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機械学習を使って作物の気候変動への適応を加速するAvalo

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気候変動は世界中の農業に影響を及ぼしており、その解決策に単純なものはほとんどない。しかし、何千マイルも離れた場所に移動することなく、暑さ、寒さ、干ばつに強い作物を植え付けることができたらどうだろう?Avaloは、AIを利用したゲノム解析によって、この高温の世紀においてより丈夫な植物を育てるために必要な時間と費用を削減することで、こうした植物の実現を支援している。

アカデミアの世界に入る前にスタートアップを試してみたいと考えた友人2人によって設立されたAvaloは、極めて直接的な価値提案をしている。だがそれを理解するには科学的な知識が少し必要となる。

大手の種子会社や農業会社は、主要な作物の改良版の開発に力を注いでいる。トウモロコシや米について、暑さ、虫害、干ばつ、洪水への耐性を少しでも高めることで、農家の収量と利益を大幅に向上させることができる他、以前は育たなかった場所で植物を育てることも可能になる。

「赤道地域では収穫量が大幅に減少しています。それはトウモロコシの種子が少なくなっているからではありません」と共同創業者でCEOのBrendan Collins(ブレンダン・コリンズ)氏はいう。「塩水の侵入により農地が劣化しているため、農家は高地を移動しています。しかし、苗木を枯らす早春の霜に見舞われます。あるいは、湿度が高く湿った夏に発生する真菌に対処するには、さびに強い小麦が必要です。こうした新しい環境の現実に適応するには、新しい品種を作る必要があります」。

このような改良を系統的に行う上で、研究者は植物の既存の形質を強調する。これは新しい遺伝子のスプライシングではなく、すでに存在している性質を引き出すものである、ということだ。これまでは、例えば遺伝学入門編におけるメンデルのような感じで、いくつかの植物を育てて比較し、目的の形質を最も良く体現する植物の種を植え付けるという単純な方法で行われていた。

しかし現在では、これらの植物のゲノム配列が決定されており、もう少し直接的になる可能性がある。望ましい形質をもつ植物においてどの遺伝子が活性であるかを知ることによって、これらの遺伝子のより良い発現を将来の世代に向けた標的とすることができる。問題は、これを実現するには依然として長い時間を要することだ。10年単位の時間である。

現代のプロセスの難しい部分は、干ばつにさらされた状態における生存のような形質は単一の遺伝子によるものではないという問題からきている。それらは、複雑に相互作用する任意の数の遺伝子であり得る。オリンピックの体操選手になるための単一の遺伝子がないように、干ばつに強い米になるための唯一の遺伝子というものはない。そのため、企業がゲノムワイド関連解析と呼ばれる研究を行うと、その形質に寄与する遺伝子の候補が何百も出てきて、生きた植物でこれらのさまざまな組み合わせを苦労してテストしなければならない。しかもそれを工業的な比率と規模で行うには何年もかかる。

試験目的で栽培されている、遺伝子的分化を検出して番号付けされたイネ(画像クレジット:Avalo)

Avaloの共同創業者でCSOのMariano Alvarez(マリアーノ・アルバレス)氏は「遺伝子を見つけて、その遺伝子を使って何かを行う能力は、実際にはかなり制約されています。こうした形質はより複雑なものになるからです」と語る。「酵素の効率を高めようとするのは簡単で、CRISPRを使って編集すれば済みます。ですが、トウモロコシの収量を増やそうとすると、何千、ともすると何百万もの遺伝子がそれに寄与しています。干ばつに強い米を作るという大きな戦略を立てようとするなら(例えばMonsanto)、15年という時間と、2億ドル(約220億円)という金額を検討することになるでしょう【略】それは長期にわたる賭けのような取り組みになります」。

ここにAvaloが足を踏み入れる。同社は、植物のゲノムに対する変化の影響をシミュレートするためのモデルを構築した。同社によるとこのモデルは、15年間のリードタイムを2〜3年に短縮し、コストを同等の比率で削減できるという。

「そのアイデアは、より進化的に認識できる、より現実的なゲノムモデルを作り出すことでした」とコリンズ氏は語る。つまり、ゲノムと遺伝子をシステムの上でモデル化し、そのシステムに生物学と進化に由来するコンテキストが組み込まれていくというものだ。より優れたモデルでは、ある形質に関連する遺伝子についての偽陽性がはるかに少なくなる。ノイズ、無関係な遺伝子、マイナーな寄与因子などの除外をより多く行うからである。

同氏はある企業が取り組んでいる耐寒性を持つイネの例を挙げた。ゲノムワイド関連解析では、566個の「興味深い遺伝子」が発見され、各調査に要する費用は、必要な時間、スタッフ、材料を考慮するとそれぞれ4万ドル(約440万円)前後になることが示された。つまり、この形質を調査すると、数年間で2000万ドル(約22億円)もの資金が必要になる可能性があり、このような操作を試みることができる当事者と、時間と資金を投資する対象作物の両方が必然的に制限されることになる。投資収益率を期待するのであれば、アウトライヤー市場向けのニッチ作物の改良にその種の資金をつぎ込むことはできないだろう。

「私たちはそのプロセスを民主化するためにここにいます」とコリンズ氏はいう。同じ耐寒性のイネに関するデータ群の中で「興味深い32の遺伝子を発見しました。私たちのシミュレーションとレトロスペクティブ研究に基づき、これらすべてが真の因果関係を持つことがわかっています。そして、それらを検証するために、3カ月の期間で3つ、10のノックアウトを育てることができました」。

それぞれのグラフの点は、検査しなければならない遺伝子の信頼水準を表している。Avaloモデルはデータを整理し、最も有望なものだけを選択する(画像クレジット:Avalo)

ここで専門用語を少し明らかにしてみよう。Avaloのシステムは当初から、個別に調査しなければならなかったであろう遺伝子の90%以上を除外した。この32個の遺伝子は単に関連しているだけでなく、因果関係があり、形質に実際に影響を及ぼしているという確信が高かった。そしてこれは、特定の遺伝子をブロックし、その影響を研究する「ノックアウト」研究の簡潔版により立証されたものである。Avaloはその方法を「情報のない摂動による遺伝子発見」と称している。

ノイズからシグナルを引き出すという点では、機械学習アルゴリズムが本来持っている機能もその一部だが、コリンズ氏によると、同社は新しいアプローチでこの問題に取り組む必要があり、モデルが自ら構造や関係を学習できるようにする必要があったという。また、モデルが説明可能であること、つまり、その結果がブラックボックスの外に表示されるのではなく、何らかの理由で正当化されることも重要であった。

後者に関しては難しい問題だが、彼らは繰り返しシミュレーションを行い、興味深い遺伝子をダミーの遺伝子に相当するものと系統的に入れ替えることでそれを達成した。ダミーの遺伝子は形質を破壊することなく、各遺伝子が何に寄与しているかをモデルが学習するのに役立つ。

Avaloの共同創業者Mariano Alvarez(マリアーノ・アルバレス)氏(左)とBrendan Collins氏(ブレンダン・コリンズ)氏、温室のそばで撮影(画像クレジット:Avalo)

「当社の技術を使えば、興味深い形質のための最小限の予測育種セットを考案することができます。完全な遺伝子型をin silico(すなわちシミュレーション)で設計し、集中的な育種を行い、その遺伝子型を観察することができます」とコリンズ氏は語る。そしてコストが十分低いことから、小規模な作物やあまり人気のない作物、あるいは可能性に欠ける形質でも導入することができる。気候変動は予測がつかないので、今から20年後に耐暑性小麦と耐寒性小麦のどちらが優れているかは誰にもわからない。

「こうした活動にかかる資本コストを低減することで、気候耐性のある形質に取り組むことが経済的に実現可能な空間を解放するような役割を私たちは果たしています」とアルバレス氏は語っている。

Avaloはいくつかの大学と提携し、他の大学では決して日の目を見ることのなかった、回復力があり持続可能な植物の創造を加速させようとしている。これらの研究グループは大量のデータを保有しているが、十分なリソースを持ち合わせていないため、企業の能力を実証する優れた候補者にすぎない。

大学とのパートナーシップにより、大規模に利用する前にある程度の作業が必要な「十分に栽培品種化されていない」植物にもこのシステムを適用していくことが確立される。例えば、自然界に存在する大型の穀物に干ばつ耐性を付与しようとするのではなく、自然界に存在する干ばつ耐性を持つ野生の穀物を大型化する方が得策かもしれないが、それを解明するために2000万ドルを投じようとする者はいなかった。

商業面では、データ処理サービスを最初に提供することを計画している。つまり同社は、農業や製薬などの分野で実績はあるが速度に欠けている企業に、コストと時間の大幅な節約を提供する多くのスタートアップの1つとなる。うまくいけば、Avaloはこの種の植物を農業に持ち込み、種子ども給者にもなることができるだろう。

同社は数週間前にIndieBioのアクセラレーターを卒業したばかりで、すでに300万ドル(約3億3000万円)のシード資金を確保して大規模に活動を続けている。このラウンドはBetter VenturesとGiant Venturesが共同で主導し、At One Ventures、Climate Capital、David Rowan(デイビット・ローワン)氏、そしてもちろんIndieBioの親会社であるSOSVも参加した。

「ブレンダン(・コリンズ氏)は私に、スタートアップを始めることは教員の仕事に応募するよりもずっと楽しくておもしろいことだと確信させました」とアルバレス氏。「そして、彼は完全に正しかったのです」。

画像クレジット:Avalo

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)