CEOの「企業文化メモ」公開後、Mediumの従業員が大量退職

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MediumのCEOEv Williams(エヴァン・ウィリアムズ)氏は2021年4月、厳しい1年を経て同社の企業文化が変化していることを従業員に伝えるメモを記した。

「健康的な文化は、人の最高の部分を引き出します」と同氏は書いている。「そうした環境にある人々は、自分の考えを述べたり、どんな質問にも最適な答えを見つけ出そうと議論したりすることは、心理的に安全であると感じます。同僚が善意を前提に、そして同じ反応が得られることを意識して、疑わしいことを好意的に解釈してくれると認識しているのです」。

その数段落後にウィリアムズ氏は、反対意見や支持されない意見は意思決定において「常に奨励されている」ものの「建設的ではない、疑いを投げかける、悪意を持っている、根拠のない非難をするなど、ポジティブな環境に寄与しない対話を繰り返すことは、チームや職場環境に大きな悪影響を与える」と記した。

そして次のように付け加えている。「これらの行動は許容できるものではありません」。

TechCrunchが入手し、確認した内部メモは、Mediumのスタッフによる労働組合結成の試みが失敗してから約1カ月後に、そしてウィリアムズ氏が自社コンテンツよりもユーザー生成の仕事に重点を置くという編集方針の転換を発表した約1週間後に公開された。

Mediumの編集チームはシフトの一環として退職金の優遇をともなう希望退職を提示され、編集担当VPのSiobhan O’Connor(シボーン・オコナー)氏とGEN Magazineの全スタッフが退職している。

しかし、Mediumの大量流出の原因は、編集方針の転換というより「企業文化メモ」と銘打ったウィリアムズ氏のマニフェストにあると、複数の現従業員、元従業員がTechCrunchに語ってくれた。このメモが公開されて以降、コンテンツの優先順位の変化の影響は受けないと思われる非編集スタッフの数多くがプロダクトマネージャー、数人のデザイナー、数十人のエンジニアを含めて会社を去っている。

退職者たちは、ウィリアムズ氏が多様性に富んだ才能を犠牲にし、会社戦略のさらなるリセットを行おうとしていると主張する。エンジニア、編集スタッフ、プロダクトチーム、そして同社の人事および財務チームの一部が含まれる内部データを見ると、2021年Mediumに入社した241人のうち、約50%がすでに辞めていることがわかる。Mediumは、現在179人の従業員がいると述べてこれらの数字を否定したが、一部の欠員を埋めるために新規雇用を行っている。

Mediumによると、離職者の52%は白人で、同社の従業員の3分の1は非白人とアジア人である。TechCrunchが最初に話を聞いたエンジニアは、同社の離職者の中にはマイノリティが多く含まれていると語っている。また、Mediumに参加したとき、トランスジェンダーのエンジニアが3人いたと付け加えた。彼らも全員去ってしまった。

「愛される独裁者の雰囲気」

2021年2月、編集スタッフを中心としたMediumの従業員が、労働組合を結成する計画を発表した。労働組合化の試みは決議票で過半数に1票足りず最終的には敗北したが、これは中堅幹部が従業員に組合への反対票を投じるよう圧力をかけたためだと一部の従業員は考えている。

組合結成が失敗した翌月の3月に、Mediumは編集方針転換を発表した。同社は編集スタッフに新たなポジションや希望退職優遇措置を提示した。多くの従業員が退職したが、これは組合組織化の失敗や、明確で金銭的な保障のある退職勧奨のような緊迫した局面が続いた後では珍しいことではない。

そして4月にウィリアムズ氏は、会社の目的と運営原則に関する自身の見解をまとめた企業文化メモを投稿した。メモの中で同氏は「成長にはリスクテイキングが必要であり、リスクテイキングは時折失敗をともなう」とし「フィードバックは贈り物であり、厳しいフィードバックでさえも共感と厚情をもって届けることができるし、そうすべきである」としている。CEOはまた、多様性に対する同社のコミットメントと「機会や脅威に適応することが勝つための前提条件である」ことにも言及した。

顕著なことに、Mediumはこれまで数多くの編集戦略の変更を行ってきており、サブスクリプションや自社コンテンツの取り組みに紆余曲折してきた。そして今は、ユーザー生成コンテンツと有料コミッションに傾注している。

「チームの変更、戦略の変更、組織再編は避けられない。1人ひとりの順応性が会社の中核的な強みだ」とメモには書かれている。

メモでは組合結成の動きについて明確には言及していないが「建設的ではない、疑いを投げかける、悪意を持っている、根拠のない非難をするなど、ポジティブな環境に寄与しない対話を繰り返すことは、[しかしながら]チームや職場環境に大きな悪影響を与える」とし、そうした状況をMediumは容認しないと述べている。

TechCrunchが取材した従業員たちは、ウィリアムズ氏のメモは公式な投稿ではなく内部的なものだと考えているものの、これはCoinbaseのCEOであるBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏やBasecampのCEOであるJason Fried(ジェイソン・フリード)氏が出した声明を思い出させる。Mediumのメモは政治を全面的に禁止しているわけではないが、前出のエンジニアは声明の「基調」が「安全ではない職場環境」を生み出していると話す。不満を抱いた従業員らは、Mediumでの問題について語り合うためにサイドSlackを作った。

MediumはTechCrunchへの声明で次のように述べている。「多くの従業員がクラリティ(明瞭性)を評価しており、ディレクターやマネージャーもその形成に関わっています」。

TechCrunchが入手した内部データによると、このメモのあった月の同社のチャーンレートは前月比で3倍、1月の指標の30倍だった。

TechCrunchに話をしてくれた2人目のエンジニアは先月同社を去っているが、そのメモは一見したところでは「酷い」ものではないと語っている。

「それは愛される独裁者の雰囲気でした。つまり、記されている言葉はあまりにも曖昧で、他の何にも強要されることはなく、紙面上ではよく見えます」と彼は指摘した。「そのメモを見ただけで、他に何もないとしたら、それはCoinbaseのメモでもなければ、Basecampのメモでもありません」。

しかし、メモのタイミングを考えるとウィリアムズ氏のメッセージの意味は明確だとこのエンジニアはいう。

「(Mediumは)良い雰囲気を強制し、『ミッション』に疑問を持つものはすべてシャットダウンしたいと考えているのです」と彼は語った。

Mediumの究極

同エンジニアは「編集の方向転換を理由に去った人はほとんどいない」と考えている。その代わり、彼はMediumにおける問題の歴史的経緯を説明した。そこにはメモによって明らかに引き起こされたと思える離脱の波が見られた。

例えば2019年7月、Mediumは、トランプ支持者のJoy Villa(ジョイ・ヴィラ)氏のプロフィール付きのシリーズを「私はトランプを支持してきたが、黒人やラテン系であることで訴追されたことは一度もない」という見出しで公開した。

Mediumのラテン系コミュニティは、この見出しの不快感についてリーダーシップに話をしたとき、Slackの公開チャンネルで言及されるまで、編集部の幹部はそれに関して何もしなかったと主張している。ある編集者は、移民手続きを経験した人や、ラテン系アメリカ人コミュニティの一員である人に、部屋に入って自分たちの立場を説明して欲しいと頼んだ。この従業員は、彼らの立場が薄れていくように感じたのだ。ようやく見出しが変更されたのは、従業員たちがSlackの公式チャンネルに自分たちの懸念を投稿してからだった。

「彼らは思いやりがあれば十分だと思っています」とその従業員は話す。「そして、その傾聴は慈悲深く、実際に思いやりに満ちています。それゆえ、それが十分でないとき、彼らは大きなショックを感じてしまうのです」。

TechCrunchが話を聞いた3人目のエンジニアは、テクノロジー以外にも影響力のあるミッション重視の会社を求めて2019年に同社に入社した。彼は2020年夏、Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター、BLM)運動の中で、Mediumに「より深い問題」があることに気づいた。

「私自身がその一部ではないために耳にしたことがなかった、より深刻な問題がありました。それはまるでカーペットに滑り落ちたかのような感覚でした」と彼はいう。例えばトランプ支持者のプロフィールだ。この元従業員は、人事部がその時期にもNワードを発した従業員の報告について無視したことを知ったのだった。Medium側は、これは事実ではないとしている。

「彼らの本当の姿を真に理解するのにメモは必要ありませんでした」と彼は続けた。

The VergeとPlatformerがMediumの乱雑な企業文化と混沌とした編集戦略に関するレポートを公開したが、2番目のエンジニアは、この記事に関係していると思われる複数の従業員が辞任するよう圧力をかけられたと語っている。

「私の見るところでは、会社側は組合を負かすために汚い手を使ったと思います」と最初のエンジニアはいう。「しかし、それは完全な成功ではありませんでした。なぜなら、これらの人々は全員、その決定(組合結成の否決)の後に退職することを決めたからです。それはコストにつながります。残された人たちは、基本的にうなずいて微笑まなければならないと感じているでしょう。Mediumが明らかにしたのは、従業員が完全な自我を職場に持ち込むことを会社は望まないということです」。

同エンジニアによると、Mediumの審判的な文化は、同社のミッション指向の約束ゆえにCoinbaseとは異なるものだという。

「Coinbaseのようないくつかの企業は『政治や社会問題をもたらすことのない人たちが働くことを望んでいる』と表明しているので、Coinbaseに加わるなら、それはあなたが期待していることであり、問題はありません。しかしMediumは、世界と公平さを大切にし、言論の自由と透明性を信じる人々を特に採用したのです」。

このエンジニアはまもなく正式に退職する予定で、すでに複数の面接が決まっている。

「ソフトウェアエンジニアにとって良い求人市場があるのに、自社の従業員を不当に扱う会社で働く必要があるでしょうか?」。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Medium労働

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)