【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準

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IntelからArmへ。昨年6月、Mac搭載プロセッサの変更を発表したApple。M1と名付けられたSoCはさまざまな製品に搭載されているが、MacBook Pro、MacBook Airへの採用に続き、このたびデスクトップ機のiMacにも搭載された。

さらに驚かされたのは7つものカラーバリエーションが選べることだ。選んだカラーに合わせ、本体色はもちろん、付属キーボード、マウス、トラックパッド、付属ケーブルなども同じカラーテーマで揃えられている。

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本体のみのカラーバリエーションはありがちだが、付属品のほとんどが選んだカラーに統一され、それがさらに7色も用意されているということには素直に敬意を表したい。

しかし、ポップなカラーリングとは裏腹に11.5ミリ、ぱっと見はただのディスプレイとも思えるスリムなボディながら、コンピュータとしてはパワフルかつ洗練された使い勝手と完成度を誇る。それが今回のiMacだ。

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高精細ディスプレイ+Mac mini=24インチiMacではない

24インチ(正確には23.5インチ)の4.5Kディスプレイは市販品で探しても見つからない。このサイズではもっとも高精細なディスプレイのひとつで、他のApple製品と同じように事前に色調整が行われたDisplay-P3対応の広色域に対応している。この点は期待通りの仕上がりとなっている。

最大500nitsの範囲でHDR表示も行えるため、iPhone 12シリーズで撮影したHDR動画を美しく表示できる。標準に準拠していながらも、異なるApple製品との互換性がきっちりと取られているので気持ちいい。

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本体の配色に関しては、ベゼルがホワイトであるため、見づらさなどに繋がらないか懸念していたが、実際には明るいグレー。ディスプレイの輝度が適度であるならば特に気になることはない。むしろ一般的な家庭の室内の白系の壁紙であれば、部屋の壁などと馴染んでベゼルの存在感を和らげると感じられるチューニングだ。

同様に、ディスプレイ下の部分(この中にメイン基板が入っている)がテーマカラーごとの明るい色合いで組み合わされ(側面と背面は濃い配色)、ベゼルの明るいグレー(あるいはやや暗めの白)と馴染む濃度で、こちらもカラフルな外観を損ねない範囲でアクセントとなっている。

側面と背面のヴィヴィッドな配色は好みもあるだろうが、ウェブページ上で見るよりも実物は落ち着いた印象で、筆者が評価したブルーが鮮やかすぎるとは感じなかった。もちろん、もっと透明感のある選択をしたいならばシルバーという選択肢を選べばいい。

付属品を含めたトータルのデザインコーディネートを考えれば、その佇まいだけでも価値があると感じる。とはいえ、そうした感覚でパソコンを選ぶわけではないと思う人もいるだろう。

スタンドや角度調整のヒンジなども含め、アルミとガラスだけで包まれたiMacだが、カラーバリエーションや4.5Kディスプレイを必須と思わないならば、手持ちのディスプレイ+Mac miniでいいのではと考える人がいるかもしれない。後述するが、24インチiMacの性能はMac miniとほぼ同じであり、ソフトウェアの実行速度という観点では全く同じとなる。

しかし、Appleが独自に設計したAppleM1の活用という側面で、Mac miniでは得られない体験が一体型のiMacには用意されている。トータルコーディネートに興味がなくとも、iMacならではの良さがそこにはあるのだ。

iPhone 12向けの開発成果がiMacにも

M1はMac向けに性能と高速インターフェイス、メモリアーキテクチャなどを強化されているが、マイクロプロセッサとしての基本はiPhone 12シリーズ向けのA14Bionicと共通する回路が搭載されている。このためiPhoneを磨き上げる中で活用されてきた技術が、そのままMacでも使えるようになるわけだ。

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そのもっとも端的な例がTouch IDボタン付きのキーボード。M1にはiPhone向けのAシリーズと同じく指紋認証を行うための処理回路とセキュリティ機能が搭載されているので、iPhoneで実績のある指紋認証システムがそのまま利用できる。

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裏を返せば、Touch ID付きのBluetoothキーボードはM1との組み合わせで動作するということ。M1を搭載していればどのMacでも利用可能で、Mac miniなどでも利用できるという。ただし、現時点では単体での発売は予定されていない。単体発売されないのはマウス、トラックパッド、ライトニングケーブルのカラーバリエーションも同じだ。(※いずれもiMacオーナーならば保守部品としては入手できる)

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次に体感できるのが1080p解像度に対応するFaceTime HDカメラの画質。iPhoneと同じ映像処理のプロセスをそのまま活かすことで画質が高められているのだ。

なお、1080p対応の新しいセンサーだけならば、昨年発売された27インチiMacにも搭載されている。27インチiMacのFaceTime HDカメラもかなり高画質だったが、映像処理はT2チップで行っていた。実はこの部分でのM1の貢献も大きく、内蔵する映像処理プロセッサの世代が異なるため、画質が上がっているのだ。T2チップは世代としてはA10世代と目されているが、M1を搭載するMacではiPhone 12シリーズの内蔵カメラと同水準の映像処理が施されることになる。

暗部ノイズの少なさやダイナミックレンジの広さ、質感表現の深さ、オートホワイトバランスの的確さなどiPhone向けの開発成果がそのまま活かされており、外部接続の高画質カメラとして発売されている最新のUSBカメラよりも画質が良い。

本体サイズを感じさせない音質

“iPhone向けの開発成果”に関しては、音質面にも現れている。

マルチマイクを用いてビームフォーミング(話者の方向に指向特性を合わせる)するため、オンライン会議にヘッドセットなしで参加しても生活音を拾いにくく、話者の声にフォーカスしてくれるのはありがたい。声のトーンもイメージを崩さずに拾ってくれ、外部マイクが必要だとは感じないはずだ。

カメラの信号処理と同じくこの音声処理もT2チップ搭載以降のMacでは一部導入されてきていたものだが、信号処理の世代が上がっている。本体サイズやレイアウトの制約が少ないためか、M1搭載のMacBook Proよりも良好に仕上がっていると感じた。

しかし、やはり驚くのはスピーカーの音質と高音質なスピーカーを活用した空間オーディオ(仮想立体音響)の完成度の高さ。何しろ本体の厚みは11.5ミリしかない。本体下部の空間は大半の容積をスピーカーで使っているだろうが、音波の出口は本体下のスリット。とても良い音が出てくるイメージはない。ところが、本機から出てくる音は驚くほどバランス良く、低域も豊かだ。

形式で言えば、iMacのスピーカーは2ウェイ3スピーカーのステレオ構成。低域を担当するウーファー2基がたがい違いの方向に搭載され、振動をキャンセルする構造になっている。豊かな低音が出せるのは振動をキャンセルする構造にすることで、積極的に低音を出せるためだろう。

音は真下に出し、机から反射させて耳に届くことになるが、驚くことに周波数特性や位相特性がよく調教されており、アンバランスなイメージはない。中でも位相特性の整え方は空間オーディオのサポートからも感じられる。

空間オーディオは、いわば仮想サラウンドの一種だが、仮想サラウンドはサラウンドチャンネルの音を、左右の耳に位相を変えて届けることで実現する。位相とは音が耳に届く時間軸の差のようなものだが、iMacのような音が出てくる経路が複雑なシステムでは、周波数帯ごとに差が生まれがち。ところがiMacの空間オーディオは素晴らしく、音の移動感が感じられる効果的なサラウンド効果を発揮してくれた。空間オーディオが利用できるのは、Apple TV+のコンテンツなど一部だが、今後はサポートが広がることも期待できる。

少なくとも別途、スピーカーを購入して接続する必要がない程度には、優れたスピーカーを内蔵していると考えていい。

AppleM1搭載による体験価値

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一方、SoCとして採用されているAppleM1の能力に関しては、昨年登場したMac miniやMacBook Proとほぼ変わらないと考えていい。冷却ファンは動作していることに気づくことはほとんどなく、その点ではSoCに関連した性能、および体験の質はMac miniと同一と考えていいだろう。

……と言うと、少しあっさりとしすぎかもしれないが、 21.5インチiMacと比べると8割以上もCPUが高速になり、GPUに至っては2倍程度。27インチiMacと比べてもCPUだけならば凌駕する。

ここまで紹介してきたハードウェア設計と一体となった体験価値、機能などもM1の価値ということができるだろうが、長期的に見ればM1に内蔵されるNeural EngineやMLアクセラレータなどのCPU、GPUとは別の処理回路がもたらす価値が、Mac用アプリにもたらす価値のほうが大きい。

その一部はmacOSでも動作可能なiPad用アプリの存在からもたらされるだろう。さらにMac用アプリで積極的に機械学習処理を活用する動きも強まっている。もちろん、macOSに標準添付されているアプリではすでに活用が始まっており、例えば写真アプリでは写真の分析処理をM1内蔵のNeural EngineやMLアクセラレータで行っている。

Intelプロセッサからの移行で心配された互換性問題やネイティブアプリへの移行速度といった懸念は、この半年ほどですっかり解消されたと言っても過言ではない。多くのアプリがM1対応となり、先日はAdobeのクリエイティブツールもほぼ移行が完了した。

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M1の弱点といえば、それはシステムスペックの選択肢が少ない(搭載メモリ、Thunderbolt 3のポート数、独立GPUが選べない)ことぐらいしか思いつかないが、これらは今回の24インチiMacの位置付けからすれば大きなマイナスとは言えないだろう。だからこそ、Appleは27インチモデルにM1を搭載していない。

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Boot Campや仮想化ソフトでWindowsを動かせなくなったことを残念に思うユーザーもいるかもしれないが、長年、両方のプラットフォームを併用してきた筆者でも、その必要性はほとんど感じなくなってきているというのが正直なところだ。

なお、ご存知の通りParallels DesktopがARM版Windowsの動作をサポートした。パフォーマンスは良好で、ブラウザの互換性などをチェックしたり、一部のWindowsでしかないアプリ(例えば筆者の環境では弥生会計)を動かしたりする程度ならば十分だと感じた。

ただし、ARM版Windowsの製品版を入手する手法がなく、開発者向けのプレビュー版をテストする場合にしか利用できないのが現状だ。マイクロソフトが一般向けにライセンスを始めない限り、公式なサポートは受けることができない点に留意しておきたい。

家庭向けデスクトップの新しい基準に

ディスプレイ一体型デスクトップパソコンというジャンルは、ディスプレイやスピーカーなどをトータルで設計できるため、ディスプレイ別売りのコンピュータよりもユーザー体験を演出しやすいという利点がある。

かつては、高品位ディスプレイが高価、かつパソコンの性能面での進化が速かったこともあり、エントリーユーザー向けの低価格製品というイメージがあったが、そうした考え方は古くなっている。

代表例がiMacで27インチモデルに5Kディスプレイが搭載されたこと。これにより新たな基準点が生まれた。製品ごとにカラー調整が施され、単体で購入すると高価な5Kディスプレイだが、それを搭載したことで、一体型を単なるお買い得モデルから体験価値の高い製品にしたわけだ。

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今回の製品ではさらに一歩踏み込み、独自プロセッサとハードウェア設計の組み合わせでの体験価値向上をもたらしている。狭額縁や薄型筐体などもあって21.5インチモデルからの置き換えでもむしろスッキリとした佇まいになる。

価格に関してもその質感や性能を考えれば決して高くはなく、むしろ安いと感じる人が多いのではないだろうか。家庭向けのデスクトップコンピュータの基準点として、今後、さまざまな製品を評価する際の指標となる定番製品に仕上がっていると思う。

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(文:本田雅一、Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
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