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ダッジが電動マッスルカーの発売を予告、それはどんなクルマになるのか?

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「マッスルカー」という言葉は、常に譲歩の婉曲表現だった。お金をかけずに最大のパワーを手に入れたければ、Porsche(ポルシェ)やLotus(ロータス)のようなスポーツカーのことは忘れて、マッスルカーを買い、コーナーは少しゆっくりと曲がるようにすればいい。過去に多くのマッスルカーを世に送り出してきたDodge(ダッジ)は米国時間7月8日、電気自動車のマッスルカーを作り、2024年に発売すると発表した。最初に思い浮かぶ疑問。それがマッスルカーだとしたら、足りないものはなんだろうか?

マッスルカーとスポーツカーの間には違いがあり、それを知るのにダッジというブランドは最適だ。ダッジは長い間、馬力と直線の速さを連想させるブランドだった。Dodge Viper(ダッジ・バイパー)にDodge Challenger(ダッジ・チャレンジャー)、不格好なSUVのDodge Durango(ダッジ・デュランゴ)にさえ、710馬力を発揮するV8エンジンが搭載された派手な仕様が用意されている。そのパワーはポルシェのほとんどのモデルを凌ぐが、誰もサーキットでデュランゴをポルシェ911と競わせようとはしない。

電気自動車の魅力の1つは、機械的にシンプルであることだ。マッスルカーの元来の宣伝文句もそれだった。アメリカの自動車メーカーは、多大な開発コストがかかるチューニングされたシャシーや優れた空力特性を持つスポーツカーを提供する代わりに、日常的なファミリーカーに大きなエンジンを搭載したのだ。そう、マッスルカーとはそういうものだ。

ダッジがマッスルカーの鋳型を用いて、低コストでハイパワー、直線(のみ)で猛烈に速い電動レーサーを作ると仮定してみよう。Toyota Supra(トヨタ・スープラ)のようなクルマではなく、ダッジ・チャレンジャーの電気自動車版だ。このクルマにはいくつかの明確な特徴がある。

1つはバーンアウト。マッスルカーはバーンアウトをすることで知られているが、それはパワーが過剰で、シャシーが洗練されておらず、タイヤのトレッドをまったく無視した結果の副産物だ。ダッジは発表時のツイートでこの性能を予告し、4つのタイヤから煙を発生させているクルマの姿を示した。ダッジは顧客層をよくわかっている。

そして2つめ。マッスルカーのオーナーは、自分のクルマを自宅でチューニングしたり、調整したり、改造できることを期待している。それはこの種のクルマの大きな魅力の1つだ。工場出荷状態のマッスルカーは十分高性能だが、購入者は自動車メーカーが車両価格をできるだけ低く抑えるために、特定のパーツを省略していることを理解している。もっとトラクションが欲しいなら、タイヤを交換する。コーナリング性能を向上させたいなら、剛性の高いスタビライザーを装着する。電動マッスルカーにも、オーナーが改造する楽しみは残されるべきだ。だが、電気自動車の場合は、機械的なアップグレードよりも、ソフトウェアの調整によって性能を引き出すようなチューニングが多くなるだろう。

Tesla(テスラ)は以前から、オーナーが改造したり自宅で修理することを嫌う姿勢が批判されてきた。ダッジなどの自動車メーカーにとっては、そこにチャンスがある。自動車の購入者の多くは、自分のクルマに手を入れる楽しみを期待している。このような客層の支持が、ダッジの今後の成長には欠かせないと思われる。

以上のようなマッスルカーならではの特徴は、ダッジにとって魅力的なセグメントとなるはずだ。現在のダッジは、市場の変化に対応することに苦心し、古臭いクルマばかりになってしまっている。マッスルカーで培った低コストで高性能なクルマを作る方法を使えば、開発コストを抑えることができるだろう。そして、開発コストを低く抑えることは、今のダッジに必要なことなのだ。

ダッジは現在、世界第4位の自動車メーカーであるStellantis(ステランティス)の一部門となっている。ステランティスは、これまでダッジ・ブランドを所有していたFiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)と、フランスのGroupe PSA(グループPSA)が合併して新設された多国籍自動車会社で、その本社はオランダに置かれている。それ以前の話をするとさらにややこしい。1900年代のはじめにダッジ兄弟が起こした会社から始まったダッジは、1928年にクライスラーに買収された。かつてGMやFord(フォード)と並んで「ビッグ3」と称されたそのクライスラーも、今やステランティスが所有する1つのブランドに過ぎない。ダッジとクライスラーを合わせても、現在販売しているモデルは6車種しかなく、しかもこの数年間は大幅な刷新が行われていない。

復活した「Bronco(ブロンコ)」がフォードを活性化させたように、エレクトリックマッスルカーがダッジを活性化させるかもしれない。

フォードを見て欲しい。2021年型ブロンコがヒットしているのは、消費者がブロンコに期待していることにうまく合致しているからだ。ブロンコに長く付きまとっていたエンジンやシャシーの問題を、人々はほとんど覚えていない。代わりに人々の記憶にあるのは、頑丈なオフローダーというイメージ(とアメリカンフットボール選手と警察のカーチェイス)であり、だからフォードは新型ブロンコとして、現代的な利便性を備えた頑丈そうなオフローダーを作り上げた。

ダッジも同じようにして、今後発売される電動マッスルカーを開発するべきだ。しかし、マッスルカーと呼ぶからには、それなりの期待が寄せられることは間違いないわけで、ダッジはそれを十分に承知しているだろう。

同様に、フォードも4ドアの電気自動車を「Mustang(マスタング)」という名前で販売している。Chevrolet(シボレー)も「Corvette(コルベット)」という名前の電動SUVを準備しているという噂が絶えない。ほとんどの人が電気自動車のマスタングを気に入っているが(私はそうではない)、マスタングという車名がブランディングを混乱させていることも認めている。

では、ダッジの電動マッスルカーは何という車名になるのだろうか?最近では、自動車メーカーが新しいブランディングのために、過去のカタログを利用することが多くなっている。GMは初の電気トラックとしてHummer(ハマー)ブランドを復活させた。フォードもブロンコと「F-150 Lightning(F-150ライトニング)」という名前を復活させた。ダッジは豊富なマッスルカーの歴史を持っている。例えば伝説的なCharger Daytona(チャージャー・デイトナ)や、価格を抑えた「Corone(コロネット)」とそれをベースにアップグレードされた兄弟車の「Super Bee(スーパー・ビー)」「Dodge Stealth(ダッジ・ステルス)」や「Dodge Polara(ダッジ・ポラーラ)」なんてクルマもあった(ただし、ポラーラはEVメーカーのPolestar[ポールスター]に近すぎるかもしれない)。また、ダッジはクライスラーが以前使用していたPlymouth(プリムス)ブランドの車名を使うこともできる。その中には、Roadrunner(ロードランナー)、Duster(ダスター), Fury(フューリー)そしてBarracuda(バラクーダ)などがある。

最後の疑問。ダッジはこのクルマに、どうやってマッスルカーらしい音を与えるのだろうか?個人的には、そんなことはやらないで欲しい。私はパフォーマンスについて、聞くことよりも感じることを重視しているからだ。ちなみに私は、カスタムエキゾーストを装着した大きなF-150に乗っている。

Timothy Kuniskis(ティモシー・クニスキス)「ダッジが売るのは電気自動車ではありません。アメリカン eマッスルカーです」

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Dodge電気自動車マッスルカーStellantis

画像クレジット:Stellantis

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(文:Matt Burns、翻訳:Hirokazu Kusakabe)