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受刑者の社会復帰を支援するUptrustは無駄な大量収監に浪費される数千億円の問題に取り組む

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「technical violation(規則[法則]上の違反、厳密な法解釈による違反)」は、米国の現代刑事司法制度を象徴する、プロセスと手続きの不条理な泥沼を埋めるために米国政府が使用しているオーウェルの用語の1つだ。犯罪者が刑を執行した後、彼らはしばしば保護観察下に置かれ、どこに行くことができるか、誰に会うことができるかについての多数の規則をともなう。規則上の違反を犯した人は、仮釈放の審理に数分遅れるという単純な処置のために、何カ月あるいは何年も刑務所に戻されることが少なくない。

規則上の違反は、私たちすべてにとって高くつく。2021年初め、ニューヨークの首都地区の新聞Times Unionは、コロンビア大学およびIndependent Commission on New York City Criminal Justice and Incarceration Reform(ニューヨーク市刑事司法と収監の改革に関する独立委員会)の報告書に基づいて「ニューヨーク州は他のどの州よりも多くの人々を規則上の仮釈放違反で収監しており、その率は全国平均のほぼ3倍である」と報告し「これらの人々の再収監には、納税者の負担として少なくとも6億8300万ドル(約745億円)かかる」と伝えている。

オーウェル的であり、カフカ的でもある。そして公共資源の破滅的な浪費となっている。しかし、それは潜在的な解決策へとつながる問題でもあり、Uptrustはそこを改善しようとしている。

Uptrustは、社会復帰した人々を公選弁護人や裁判記録と結びつけるサービスを提供しており、規則上の違反を防ぐために必要なカレンダー、アポイントメント、ルール、手続きを確実に整備することで、彼らの通常の生活への復帰を促進するとともに、納税者の多大な費用を節約することを目指している。

同社は米国時間5月18日、Decaration FundLuminateStand Together Ventures Labという3つの主要投資家から200万ドル(約2億2000万円)のシード資金を調達したことを発表した。これは2020年TechCrunchが報じた130万ドル(約1億4000万円)のラウンドに続くものだ。

2015年に設立され、2016年に最初の製品をローンチした同社は、Jacob Sills(ジェイコブ・シルズ)氏とElijah Gwynn(イライジャ・グウィン)氏が共同設立し、刑事司法制度を改善する方法を模索していた。両氏は保釈保証金のような領域に目を向けながらも、基本的な問題に立ち返り続けた。「あまりに多くの人が制度から脱してません【略】そして彼らは再び戻ってしまいます」とシルズ氏はいう。

Uptrustは、テキストメッセージングや独自のアプリを通じてサービスを提供している。被告側の弁護士は刑事司法制度に関わる他のメンバーより依頼人に通じやすいことから、同社のサービスはおおむね公選弁護人とリンクしている。

Uptrustのアプリは、保護観察官との迅速なチェックインを可能にし、主要な予定表のアポイントメントをモニタリングする(画像クレジット:Uptrust)

シルズ氏によると、同社は何年も前からさまざまなプロダクトを試しながら成長を続けており、現在では28州で150サイトを展開し、18カ月前の30サイトから増加しているという。現在2カ所でサービスを利用しているバージニア州は、2021年末から2022年初めにかけて同サービスを州全域に拡大する予定だ。

同社は現在、サービスを利用する政府に対して料金を請求しており、その目的は、支払い資金が不足しがちなエンドユーザーの金銭的負担を抑えることにある。しかし長期的には、ユーザーが社会に再参入する際に、増加しているユーザーを新しいサービスにつなげるという大きな機会があると捉えている。「彼らの半数以上は、ヘルスケアへのアクセスに問題を抱えています」とシルズ氏は語り、ヘルスケア、金融、銀行、住宅など、さまざまな分野でアプリが将来的に役割を果たす可能性があるとの見方を示した。

それでも同氏は、これは多くの伝統的なベンチャーキャピタルにとって魅力的ではない「新規市場」であることを認識していた。そこで今回の資金調達で、シルズ氏とそのチームは刑事司法問題に深く染み込んだ資金をターゲットにすることを決断した。解決されようとしている問題、そしてUptrustが自身の使命を果たしながらビジネスとして成功する方法について、先見の明を示してくれることを期待してのことだ。

彼らはまた、シルズ氏のいう「思考における優れた多様性」を求めた。Decarcation Fundはまさにその言葉どおりに投資しており、進歩派のPam Omidyar(パム・オミダイア)氏とPierre Omidyar(ピエール・オミダイア)氏によって設立されたLuminateは、市民の関与に焦点を当てた慈善事業を行っている。一方、Stand Together Ventures Labは、Charles Koch(チャールズ・コッホ)氏が設立したStand Togetherによる資金提供を受けている。コッホ氏は、共和党や保守派の運動に広く資金を提供しているだけでなく、近年では、民間人に対する政府の力を最小化するための刑事司法改革への取り組みも強化している。

Decarceration Fundでマネージング・プリンシパルを務めるChris Bentley(クリス・ベントレー)氏は、Uptrustがこうした特殊な人々が何を必要としているかを正確に理解していると確信し、同社を最初の投資先に選んだ。「この分野には、善意の会社が意図せぬ結果をもたらしてきた重大な歴史があります」とベントレー氏は語る。同ファンドは、明確な目標を備え、ポジティブな結果をもたらすビジネスモデルを有する企業への投資に注力している。「私たちの投資委員会の半分は自らが創業者ですが、同時に、この制度に関する実際的な経験を持つ市民でもあります」と同氏は続けた。

Uptrustは現在、サンフランシスコを中心に15人の従業員を擁するまでに成長し、東海岸にも拠点を広げている。「営利企業が残した実績はあまり芳しくありません。そうした企業のほとんどは、刑事司法制度が望むものを作っているだけなのです」とシルズ氏は指摘した。「私たちは、収益、成果、そして実質上の影響力をもたらすことを実証しようとしています」。

【2021年5月18日更新】LuminateはOmidyar Networkの一部ではなく、パム・オミダイア氏とピエール・オミダイア氏が運営するThe Omidyar Groupから独立した資金を受けている。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Uptrust資金調達アメリカ犯罪

画像クレジット:MARVIN RECINOS / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)