わずか2分でコールドブリューが楽しめるOsmaのハイテクコーヒーメーカー

次の記事

数十年前のASCIIアドベンチャーゲーム「NetHack」への挑戦から見えるAIの未来

まったく新しいコーヒーの淹れ方が発明されることなど、そうそうあることではないが、ほぼすべての淹れ方に共通する要素は「熱」である。つまるところ、熱湯を使えばコーヒー豆のフレーバーとコクをすぐに引き出せる。しかし、Osma(オスマ)という新しいコーヒーメーカーを使うと、今までとはまったく異なる技術によって、どの温度のお湯や水でも(何と、氷のように冷たい水でも)濃くて重量感のあるエスプレッソのようなコーヒーを作ることができる。これは業界の次なる目玉製品になりそうだ。

OsmaはデザイナーのJoey Roth(ジョーイ・ロス)氏が取り組んでいるプロジェクトだ。ハイコンセプトのスピーカー関連テック製品を手がけた後に紅茶・コーヒー関連テックに取り組むようになった同氏は今、まったく異なるこの2つの分野を、独特の振動抽出方法という形で統合させる方法を発見した。同氏は長年にわたりいくつものヒット技術を生み出してきたが、Osmaは同氏にこれまでで一番の利益をもたらすかもしれない。

その理由を知るには、コーヒーが通常どのように作られるのかを理解することが役立つ。普通は、コーヒーの粉を熱湯に浸すか、コーヒーの粉に圧力を加えるかしてコーヒーを淹れる。

熱湯に浸す方法の場合、お湯の熱によってコーヒーの粉から油分が溶け出して揮発し、フレーバーが抽出された後のコーヒーかすがフィルター内に残る。具体的にはドリップやポアオーバー、フレンチプレスなどが含まれる。

圧力を加える方法とはつまりエスプレッソのことだ。熱だけでなく、マイクロキャビテーション処理を加えることによってコーヒーの粉に含まれる芳醇なエキスが抽出される。熱と圧力によってコーヒーの粉から二酸化炭素が放出され、それが極小の泡となる。その泡はすぐに破裂するのだが、その過程でフレーバーとアロマが抽出される。

熱湯の代わりに冷水にコーヒーの粉を浸す場合もある。冷水を使うと、熱に弱い成分が消滅せずに残るため、ひと味違うフレーバーが生まれる。残念ながら、冷水でコーヒーを抽出するには何時間もかかるし、濃い目がお好みの場合は何日もかかる場合があり、美味しさに貢献する他の成分がその間に劣化してしまう。さらに、冷水ではエスプレッソは作れない。エスプレッソで抽出するにはスチームが絶対に必要だからだ。

このように、コールドブリューコーヒーには独特の不便がともなう。それにも関わらず、ここ10年ほどの間に一度でもカフェを訪れた人であれば誰でも、コールドブリューコーヒーの人気の高さに気づいたことだろう。季節は問わないが、特に人気が出るのは夏である。突き詰めて言えば氷の上に熱いコーヒーかエスプレッソを注ぐだけのドリンクなのだが、人気は途絶えることがない。ではもし、熱を加えたり、水で薄めたり、何日も待ったりすることなく、濃くて美味しいコーヒーを淹れられるとしたらどうだろうか。それを実現するのがOsmaなのだ。

画像クレジット:Osma

Osmaのシステムは、筆者が知る限り、他のどのブリュー方法とも異なっている。Osmaは基本的に、コーヒーの粉の中に水を繰り返し循環させつつ、それを立位圧力波のようなもので撹拌する。そうすると2分ほどで、エスプレッソほど濃縮されておらず、コールドブリューほどマイルドではないコーヒーが8~12オンス(約240~350ミリリットル)でき上がる。

画像クレジット:Osma

フレーバーの特徴について筆者が尋ねると、ロス氏は「これはまったく新しい方法で抽出されたコーヒーだから、一度味わってみないと分からないと思う」と答えた。同氏は、京都スタイルのスロードリップコーヒーにクリーミーな口当たりとエスプレッソのフレーバーを加えた感じに似ていると言った後、やはりこの例えでは説明しきれないという結論に達した。

ロス氏が安易に例えようとしない理由は理解できる。なぜなら、Osmaの抽出方法は他とは完全に一線を画しているからだ。熱湯ではなく冷水を使う点や、キャビテーション効果を得るために高圧ではなく音波を使う点もさることながら、水を一度限り通すのではなく、循環させる方法を採用している点でOsma Pro(オスマ・プロ)は独特の存在である。

ほぼすべてのコーヒーメーカーは単方向性だ。水が入ってコーヒーの粉に接触し、コーヒーが抽出される。ちなみにパーコレーターは例外だが、そもそもパーコレーターを一番好むというコーヒー愛好家はあまりいない。一方、Osmaの場合は、水を吸い上げてコーヒーの粉に通しつつそれを撹拌し、そこから出た水を元の筒に戻して、それをまた吸い上げ、コーヒーの粉に再び通す。

この循環プロセスは、お好みの重量感に合わせて、早目に止めることも長めに続けることもできるが、ロス氏によると、大抵の人の好みに合うベストな1杯を淹れるのに最適な循環時間は2分間だという。

Osmaの仕組みは、半分は幸運な偶然、もう半分は創意工夫の産物である。ロス氏は、共同創業者のDan Yue(ダン・ユエ)氏と一緒に工業用真空槽の中で水を常温で沸騰させる実験を行ったことがあるそうだ。何とか成功したのだが、その装置はとてもじゃないが消費者に販売できるようなものではなかった。そこでユエ氏が、高温で加熱せずにコーヒーを抽出する鍵はマイクロキャビテーション処理にあるのではないかという仮説を立てた。

いい感じの仕上がりだ(画像クレジット:Osma)

ロス氏は次のように説明する。「ユエ氏の仮説を検証するために実験をいくつも行って、マイクロキャビテーションこそが魔法のスイッチだということを確認した。その後2年間を費やして、コーヒーの粉をぎっしり詰めたバスケットの中で音波を使ってキャビテーション処理を効率的に促進する構造を開発した。サンノゼでChromatic Coffee(クロマティック・コーヒー)を一緒に創業したパートナーであるJames(ジェームズ)とHiver(ハイヴァー)の助けや知恵を借りながら、この構造をOsma Proという製品に仕上げた」。

いつでも好きな時にエスプレッソやコールドブリューのような濃くて冷たいコーヒーを作れることは、カフェ業界の形勢を変える可能性がある。現在のところ、カフェで冷たいコーヒーを出すには、需要を予測して前日またはそれ以上前からコールドブリューを作り始めなければならないため、需要が供給を上回った場合は品切れになるか、もしくは熱いコーヒーを氷の上から注ぐという、一般的ではあるが考えてみればちぐはぐなアプローチを取るしかなくなる。

Osma Proの価格は695ドル(約7万6000円)だ。家庭用に購入するには少し高価だが、ほとんどのカフェで導入されているタイプの機器と同程度の価格である。ロス氏が手がけた他のプロジェクトと同様に、Osma Proの工業デザインはシンプルで美しい。場所を取らない(スタンド型コーヒーミルと同程度)ことや、貴重な冷蔵庫内スペースが大量のコールドブリューコーヒーに占領されることがなくなることを考えると、Osma Proの利便性にさらに納得できる。

生産台数は限定1000台、今のところは(画像クレジット:Osma)

ロス氏は(社名は伏せたが恐らく)有名なコーヒー会社がOsma Proの件で同氏と提携することに興味を示しているのはそのためかもしれない、とはにかみながら言った。小さなカフェを中心に数百台売れることはすばらしいが、ロス氏によると期待を上回る予約注文が寄せられているという。もし数千台規模で注文する大型パートナーが出てきたらどうなるだろうか。それこそ、グローバル展開の足がかりとなるだろう。

ちなみに、これらすべては、残念ながら今では機能していないであろう1台の機器から始まった。筆者が初めて使ったOsmaのコーヒーメーカーは、ロス氏から筆者に送られてきたもので、バッテリー駆動のポータブルタイプだった。そのうえ、生分解可能なコーヒー粉パックと簡略化された音波撹拌処理をテストするためのベータ版だった。しかし、このベータ版はその後の開発に行き詰まってしまった。一方で、その抽出技術は非常に興味深く、非常に美味しいコーヒーが作れたため、ポータブルタイプではなく、当時急速に開発が進んでいたカウンタートップタイプこそが同社の未来だということが早々に明らかになった。

現時点で残るただ1つの問題は、Osma Proで作ったコーヒーの呼び名だ。筆者は「coldpresso(コールドプレッソ)」はどうか、と提案した(「icepresso(アイスプレッソ)」の方が語呂がいいのだが「エスプレッソ」に語感が近すぎる)。ロス氏は「cold flash(コールド・フラッシュ)」という名称を考えたが、呼び方に関する自分のアイデアはどれも何だかあか抜けないと自分で言っていた。どんな名称になるにしても、Osma Proで作ったコーヒーを間もなく地元の「本格派」カフェで楽しめるようになるだろう。Osma Proのコーヒーを試した人、あるいは普段から冷たいコーヒーをたくさん飲んでいる人で、少々高額でもOsma Proを買いたいと思った人は、Osmaのウェブサイトで予約注文できる。

関連記事
スマホ・NFCと連携してプアオーバーコーヒーを自動化するGeesaa
シンプルでポータブルな真空抽出式コーヒーメーカー「FrankOne」

カテゴリー:フードテック
タグ:Osmaコーヒーコーヒーメーカー

画像クレジット:

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)