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UVC殺菌システムR-Zeroが「目と耳」となる室内の占有センサーCoWorkrを買収、「職場にとってのOS」を作る

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パンデミック渦に誕生したバイオセーフティ企業のR-Zeroは2021年7月下旬、室内の占有センサーを開発する企業であるCoWorkrの買収を発表した。人々が職場に戻り、ワクチンが広がりを見せる今、新型コロナウイルスの出現によって生まれた企業たちはパンデミックの次の段階を見据えて適応し始めている。R-Zeroにとって今回の買収は、同社の焦点のシフトと言えるだろう。

2020年4月に設立されたR-Zero。同社は主に病院グレードのUVC殺菌システム、つまり特定の種類のウイルスを中和できる照明の開発に注力していきた(詳細は後述)。企業が建物内を除菌する方法を求めて奔走する中、同社は2億5650万ドル(約282億円)の評価額で合計5880万ドル(約65億円)の資金を調達。R-Zeroは現在、複数の矯正施設、Brooklyn Nets、Boston Celtics、サウスサンフランシスコ統一学区など、約1000の民間および公共部門の顧客を抱えている。

CoWorkrは2014年に設立され、Crunchbaseによると総額約20万ドル(約2200万円)のシードファンディングを調達している。

CoWorkrの買収により、R-Zeroは職場の人員と清掃の両方を管理するモノのインターネットのようなセンサーネットワーク開発を計画していると、R-Zeroの創業者であるGrant Morgan(グラント・モーガン)氏は話している。単に空気や物の表面を消毒するだけではなく、公共スペースにおける人(およびウイルスやバクテリア)の流れを管理する事に重点を置いていくようだ。

「職場のOSのようなモノです。健康と生産性を核とした室内環境の構築と維持を支援するツールを作っています」とモーガン氏はTechCrunchに話す。

CoWorkrの共同設立者であるElizabeth Redmond(エリザベス・レドモンド)氏とKeenan May(キーナン・メイ)氏は引き続きフルタイムで勤務することとなっており、企業の不動産関連の取り組みを運営し、IoT能力を開発していく予定だ。

「我々はお客様と多くの時間を過ごし、お客様の取り組みを理解できるよう努めてきました。中でも特に商業用不動産に対して注力しました」とレドモンド氏はTechCrunchに話している。

「大半の企業がハイブリッドな働き方に移行しているため、占有率情報はとても必要とされています。私たちがR-Zeroに加わったのは、ハイブリッドワークの未来、そして商業不動産の未来がどうなっていくのかという点が非常に注目されているためです」。

CoWorkr買収前のR-ZEROの主力製品はUVCライトの「Arc」というもので、これは清掃員が退社した後のオフィススペースに持ち込めるホイール付きの長方形のライトである。また、居住空間で使用可能な製品として提供されていた、同じくUVC光で除菌するエアフィルター「Arc Air」もある。

2020年半ばにUVCライトが脚光を浴びたのにはいくつかの理由がある。1つには共同スペースを消毒するための強力な手段だと考えられたこと、そしてもう1つには企業が新型コロナに対して技術的なソリューションを用いると一定のインセンティブが受けられたことなどが挙げられる。

UVCライトは何十年も前から病院で使用されており、スキャナーなどの表面を除菌したり、UVエアダクトに挿入して空気を除菌したりするために活用されてきた。研究によると、UVCは空気中のインフルエンザウイルスを不活性化することができるとされており、また限られた証拠しかないものの、UVCはウイルスの外側のタンパク質コーティングを破壊することで、SARS-CoV-2その他のコロナウイルスも不活性化できるという研究結果もある。

これらのライトは実際にパンデミック渦でも活用されていた。例えばニューヨーク都市交通局は、毎晩地下鉄車両を消毒するために100万ドル(約1億1000万円)相当のUVCライトを購入。2020年3月に可決されたCARES法は、企業や公的機関がUVライトなどの清掃サービスを購入する際に、政府の融資を利用できるようにするものだった。

しかし、消費者向けのランプの中には批判的な意見も存在した。1つは長時間照射すると目を傷つけたり、火傷をしたりする可能性があること。またUVC消毒に関するあるレビュー(UVC消毒会社と関係のある2人の科学者によって書かれたもの)では「性能に関する非科学的な主張」が広まっているとの厳しい評価がなされている。

一方で第三者機関によるテストを行なったところ、R-ZEROのArcは一般的な風邪のコロナウイルスと、表面に付着したノロウイルスの代替ウイルスの2種類のウイルスを99.99%減少させることが確認されている。また、大腸菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても99.99%の除菌効果があったという。

UVCライトの殺菌技術としての有用性については賛否両論あるものの、この業界が消え失せてしまうことはないと複数のアナリストが指摘している(例えばLGはUVベースのクリーニング分野に参入したところだ)。William Blairの商業サービス株式アナリストであるTim Mulrooney(ティム・マルルーニー)氏は、ワシントン・ポストに対し、人々の衛生に対する考え方が「パラダイムシフト」していると伝えている

2020年に行われた世論調査によると、衛生管理は従業員と顧客の両方にとって最重要事項であることが示唆されている。Deloitteが3000人を対象に実施した調査では、従業員の64%が共有スペースの定期的な清掃を重要視していると回答し、顧客の62%が毎接客ごとに表面を清掃して欲しいと回答している(新型コロナウイルスは表面接触では感染しにくいと考えられているのにも関わらずである)。

ワクチン接種の増加が、今後のオフィス衛生に対する認識にどのような影響を与えるかはまだわからない。しかしモーガン氏は、企業(および従業員)は身近な細菌の存在をパンデミック前よりも意識し、オフィス内の人の流れを管理することも含め、その蔓延を抑制する方法を模索し続けるだろうと考えている。

R-ZeroはCoWorkrを買収したことでUVC殺菌だけでなく、占有管理にも力を入れることになったわけだ。

モーガン氏はCoWorkrのセンサーをR-Zeroの「目と耳」と呼んでいる。R-Zeroは居住空間の空気清浄度に対応したUVCベースの2つの製品を発表する予定で、CoWorkrのセンサーを使って「完全な自動化」を実現していくという。

例えばCoWorkerのバッテリー式熱センサーを使えば、従業員はオフィスのどの部屋が使われているかを知ることができる。その情報をもとにUVベースのエアフィルターやその他の清掃用品を活用することができるという。

この情報をもとに、その日の晩にその部屋をより徹底的に掃除するよう清掃員に指示することができ、逆に一日中誰も触っていない部屋は掃除しなくてもよいことになる。

「お客様はすぐにROIを高めることができ、30〜40%の人件費を削減しています」とモーガン氏は話す。

パンデミックの「傷跡」が癒えることはまだなく、人々は今後も依然として衛生的な職場環境を求め続けるだろうと同社は考えている。

「ほぼ100%、お客様はこれを長期的な投資として考えています」とモーガン氏はいう。

画像クレジット:R-Zero

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)