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心電図読み取りAIを開発するCardiomaticsが約3.5億円を調達

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ポーランドを拠点とするヘルステックAIスタートアップのCardiomatics(カーディオマティクス)が、心電図読み取り自動化技術の普及に向け、シードで320万ドル(約3億5200万円)を調達したと発表した。

このラウンドは、中東欧のVCであるKayaがリードし、Nina Capital、Nova Capital、Innovation Nestも参加した。

シード資金には、ポーランド国立研究開発センターからの100万ドル(約1億1000万円)の非エクイティの助成金も含まれている。

2017年創業の同社は、心臓専門医や臨床医などの医療従事者が心電図を解釈する際に、診断を迅速化・効率化するクラウドツールを販売している。約20種類の心臓の異常や疾患を検出・分析する作業を自動化し、訓練を受けた人間の専門家が行うよりも早く、スキャンに関するレポートを数分で作成するソフトウェアだ。

Cardiomaticsは、自社の技術がヘルスケアへのアクセスの大衆化に貢献しているとアピールしている。このツールにより、心臓専門医はワークフローを最適化し、より多くの患者を診察・治療できるようになる。また、総合診療医や小規模な診療所では、患者を専門病院に紹介することなく、心電図分析を提供できるとしている。

このAIツールは、これまでに300万時間以上の心電図信号を商業的に分析しており、スイス、デンマーク、ドイツ、ポーランドなど10カ国以上・700以上のクライアントに利用されているという。

このソフトウェアは、現段階で25台以上の心電図モニター機器と統合することができる。既存の医療用ソフトウェアとの差別化を図るため、最新のクラウドソフトウェアインターフェースを提供しているとアピールしている。

AIが読み取る心電図の精度はどのように検証されているのか、同社は次のように話す。「アルゴリズムの開発に使用しているデータセットには、約10万人の患者の100億回以上の心拍数が含まれており、体系的に増やしています。データセットの大部分は当社が独自に構築したもので、残りは一般に公開されているデータベースです」。

「データの90%はトレーニングセットとして、10%はアルゴリズムの検証とテストに使用しています。データ中心のAIの常として、テストセットを非常に重要視しており、クライアントからのシグナルを可能な限り表現しているかどうかを確認しています。私たちは、アルゴリズムとデータの両方を継続的に開発する中で、アルゴリズムの精度を月1回の頻度で実験的にチェックしています。当社のクライアントも臨床現場で毎日チェックしています」。

Cardiomaticsは、今回のシード資金を、製品開発への投資、既存市場での事業活動拡大、新規市場参入のための準備に使用すると述べている。

「今回のラウンドで調達した資金は、市場をリードするAI技術のスケールアップや、医師への最高の体験の提供など、欧州全域における速いペースでの拡大計画を支えるために使います。新しい市場に投入する製品も準備します。将来の計画には、FDA(米食品医薬品局)認証の取得や米国市場への参入も含まれています」と付け加えた。

このAIツールは、2018年に欧州の医療機器認証を取得した。ただし、欧州連合の医療機器とAIに関する規制は進化を続けており、2021年初め(5月)には、欧州連合の医療機器指令(現EU医療機器規則)が更新された。

また、新しいAIアプリケーションのためのリスクベースのフレームワーク(別名「人工知能法」)も登場し、CardiomaticsのようなAIヘルステックツールに対するコンプライアンス上の要求が拡大している。安全性、信頼性、自動化された結果に偏りがないことを実証するなどの要件が導入されようとしている。

関連記事:欧州がリスクベースのAI規制を提案、AIに対する信頼と理解の醸成を目指す

規制の状況について同社はこう答えた。「2018年に発売したとき、私たちは欧州で医療機器として承認された最初のAIベースのソリューションの1つでした。ペースに遅れないように、私たちは欧州の状況と、AIのアプリケーションを規制するためのリスクベースのフレームワークの立法化のプロセスを注意深く観察しています。また、近々導入される可能性のある規制や要件の草稿も注視しています。人工知能に関する新たな基準や要件が導入された場合には、直ちに会社や製品の運用へと導入し、製品の信頼性と安全性を確保するための必要な証拠とともに、文書化とアルゴリズムの検証を進めていきます」。

だが、心電図読み取りアルゴリズムの有効性を客観的に測定することは困難であることも認めた。

「アルゴリズムの有効性を客観的に評価することは非常に困難です」と同社はTechCrunchに話した。「ほとんどの場合、1台のデバイスで登録された、特定の患者グループの狭い範囲のデータを使って評価します。我々は、さまざまなグループの患者の、異なる記録装置からの信号を受け取ります。私たちは、この効果を評価する方法に取り組んでいます。当社のアルゴリズムなら、記録装置やテスト対象となる社会集団など、研究にともなうさまざまな要因に関わらず、確実に有効性を評価することができるでしょう」。

「解析を医師が行う場合、心電図の解釈は、経験、規律、芸術の産物となります。人間が心電図を解釈するときは曲線を見ます。それは視覚的な層として機能します。アルゴリズムは絵ではなく数字の流れを見るので、タスクは数学的な問題になります。しかし、結局のところ、この領域に関する知識がなければ、効果的なアルゴリズムを開発することはできません」と同社は付け加えた。「私たち医療チームの知識と経験がCardiomaticsの芸術作品です。アルゴリズムは、心臓内科医が生成したデータでもトレーニングされていることを忘れてはなりません。医療従事者の経験し機械学習には強い相関関係があります」。

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画像クレジット:Science Photo Library / Getty Image

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi