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Inspiration4の民間人クルー、宇宙へ。史上初となる民間人だけのスペースX打ち上げミッション成功

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史上初、民間人だけのクルーで宇宙にたどり着いた。

Inspiration4クルーは、米国東部標準時午後8時4分(日本時間9月17日午前10時4分)にフロリダ州のNASAケネディ宇宙センターを離陸し、訓練を受けた宇宙飛行士がゼロという人類史上初の宇宙ミッションをスタートした。

再利用可能なFalcon9ロケットの第1段は、地球に帰還するまでに燃焼を2回行い、打ち上げ後9分半ほどでスペースXの無人機「Just Read the Instructions」に垂直着陸した。Dragonは、米国東部時間午後8時16分(日本時間9月17日午前10時16分)に第2段から分離した。

2段目の分離(画像クレジット:SpaceX

4人の乗組員は、Falcon9ロケットに取り付けられたスペースXのCrew Dragon Capsuleに乗って軌道上で過ごすことになる(このDragonは2回目、Falcon9の第1段は3回目の利用となる)。この高度は、2009年にハッブル望遠鏡の修理を行ったとき以来、人類が到達した最高高度となる。現在のハッブルや国際宇宙ステーションの軌道よりも高いため、宇宙にいるすべての人間の上を飛ぶことになる。

乗組員は、宇宙にいる間に地球を15周する。宇宙空間にいる間、Crew Dragonのノーズコーンに取り付けられた透明な観測ドーム「キューポラ」から宇宙空間を見ることができる。これは、宇宙にある連続した窓としては最大のものだ。Inspiration4は、宇宙飛行が人体に与える影響を解明するための研究をはじめ、さまざまな科学実験を軌道上で行う。また、宇宙飛行が人体に与える影響を知るための研究も含まれている。研究対象となるのは自分自身で、乗組員は飛行前、飛行中、飛行後に自分自身の生物医学的データや生物学的サンプルを収集する。

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現在のところ、億万長者がいなければ民間宇宙飛行は行えない。Inspiration4にもその1人がいる。ミッションの司令官であり、資金提供者でもあるJared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏は、決済処理会社Shift4 Paymentsで財を成した。残りのクルーである医師助手のHayley Arceneaux(ヘイリー・アルセノー)氏、地球科学者で科学教育の博士号を持つSian Proctor(シアン・プロクター)氏、ロッキード・マーティンのエンジニアであるChris Sembroski(クリス・センブロスキー)氏たちは才能豊かで、並外れた勇気を持っていることは明らかだが、普通の人たちだ。

発射台39AでFalcon 99ロケットを見るInspiration4のクルー(画像クレジット:SpaceX

このミッションはセント・ジュード研究病院のための募金活動だ(セント・ジュードの募金キャンペーンに寄せられた約7万2000件の寄付の中からセンブロースキーしは選ばれた)。クルーは総額2億ドル(約220億円)の募金を目指した。アイザックマン氏は1億ドル(約110億円)を寄付し、ミッションは目標を大きく上回り、打ち上げ時には3億ドル(約330億円)近くに達している。

民間人による最近の宇宙飛行と比べてはるかに長いミッションに向けて、乗組員たちは、レプリカのDragon Capsuleで12時間、さらに30時間のフライトシミュレーションを行い、2021年5月にはワシントン州のレーニア山に登るなど、何百時間ものトレーニングを行ってきた。

スペースXのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、ケネディ宇宙センターでクルーを見送った。また、スペースXのカスタム宇宙服を着た2台のModel Xで発射塔に向かうなど、スペースXらしいスタイルを貫いた。今回のミッションにおけるNASAの関与は、100万ドル(約1億1000万円)相当のサービスや機材を提供した程度のものだったが、スペースXを現在のような高い地位にまで押し上げる上で、NASAは重要な役割を果たした。スペースXは、2014年にNASAから26億ドル(約2841億円)を獲得し、商用クループログラムのもと、Crew Dragonを開発した。

世界最大かつ最も収益性の高い打ち上げ会社であるスペースXにとって、大きな節目となった。今回の打ち上げは、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏やRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏がここ数カ月で行ったものとは大きく異なるものだ。類似点もあるにはあるが、Blue OriginやVirgin Galacticのミッションよりも、クルーはより高く、より長く飛行することになるからだ。しかし、スペースXの有人宇宙飛行担当シニアディレクターであるBenji Reed(ベンジー・リード)氏が先に述べたように、3社とも宇宙飛行を「航空会社のようなモデルに進化させる」という目標を持っている。

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リード氏は「究極的に私たちは、多くの惑星を生命のあるものにしたいと考えています。つまりそれは、何百万人もの人々を宇宙に送り出すことを意味します。長期的なビジョンは、宇宙飛行が航空券を買って行くようなものになることです」という。

2021年も、スペースXはより多くの有人ミッションを実施する予定だ(ただし、全員が民間人のクルーということはない)。2021年末にはFalcon9によるISSへの宇宙飛行士輸送が予定されており、2022年初めには初の商用Axiomミッションが実施され、同じく宇宙ステーションへの輸送が予定されている。「Dragonのマニフェストは、刻々と忙しくなっています」と付け加えた。

すべてが計画どおりに進めば、3日後にはInspiration4のクルーがフロリダ沖のメキシコ湾または大西洋に着水、地球に戻ってくる姿を見ることがでる。天候も重要だ。「打ち上げ時の天候だけでなく、3~4日後の帰還時の天候も考慮しなければなりません」とリードは米国時間9月14日の記者会見で説明した。

クルーが軌道上にいる間は、Inspiration4のメンバーであるセンブロスキー氏(宇宙でウクレレを演奏する予定)が監修したプレイリストを聴くことができる。

画像クレジット:SpaceX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Katsuyuki Yasui)