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タンパク質探索プラットフォームのAbsciが市場デビューを果たす

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バンクーバーを拠点とし、多面的な医薬品開発プラットフォームを開発するAbsci Corpは米国時間7月22日、株式を公開した。一般的にリスクが高いと言われている医薬品開発事業だが、これはこの分野における新しいアプローチへの関心が著しく高まっていることを示唆するニュースである。

Absciは前臨床段階での医薬品開発の加速化に注力しており、薬の候補を予測し、潜在的な治療ターゲットを特定し、治療用タンパク質を何十億もの細胞でテストして、どれが追求する価値のあるものかを特定することができる複数のツールを開発、取得している。

Absciの創業者であるSean McClain(ショーン・マックレーン)氏は、TechCrunchのインタビューに応じ「我々は医薬品開発のための完全に統合されたエンド・ツー・エンドのソリューションを提供しています。タンパク質創薬とバイオマニュファクチャリングのためのGoogle検索だと想像してみてください」と話している。

IPOの初値は1株あたり16ドル(約1760円)。S-1ファイリングによると、プレマネー評価額は約15億ドル(約1650億円)となっている。同社は1250万株の普通株式を提供し、2億ドル(約220億円)の資金調達を計画しているが、Absciの株式はこの記事を書いている時点ですでに1株あたり21ドル(約2300円)にまで膨らんでいる。同社の普通株は「ABSI」というティッカーで取引されている。

同社がこのタイミングでの株式公開を決めた理由は、新たな人材を獲得して維持する能力を高めるためだとマックレーン氏は話している。「急速な成長と規模拡大を続ける当社にとって、トップクラスの人材の確保が欠かせません。IPOによって、優秀な人材の確保と維持のために必要な知名度が得られることでしょう」。

2011年に設立されたAbsciは、当初から大腸菌でのタンパク質の生産に着目。2018年には複雑なタンパク質を構築できるバイオエンジニアリングされた大腸菌システムである「SoruPro」という初の商用製品を発売した。2019年、同社は「タンパク質印刷」プラットフォームを導入することで、このプロセスをスケールアップさせている。

創業以来、今では170人の従業員を抱えるまでになり、2億3000万ドル(約253億円)を調達した同社。Casdin CapitalとRedmile Groupが主導して2020年6月にクローズした1億2500万ドル(約138億円)のクロスオーバーのファイナンスラウンドが最近の資金流入だ。しかしAbsciは2021年になって2つの大きな買収を行い、タンパク質の製造・検査からAIを活用した医薬品開発まで、提供するサービスを完成形へと近づけたのである。

2021年1月、AbsciはディープラーニングAIを用いてタンパク質の分類と挙動予測を行うDenoviumを買収。Denoviumの「エンジン」は、1億個以上のタンパク質で学習されたものだ。また6月には、特定の病気に対する免疫系の反応を分析するバイオテック企業、Totientを買収した。買収当時、Totientはすでに5万人の患者の免疫系データから4500の抗体を再構築していた。

Absciはすでにタンパク質の製造、評価、スクリーニング技術を保有していたものの、Totientの買収により新薬の潜在的なターゲットを特定することが可能になった。また、Denoviumの買収によりAIベースのエンジンが追加され、タンパク質の発見がこれにより容易になったのである。

「我々が行っているのは、ディープラーニングモデルに(自社のデータを)投入することで、それがDenoviumを買収した理由です。Totientを買収する前は創薬や細胞株の開発を行っていました。今回の買収により統合が完全になったため、ターゲット発掘もできるようになりました」とマックレーン氏は話している。

この2つの買収によって、Absciは医薬品開発の世界でとりわけアクティブかつニッチな位置に身を置くことになったわけだ。

数十年もの間、医薬品の研究開発はローリターンとされてきたにもかかわらず、医薬品開発における新たなアプローチの開発には注目すべき財政的関心が寄せられている。Evaluateの報告によると、新薬開発企業は2021年上半期、欧米の取引所でのIPOで約90億ドル(約9900億円)を調達している。医薬品開発は一般的にハイリスクであるにもかかわらずだ。バイオ医薬品のR&Dリターンは、2019年に1.6%と過去最低を記録し、現在も約2.5%までにしか回復していないとDeloitteの2021年の報告書は指摘している

医薬品開発の世界ではAIの役割がますます大きくなってきている。「ほとんどのバイオファーマ企業が、AIを創薬、開発プロセスに統合しようとしている 」と、同じくDeloitteのレポートは伝えている。また、スタンフォード大学のArtificial Intelligence Indexの年次報告書によると、2020年に創薬プロジェクトはこれまでで最も多くのAI投資を受けていたという。

最近では候補化合物を前臨床開発の段階へと進められた企業によって、医薬品開発におけるAI活用の将来性が高められているようだ。

6月、香港のスタートアップInsilico MedicineはAIが特定した特発性肺線維症の薬剤候補を前臨床試験の段階にまで進めたことを発表。この成果により2億5500万ドル(約280億円)のシリーズCラウンドが成立した。創業者のAlexander Zharaonkov(アレクサンダー・ジャラオンコフ)氏はTechCrunchに対し、PI薬の臨床試験を2021年の終わりか2022年初めに開始する予定だと話してくれた。

関連記事:開発期間も費用も短縮させるAI創薬プラットフォームのInsilico Medicine、大正製薬も協業

AIとタンパク質生産の両方をてがけるAbsciは、誇大広告が多く、混み合った空間ですでに確固たる地位を確立している。ただし、ビジネスモデルの詳細については今後詰めていかなければならないだろう。

Absciは医薬品メーカーとのパートナーシップによるビジネスモデルを追求している。つまり、自社で臨床試験を行うことは考えていないわけだ。医薬品の開発過程のある段階に到達することを条件とした「マイルストーンペイメント」や、医薬品が承認された場合に販売額に応じたロイヤルティで収益を得ることを想定している。

これにはいくつかの利点があるとマックレーン氏はいう。何百万ドル(何億円)もの研究開発費を投じて試験を行った後に新薬候補が失敗するというリスクを回避でき、また一度に「数百」もの新薬候補の開発に投資することができるのだ。

現時点でAbsciは製薬会社との間で9つの「アクティブなプログラム」を行っている。同社の細胞株製造プラットフォームは、Merck、Astellas、Alpha Cancer technologiesを含む8つのバイオファーマ企業の薬剤試験プログラムで使用されている(残りは非公開)。これらのプロジェクトのうち5つは前臨床段階、1つは第1相臨床試験、1つは第3相臨床試験、最後の1つは動物の健康に焦点を当てたものであると同社のS-1ファイリングに記載されている。

現在Absciの創薬プラットフォームを使用しているのはAstellasのみだが、マックレーン氏がいうように、創薬機能は2021年展開したばかりである。

しかしこれらのパートナーはいずれも、Absciのプラットフォームを正式にライセンスして臨床または商業利用しているわけではない。マックレーン氏は、9つのアクティブなプログラムの中には、マイルストーンやロイヤリティの可能性があると考えている。

確かに同社の収益性に関しては、まだ改善の余地がある。2021年の時点でAbsciは約480万ドル(約5億3000万円)の総収入を得ており、2019年の約210万ドル(約2億3000万円)から増加傾向にある。それでもコストは高止まりしており、S-1ファイリングによると過去2年間で純損失を計上。2019年には660万ドル(約7億3000万円)の純損失、2020年には1440万ドル(約16億円)の純損失を計上しているという。

同社のS-1によると、これらの損失は、研究開発費、知的財産ポートフォリオの構築、人材の雇用、資金調達、およびこれらの活動に対するサポートに関連する支出とされている。

マックレーン氏によると同社は最近、7万7000平方フィートの施設を完成させたという。今後事業規模を拡大していく可能性があるという意味なのだろう。

当面はIPOで調達した資金を使ってAbsciの技術を使用するプログラム数を増やし、研究開発に投資し、同社の新しいAIベース製品を継続的に改良していく予定だ。

画像クレジット:CHRISTOPH BURGSTEDT/SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)