ホンダから誕生したベンチャー企業Ashiraseが視覚障がい者向けの先進的歩行支援システムを公開

次の記事

Snapchatが地図上でおすすめのスポットを紹介する「私の場所」機能を追加

学術誌「Investigative Ophthalmology and Visual Science(眼科学および視覚学の研究)」に掲載された2020年のデータによると、世界では2億2500万人が中程度または重度の視覚障がいを患っていると推定され、4910万人が失明しているという。Honda(ホンダ)の新事業創出プログラムから誕生した日本のスタートアップは、視覚障がい者が世界をより簡単に、より安全にナビゲートできるようになることを望んでいる。

ホンダのビジネス創造プログラム「IGNITION(イグニッション)」から生まれた最初のベンチャー企業として6月にデビューした株式会社Ashirase(あしらせ)は、米国時間7月28日、視覚障がい者向けシューズイン型ナビゲーションシステムの詳細を公開した。「あしらせ」と名付けられたこのシステムは、スマートフォンのナビゲーションアプリと連動し、足に振動を与えることで歩く方向を知らせ、視覚障がい者の日常生活における自立を支援することを目的としている。Ashiraseはこのシステムを2022年10月までに製品化したいと考えている。

ホンダは、同社の従業員が持つ独創的な技術、アイデア、デザインを形にし、社会課題の解決や同社の既存事業を超えることを目的として、2017年にIGNITIONを起ち上げた。AshiraseのCEOである千野歩氏は、2008年からホンダでEVのモーター制御や自動運転システムの研究開発に携わってきた。千野氏の経歴は、このナビゲーションシステムの技術にも表れており、同氏によれば、自動車用の先進運転支援システムや自動運転システムから着想を得たという。

「共通する視点には、例えば、センサー情報の活用方法などが挙げられます」と、千野氏はTechCrunchの取材に語った。「私たちは、センサーフュージョン技術、つまり異なるセンサーからの情報を組み合わせる技術を使っています。私自身、その分野の経験があるので、それが役に立ちました。加えて、自動運転技術と重なる点もあります。というのも、私たちが安全な歩行というものを考えていたとき、自動運転の技術がコンセプトの発想につながったからです」。

「Ashirase」とは日本語の「足」と「知らせ」を意味する。その名が表す通り、アプリ内で設定したルートに基づき、靴に装着したデバイスが振動することで、直進、右左折、停止といった情報をユーザーに知らせ、ナビゲーションを行う。デバイスには加速度センサー、ジャイロセンサー、方位センサーで構成されたモーションセンサーが内蔵されており、ユーザーがどのように歩いているかを把握することができる。

外出時には、衛星測位システムによる位置情報と、足の動作データをもとに、ユーザーの現在位置を特定し、誘導情報を生成する。Ashiraseのアプリは、Googleマップなどさまざまな地図ベンダーと接続されており、異なる地図で得られる異なった情報に適応するように、デバイスを切り替えることができると千野氏はいう。例えば、ある地図では封鎖されている道路についての情報が更新されている場合などには、その情報を無線で送ることができるので便利だ。

「将来的には、屋外環境のセンサーを利用して、地図そのものを生成する機能を開発したいと考えていますが、それは5年くらい先の話になるでしょう」と、千野氏は語った。

バイブレータは足の神経層に沿って配置されており、振動を感じやすいように設計されている。直進を指示する時は、靴の前方に備わるバイブレーターが振動する。左右に曲がる場所に来たら、靴の左右に配置されたバイブレーターが曲がる方向を知らせる。

このような直感的なナビゲーションにより、歩行者は常にルート確認しなければならない心理的負担から解放され、より安全でストレスの少ない歩行が可能になると、Ashiraseは述べている。

また、例えば横断歩道などのように、デバイスが前方の障害物を警告することができない場所でも、ユーザーは聴覚による周囲の安全確認により集中できる。

「今後は、視覚障がい者のように障害物を認識する手立てを持たない全盲のユーザーに向けた技術的なアップデートも考えています」と、千野氏はいう。「今のところ、このデバイスは視覚障がい者の歩行を想定して設計されています」。

ショッピングモールなどの屋内では、衛星測位システムの電波が届かず、ユーザーが位置を特定できる地図もない。これを解決するために、同社ではWiFiやBluetoothを使って測位し、店内の他の機器や携帯電話と接続して、視覚障がい者の位置を特定することを計画しているという。

Ashiraseでは公共交通機関との連携も検討しており、次の停留所に到着したことやその近くにいることを、ユーザーに知らせることができるようにしたい、と千野氏は語っている。

どんな靴にも取り付けられるこの小さなデバイスには、たくさんの技術が詰め込まれている。千野氏によれば、さまざまな種類、形、サイズの靴に柔軟にフィットするようにデザインされており、1日に3時間の使用なら週に1回の充電で済むという。

Ashiraseは、2021年の10月か11月にベータ版をリリースしてテストとデータ収集を行い、2022年10月までに量産を開始したいと考えている。製品版には、まだ価格は明らかになっていないがユーザーに直接販売するモデルの他、月額2000~3000円程度のサブスクリプションモデルも用意される見込みだ。

市場投入までには、すでに調達した資金を含めて、2億円ほど必要になると千野氏は考えている。同社はこれまでに、一度のエクイティ投資ラウンドと、いくつかのノンエクイティ投資ラウンドで、総額7000万円の資金を調達しているという。

ホンダは投資家の1人として同社に関わり、事業をサポートし、フォローしていくものの、Ashiraseは独立した会社として上場することを目指している。

関連記事
ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号のAshiraseが5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度製品化
ホンダと楽天が自動配送ロボットの走行実証実験を共同で開始、筑波大学構内および一部公道で実施
北米ホンダ初の電動SUV「プロローグ」は2024年初めに発売、EV量販モデル第1弾はGMと共同開発

カテゴリー:ハードウェア
タグ:HondaAshirase視覚歩行

画像クレジット:Ashirase

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)