災害の最前線で働く人たちを肉体的、精神的そしてその後もサポートするために資金を提供するRisk & Return

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悲しいことに、災害は成長中のビジネスだ。かつては遠い場所のことだと思っていた被災地が今やずっと身近なものになっている。山火事、ハリケーン、洪水、竜巻、そしてパンデミック。米国の多くの地域や世界中のあらゆる場所が今、実質的に安全な場所などどこにも存在しないという新たな現実に直面している。

大災害に見舞われた人々の死亡率は、その危機にどう対応するかによって大きく左右され、適切な情報、迅速な対応、強力な実行力が生死を分けることになる。しかし、第一線で働く人々は、必要なツールやトレーニングを受けられないことが多く、また政府のサプライチェーンを簡単には通過できないような新しいイノベーションにもアクセスできないことが多い。そしておそらく最も重要なこととして、災害が収束した後も彼らが心のケアを必要としているということを忘れてはいけない。

Risk & Return(リスク・アンド・リターン)は、ベンチャーファンドと慈善事業を組み合わせた比類のない組織で、最前線で働く人々の現場での活動だけでなく、肉体的にも精神的にも過酷な任務に立ち向かうそうした人々のその後を支援するために、次世代のテクノロジーを追求して資金を提供することをミッションとしている。

米国の救急隊員から退役軍人までさまざまな人が同じような課題を抱え、今日も解決策を必要としているが、こういったコミュニティ特有のニーズを知る由もない一般のベンチャー企業にとっては資金調達が困難である。

この組織を設立したのは、2020年15億ドル(約163億円)の2ファンドを発表したバイオテック分野のVCリーダーであるARCH Venture Partners(アーチ・ベンチャー・パートナーズ)の共同創設者兼マネージングディレクターとして名を馳せたRobert Nelsen(ロバート・ネルセン)氏だ。そこに、9/11 Commission(米国同時多発テロ事件に関する国家調査委員会)元共同議長であり、元ネブラスカ州知事兼上院議員でもあるBob Kerrey(ボブ・ケーリー)氏が理事長として、またNavy SEALs(ネイビーシールズ)出身でオバマ大統領の国家安全保障会議でアフガニスタン・パキスタン担当シニアディレクターを務めたJeff Eggers(ジェフ・エガース)氏がマネージングディレクターとして参加した。

ネルセン氏とケーリー氏が出会ったのは、ネルソン氏が事業のアイデアについて思いを巡らせていた頃だ。ケーリー氏はNavy SEALsの資金調達イベントでの当時の会話を振り返り「最前線で活躍する人々には多くの苦しみがともないます。ロバートが事業のアイデアを持っており、私もそれがとてもスマートな考えだと感じたため慈善活動に対して異なるアプローチを取ることを試みたのです」と話している。

同ベンチャーファンドの規模は2500万ドル(約27億円)で、そのうち約35%がすでに展開済みだ。このファンドでは第一線で働く人々のメンタルヘルスに大きく力を入れており、資金提供を受けた企業の75%がそのカテゴリーに属している。

同ファンドの最初の投資先は、心的外傷後ストレスを治療するための精密医療ツールを開発しているAlto Neuroscience(アルト・ニューロサイエンス)だ。また、行動管理に取り組むスタートアップのNeuroFlow(ニューロフロー)、幸福度評価の代替ツールであるQntfy、商業データと健康データを繋げて人間のパフォーマンスを最適化することを目的とした新規スピンアウト企業であるSpear Human Performance(スピア・ヒューマン・パフォーマンス)、義肢装具用のより優れた接続ソケットを設計しているXtremity(エクストリミティ)にも投資している。また、数週間前に筆者が紹介したPerimeter(ペリメーター)を含め、さらに6社のスタートアップにも投資している。

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典型的なベンチャーポートフォリオとはかけ離れたセレクションだが、これこそがRisk & Returnが注力している分野なのである。「この種のテクノロジーは第一線で働く人々にとって有益なだけでなく、地域社会にも利益をもたらすという二重の目的を持っているためすばらしいのです」とエガース氏はいう。

同社が投資しているスタートアップの多くが第一線で働く人々に焦点を当てていることは明らかだが、彼らが開発するテクノロジーはその市場だけにはとどまらない。「退役軍人はみな、一般市民であり、またこれらは軍事市場をターゲットにしたビジネスではありません」とケーリー氏は指摘する。この1年を振り返ると「このパンデミック禍で何からのPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症していない人間を見つけるのは難しい」という。政府への販売は非常に困難であり、また現場で働く人々が必要とする専門的なメンタルヘルスサービスの市場は期待しているほど商業的に成り立つものではないのかもしれない。

Risk & Returnの共同創設者ジェフ・エガース氏、ロバート・ネルセン氏、ボブ・ケーリー氏(画像クレジット:Risk & Return)

政府もこの分野への研究やイノベーションに取り組んではいるものの、ケーリー氏は民間企業がさらに関与することで大きなチャンスが開けると考えている。幻覚剤のような分野について政府が今日このカテゴリーに触れることはほとんどないが、民間部門は興味を持っているという事実を指摘し「PTSDの代替療法を探すということは公共部門にとっては困難でも、民間部門では可能です」と話している。ただし現時点ではRisk & Returnもこの分野への投資は行っていない。

このファンドの収益の半分はRisk & Returnの慈善事業部門に還元され、現場で働く人々を任務中も任務後も支援するという同じテーマに沿って慈善団体に助成金を提供している。同組織らは複雑な対応が求められる分野に多面的にアプローチすることで、潜在的なニーズと最適な資金源をマッチングさせることができるのではないかと期待を寄せている。

このように営利と非営利を組み合わせたハイブリッドなベンチャーモデルは、他の分野でも見られるようになっている。スウェーデンの財団兼ベンチャーファンドNorrsken(ノールスケン)は、メンタルヘルスや気候変動など、国連の持続可能な開発目標(SDG)に掲げられている分野に投資している。MIT Solve(MITソルブ)は、パンデミックやヘルスセキュリティなど、ハイブリッドなアプローチによるスタートアップイノベーションに取り組んでいるプログラムだ。災害が身近になってしまった今、パンデミックやヘルスセキュリティなどの非常に重要な分野のテクノロジーに対する資金提供が増えるということは、実にすばらしい動きなのではないだろうか。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:自然災害Risk & Return

画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)