【インタビュー】人工流れ星の2023年に商用運用開始へ、10年の節目を迎える日本の宇宙スタートアップ「ALE」

次の記事

渋谷区・新宿区・豊島区のファミリーマート130店がバカンのトイレ混雑抑止IoTサービス「VACAN AirKnock」導入

人工の流れ星で夜空を彩る。岡島礼奈代表が2011年9月に立ち上げ、2021年で10年の節目を迎える民間宇宙スタートアップのALE(エール)は、人工衛星から人工流れ星の素となる流星源を放出し、時刻・場所を指定して大気圏に再突入させ流れ星を発生させる「Sky Canvas」事業を進めている。

ALEは「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げ、人工流れ星などにより宇宙の美しさやおもしろさを届け、人々の好奇心を刺激し、宇宙開発のきっかけを創出していく。また、宇宙から貴重なデータを取得し、地球の気候変動のメカニズム解明に寄与することを目指し、宇宙デブリ防止装置開発事業で軌道上環境の維持に貢献し、宇宙産業の持続的発展をはかる。これらのアプローチで、ALEは科学と人類の持続的な発展に貢献していく考えだ。

岡島氏は東京大学大学院理学系研究科天文学専攻で、博士号(理学)を取得している。学生のころ、友人らとしし座流星群を見たことがきっかけで「流れ星を人工で作れるのでは」と思い立ったという。その後、基礎科学の発展の為に何かできないかと考え、人工流れ星のアイデアで民間宇宙スタートアップとして挑戦を始めた。岡島代表に事業内容や現在までの歩みを聞いた。

夜空に好きな時に流れ星を生む「Sky Canvas」

人工流れ星の実現を目指す「Sky Canvas」事業は現在開発中の人工衛星3号機を2023年に打ち上げ、同年に人工流れ星のサービス開始を予定している。

天然の流れ星は宇宙空間に漂うチリが大気圏に突入した時に、チリ前方の空気が強く圧縮されて発光するもの。この現象を人工的に再現するため「アーク風洞」と呼ばれる装置を内製し、グリーンやオレンジ、ブルーなどさまざまな色に光る流星源の材料設計も進めている。

流星源は1粒1cmほど。人工流れ星は、流星源を人工衛星の格納庫から放出機構に送り出し、円筒内で加速して放出させる仕組みだ。実験では秒速最大400mの放出速度と、速度誤差1%未満の精度をクリア。人工流れ星は高度約60~80kmで消滅するため、宇宙デブリとはならないという。

流星源1粒は地上200km圏内で見ることができ、広さで例えればほぼ関東全域をカバーする。人々がオーロラを見に行くように「この国、この地域に行けば流れ星を見ることができる」と、ALEは人工流れ星を観光誘客のキラーコンテンツにしていく考えだ。すでに海外からも引き合いが多くあるという。

別の仕事で得た収入を研究費につぎ込む日々

岡島氏は2009年から人工流れ星の研究を始め、2011年にALEを設立後、大学研究室などとともに、人工流れ星に必要な要素技術の研究を進めていった。14年には流星源の実験により、相当の輝度が得られたことで初めて事業化が見えてきた。

ただ、岡島氏はそれまで、ALEの事業にフルコミットしていなかった。岡島氏は外資系大手金融企業に勤めていた経験を活かしたコンサルティングや調査など、別の仕事を個人で受け、その収入を研究費につぎ込んでいたのだ。

人工流れ星の事業化が視野に入ったのち、岡島氏は2016年にエンジェル投資家を中心に約7億円の資金調達を実施。ALEとしてメンバーの増員も行った。ここから人工流れ星事業は勢いを増す。

2017年に宇宙関連の新たな要素技術に関する実証などを行うJAXAの「革新的衛星技術実証プログラム」採択され、18年に初号機となる人工衛星ALE‐1が完成し、19年にはALE‐1の打ち上げに成功した。

勢いに乗っていた「Sky Canvas」事業だったが、壁が立ちはだかる。2019年末に打上げた2号機で世界初の人工流れ星を実現させる計画だったが、宇宙空間特有の影響が予測よりも大きく、流星源を放出装置に送り込む部品が正常に動作せず、失敗に終わった。他の機器はすべて正常に動いていた。

「とても悔しかった」と岡島氏。その後、社内の開発体制を強化し、宇宙業界出身のマネージャーや外部レビュアーらも増員。2021年2月には、シリーズAの追加ラウンドとして総額約22億円の資金調達を行い(シリーズAを含むALEの累計調達金額は約49億円に上る)、現在は同資金を基に2023年に人工流れ星の実現を目指している状況だ。

また、ALEの人工流れ星事業を不安視する声もあった。岡島氏は「我われの事業は安全性に特に配慮していますが、このことをさまざまな人々に説明し、理解してもらうまでにも長い道のりがありました」と振り返る。

他の人工衛星と同様に、ALEの人工衛星には必要最低限ではなく余裕を持たせて装置を搭載し、障害時にも対応できるよう冗長性を持たせている。例えば、星の位置から人工衛星の位置や角度を把握し姿勢制御を行うセンサー「スタートラッカー」は1つだけではなく3つあり、GPSやCPUも3つずつある。

岡島氏は「いずれかの機器に誤作動が起きたときには、流星源の放出はできないシステムになっています。この辺りの安全性の担保をJAXAとともに進めてきました」と説明する。

さらにALEでは現在の宇宙空間にある人工衛星などのデータをNASAや18SPCS(米国空軍)のデータベースで確認。それを元に衝突確率を算出すシステムを作り上げている。流星源を放出する時間帯に、他の人工衛星が現れないかといったことをすべて計算し、クリアにしてから稼働させるようにしているのだ。

また、世界各国の宇宙関連機関で構成される国際機関間スペースデブリ調整委員会(IADC)に対しても、ALEの事業ミッションについて説明していく中で「国際的なデブリの権威の方々にも安全性を認めてもらえるようになりました」と岡島氏は語った。

ALEが展開する3つの事業

ALEが進めている事業は、人工流れ星だけではない。この他に「大気データ取得」とデブリ防止装置を開発する「小型人工衛星技術研究開発」事業がある。事業としてはそれぞれ独立しているものの、根幹にある要素技術はつながっているという。

岡島氏は「人工衛星を小型化し、小さなスペースに高密度で技術を搭載して、宇宙空間であっても精緻な動作を実現することが、我われの強みでもあります。この技術はデブリ化防止装置にも、大気データ取得にも必要なモノです」と語った。

大気取得データ事業は2020年代半ばから宇宙実証および商用化を始める予定だ。人工流れ星で培った衛星技術を活用し、大気データを取得し、解析することで、気象予測の精度向上や異常気象のメカニズム解明へ活用していく。将来的には、人工流れ星の衛星に大気データ取得のセンサーを取り付けることで、気象観測により貢献していくことなども検討している。

一方、小型人工衛星技術研究開発は、宇宙デブリ防止装置をJAXAと事業協同実証を通じて開発中だ。同装置を打ち上げ前の人工衛星に搭載し、人工衛星のミッション終了後に長い紐(EDT)を宇宙空間で展開。地球磁場や大気抵抗を使って軌道高度をより短期間で降下させることで、人工衛星を地球大気に再突入・焼却廃棄させることができるという。

すでに2020年8月26日付で、宇宙産業における総合的なサービスを展開するSpace BDとデブリ化防止装置の全世界を対象とする販売代理店契約締結に向けた基本合意書を締結している。

なお、岡島氏は人工流れ星とは別に、新たな宇宙エンタメ事業の構想も進んでいると話した。「まずは人工流れ星を成功させることが先決ですが、新たな要素技術の開発も細々と進めています。結構おもしろいことができるのでないかと、考えています。楽しみにしていてください」と笑顔で語った。

関連記事
日本の民間宇宙スタートアップ企業ALEがシリーズA追加ラウンドで総額約22億円の資金調達
堀江貴文氏語る「日本が世界に勝てるのは宇宙とロボティクス、今が大チャンス」

カテゴリー:宇宙
タグ:ALEインタビュー日本人工衛星