アップルのApp Storeがドイツで調査の対象に、競争規制当局が「市場支配力」に向けた手続きを進行

次の記事

世界に先駆け有機半導体レーザー評価用サンプルの製造・販売を目指す、九州大学発のKOALA Techが4億円調達

ドイツの競争規制当局であるドイツ連邦カルテル庁(FCO)は、ビッグテックGAFAの「ビンゴ」カードを完成させ、Apple(アップル)に対する手続きを開始した。

当局はすでに2021年に入り、Amazon(アマゾン)Facebook(フェイスブック)Google(グーグル)に対して同様の調査を開始しており、本措置も、改正されたドイツの競争法の基準をiPhoneメーカーが満たすかどうかを判断するものとなる。

関連記事:大手テック企業に対する反トラスト調査の手を強めるドイツ競争規制当局がGoogle News Showcaseの徹底調査開始

2021年1月に施行された同法の第10次改正法により、連邦カルテル庁は、大規模なデジタル企業が「市場間競争において重要な影響(paramount significance)を与える」と判断された場合や、その反競争的行為への関与を防ぐ目的において、これらの企業の慣行に対して積極的に介入することができるようになった。

この競争法(通称、GWBデジタル化法)の重要な新条項、特に第19条aに関する議論が行われた先に行われたパネルディスカッションで、FCOのAndreas Mundt(アンドレアス・ムント)長官は、この競争法の更新はFacebookによるインターネットユーザーの「スーパープロファイリング」に対する長期にわたる(かつ先駆的な)訴訟の経験に影響を受けたと説明した。

関連記事:ドイツ裁判所がフェイスブックに対する「スーパープロファイリング」訴訟を欧州司法裁判所に付託

要するに、ドイツの競争法には現在、競争法とデータ保護を内包する有害性の理論があるということだ。ただしAppleの場合、同社が管理するテック帝国は概して(乱用というよりは)ユーザーのプライバシー保護と結びついている。

しかし、ドイツの反トラスト法に対する包括的な改正は、ビッグテックに広く向けられたものだ。FCOによる規制の対象となる条項を通じて、市場の開放を維持し、イノベーションを促進し、いかなる不正行為も阻止することを目的としている。当該規制の対象には、自己優遇やバンドル、巨大企業の融合商品による隣接市場への強引な参入、競合他社を締め出すために相互運用性やデータアクセスをブロックすること等が含まれている。

各ケースの特性や個別のエコシステム事業に応じて、条項が組み合わされて展開され、テック大手が法の下で対処され得るだろう。そのため改正法が実際にどのように機能するかはまだ未知数だ。これまでのところ、FCOはGAFAに対して法律を適用できるかどうかをそれぞれのケースで判定中である。

Appleの訴訟に関して、ムント長官は米国時間6月21日の声明で、App Storeの運営は調査の「主要な焦点」になると述べ、その理由として「Appleがサードパーティの事業活動にさまざまな方法で影響を与えることが考えられる」と指摘した。

「Appleがその専有OSであるiOSを用いて、複数の市場にまたがるデジタルエコシステムをiPhoneを中心に構築したかどうかを検証する」と同長官は続けた。「Appleはタブレット、コンピュータ、ウェアラブルを製造し、デバイス関連のサービスを数多く提供している。同社はさまざまなハードウェア製品の製造に加えて、 App Store、iCloud、AppleCare、Apple Music、Apple Arcade、Apple TV+などの提供をサービス事業の一環として行っている。これらの分野における同社の立場を評価するだけでなく、複数の市場レベルにわたる広範な統合、技術的および財務的資源の規模、データへのアクセスなどについて、さまざまな側面から検討していく」。

FCOはまた、Appleに対する「反競争的行為の可能性に関連した」多くの苦情が寄せられていることについてプレスリリースで言及した。例えば、iOS 14.5の導入でユーザー追跡が制限されたことに対する広告およびメディア業界からの抗議などだ。また、GWBの第19a条で禁止されている自己優遇の可能性として、同社独自のアプリケーションを排他的にプリインストールしたことに対する苦情も挙げられている。

「アプリ開発者はまた、Appleが提供するアプリ内課金システム『App内課金(In-App Purchase、IAP)』の義務的利用とそれにともなう30%の手数料率を批判している」とFCOは同プレスリリースで付言している。「これに関連して、AppleのApp Storeにおけるアプリ開発者のマーケティング上の制限についても対処されている。後者の苦情は、ストリーミングサービスのSpotifyに制限を課して自社サービスを優先させているとして欧州委員会がAppleに対し現在進めている訴訟と類似している。この点に関して、連邦カルテル庁は必要に応じて欧州委員会や他の競争当局と連絡を取る方針である。これまでのところ、さらなる手続きを開始する決定はなされていない」。

FCOの行動についてTechCrunchがAppleにコメントを求めたところ、広報担当者の名前で以下のような回答が送られてきた。

Appleはイノベーションと雇用創出の原動力であることに誇りを持っており、ドイツのiOSアプリ経済が支える雇用は25万件を超えています。App Storeによる経済成長と活動は、あらゆる規模のドイツの開発者に、世界中のユーザーと情熱と創造性を共有する同一の機会を与えるとともに、顧客が好みのアプリをダウンロードするための安全で信頼できる場所を作り、彼らが期待するプライバシー保護を提供するものとなっています。ドイツにはAppleの欧州最大のエンジニアリング拠点もあり、ミュンヘンのEuropean Silicon Design Center(欧州シリコンデザインセンター)に新たな10億ユーロ(約1320億円)の投資も行われています。当社のアプローチについてFCOと議論し、FCOの懸念についてオープンな対話を行う機会があることを期待しています。

FCOが裁定を下すと「重要な影響(paramount significance)」の認定は5年間続く。一方で、第19a条による訴訟は意図的に早められ、上訴はドイツの連邦司法裁判所(専属的管轄権を与えられている)に委ねられる。その目的は、Facebookのスーパープロファイリングに対するFCOの訴訟で起きたような、長期間に及ぶ長引く訴訟を回避することにある。同訴訟は、連邦カルテル庁がFacebookのデータ慣行の調査を開始してから5年もの月日が流れた2021年3月に、法的問題としてCJEU(欧州司法裁判所)に付託されたものだった。

GAFAが欧州最大の経済圏でどのように事業を展開していくのかという点において、今後数カ月から数年の期間は非常に重要な意味を持つだろう。そしてその延長線上で、多くの管轄区域がビッグテックを規制する方法に積極的な関心を寄せている中、欧州やそれ以外の地域でも同じような様相となる可能性が高い。

例えば2021年3月には、英国競争・市場庁(Competition and Markets Authority、CMA )がAppleのApp Storeの調査を開始している。同時に同庁は、テック大手への規制を強化することを念頭に置いた「競争促進」を生み出す国内法の改革に取り組んでいる。

また、欧州連合(EU)の立法者たちは2020年12月にデジタル市場法案を提出し、いわゆる「ゲートキーパー」プラットフォームのパワー市場に対処することを目指している。

FTC(米連邦取引委員会)がLina Khan(リナ・カーン)氏を委員長に任命したことも、米国におけるテック業界の反トラスト法に対する方針転換を意味するように思われる。

関連記事:英競争当局がアップルのApp Store独禁法調査を開始

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleApp Storeドイツ独占禁止法

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)