過ぎないビッグテックにとって、それは実際手に余ることだ。

これが意味するところは、テック企業が100%オフィスに縛られる仕事に戻ることはないし、それに近いことも起きることはないということだ。少なくとも、最優秀の人材を確保したいと考えている企業では起きることはない。

それは、白人ばかりの会社を見たときに、可能な限り最高のチームではないことがわかることと同じだ。全員出社の方針を強制する企業は、特定の層に偏ることになるだろう。そして、それは決してその企業のためにはならない。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch ExchangeSPACCoinbaseDoorDash

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)