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人の臓器を単三電池ほどのサイズで再現した「生体機能チップ」開発のEmulateが約90.2億円調達

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「生体機能チップ」テクノロジーの開発に力を入れるバイオテクノロジー企業、Emulate Inc.(エミュレート)は、2021年9月上旬、8200万ドル(約90億2000万円)のシリーズEラウンドを終了した。このラウンドの目的は、薬品会社のニーズを満たし、生体機能チップのアイデアを研究室で活かすための臓器モデルの開発「ロードマップ」に対して、大規模な投資計画を立てることだ。

生体機能チップは、その名が示す通り、人間の臓器(または臓器系)を縮小し、単三電池ほどのサイズの小さなハードウェアに再現したものだ。「チップ」と呼ばれるそのハードウェアには、ヒト細胞(脳細胞、腎臓、肺、腸など)を培養できるチャンバーが組み込まれている。このチップを操作すると、呼吸や臓器の血流など、人体で起こり得る機械的な力をシミュレートすることができる。

チップは最終的には人体の状態を模倣する予定であり、製薬会社はそのチップを使用して、新しい候補薬剤が投与されたときに何が起こるかを正確に予測できるようになるはずだ。このチップは、臨床前試験プロセスにおいて重要な意味を持つ実験の新たなモデルになる。現在この分野の研究は、細胞または動物を使った従来のモデルが主流になっているが、Emulateなどの企業がこのパラダイムを変えようとしている。

Emulateは2013年に創設され、これまでに約2億5500万ドル(約280億5000万円)の資金を調達している。Northpond Ventures(ノースポンド・ベンチャーズ)とPerceptive Advisors(パースペクティブ・アドバイザー)が主導する今回のシリーズEラウンドは、研究開発への投資を強化し、製薬会社との対話を通じて着目してきた生体機能チップアプリケーションを開発するというEmulateの計画の一環である。現在、Emulateは、Roche(ロシュ)、Genentech(ジェネンテック)、Johnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、Gilead Sciences(ギリアド・サイエンシズ)を含む21の主要な製薬会社を顧客に持っている。

「当社は、製薬会社がどの分野(特定の種類の分子、バイオ医薬品など)に研究開発費を費やしているかを調査し、その分野に合わせたロードマップ、一連のアプリケーションを開発しました」と、EmulateのCEO、Jim Corbett(ジム・コルベット)氏はテッククランチに話した。

Emulateは、2021年1月にこのロードマップに含まれるいくつかの新しい製品とサービスを発表した。例えば中枢神経系障害(アルツハイマー病など)の研究を支援するために設計されたEmulate脳チップ、(肺チップ、肝臓チップ、腸チップを使用して)肺、肝臓、腸全体で免疫システムがどのように相互作用しているかを調査する免疫細胞動員アプリケーション、肝臓チップに組み込まれたマイクロバイオームモデルなどだ。

コルベット氏によると、同社は、今後2年間で14のアプリケーションを展開し、そのうち7つは2022年に展開する予定だ。

生体機能チップは、およそ10年前から存在する。NIHは、宇宙飛行の影響を研究するために、生体機能チップを宇宙に打ち上げたことがある。また2010年から細胞組織チップのテストと検証プログラムを開発している。

バイオエンジニアリングの雑誌に2020年に掲載された解説論文によると、生体機能チップ業界の最近の評価額は約2100万ドル(約23億1000万円)だったが、2025年までには約2億2000万ドル(約242億円)まで上昇する可能性ある。

評価額の上昇は、生体機能チップが、前臨床側の医薬検査プロセスを変えられるかどうかに大きく左右される。また生体機能チップ自体は、そのプラットフォームから収集されたデータをFDAがどう評価するかで大きく状況が変わる。

生体機能チップのテクノロジー自体は(治療薬や装置ではないので)FDAの承認はいらないが、製薬会社はほぼ確実に、FDAが生体機能チップを使った実験を受け入れているという保証を求めるだろう。

コルベット氏によると、FDAは、これらのプラットフォームで収集されたデータを「非常に前向きに受け入れている」ようだ。

同社が過去にFDAと緊密に協力していた証拠がある。たとえば2020年、EmulateはFDAと共同研究開発契約(CRADA)を結んだ。CRADAでは、連邦政府以外の協力者がFDAの研究所で行われる研究プロジェクトに資金と設備を提供することを許可している。FDAは資金を提供しないが、このようなプロジェクトで開発された知的財産をライセンス供与することを協力者に認めている。

このプロジェクトを通して、Emulateの肺チップは新型コロナウイルスの研究に使用された。脳、肝臓、腸の各チップも、個々の研究プロジェクトに利用された。

FDAの協力はさておき、臓器チップに取り組んでいる企業にとっては都合の良い規制に関する動きがあった。たとえば4月に議会に提出された2021年のFDA近代化法では、FDAが薬物の安全性と有効性を評価するために「動物試験に代わる試験方法」を使用することを認めている。この法案では、非臨床試験 / 研究の定義に生体機能チップを明記している。

「近代化法が通過すれば、はっきりします」とコルベット氏。

生体機能チップの研究分野はまだ比較的新しい。最終的に多くの薬剤候補の実現に役立つかどうかは、まだ理論の段階である。しかし新たな資金調達ラウンドと規制に関する環境の変化があれば、近い将来、確かな答えが得られるかもしれない。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)