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Tencentのチップ開発進出はまったく驚くべきことではない

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Tencentは今週初めて、チップ開発の進捗を公開し、その結果、同社の株価はわずかながら上昇している。ゲームやソーシャルネットワークで稼ぐ大企業であるTencentの主要分野からシリコンは遠い存在のように思えるが、観測筋によると、Tencentのこの動きは、半導体を自主開発するという中国の長期的目標に同社も一枚噛んでいることを示すものだ。しかもちょうど現在、ゲーム部門は規制当局から一連の攻撃を受けている。AlibabaやBaidu、Huaweiなどのテクノロジー大手も北京のシリコン推進に自社製チップで応えている。

その一方で、Tencentのようにデータの処理量が極めて多い企業は、もっと早く半導体の自社生産に取り組んでいてもおかしくなかった。

米国時間11月5日にTencentが発表した3つのチップはすべて自社製で、1つはAIの推論用、1つはビデオのコード変換用、そしてもう1つはネットワークインターフェース用だ。

巨大インターネット企業が自らの事業を強化するために専用のハードウェアを開発し始める例は、数え切れないほどある。2018年に、FacebookはAIチップの設計者を雇って、その途方もない量のユーザーデータを処理し、偽情報の問題を解決しようとしていた。

Tencentも、稼ぎ頭のアプリであるWeChatメッセンジャーの毎月のユーザー数は10億を超えており、処理すべきデジタルの足跡は大量だ。

しかしWeChatの管理者であるAllen Zhang(アレン・チャン)氏は、個人データを企業の私的目標に資することに消極的なことで有名だ。これまで、WeChatのユーザーフィードはただ時間順に並んでいるだけで、たまに自社広告が出るぐらいのものだ。

2020年のWeChatの年次大会でチャン氏は「ユーザーのチャットの履歴を分析すれば、巨額の広告収入が得られるだろう。しかし私たちはそれを行わず、WeChatはユーザーのプライバシーを非常に重視している」と述べている。彼が望んでいるのはWeChatが便利な使い捨てのツールであることであり、ユーザーの時間をアルゴリズムが生成する中毒性のあるリコメンデーション漬けにすることではない。

しかしチャン氏は、譲歩したようにも見える。最近のWeChatには、TikTokの最小限の機能を搭載したような短編動画もある。TikTokと同じくWeChatのビデオ機能も、ユーザーの好みを予測してコンテンツを提供している。

Tencentには、機械学習の高性能化が有利に働き、収益が増えそうな事業もたくさんある。たとえばニュースアグリゲーターのTencent Newsや、Netflixに似たTencent Videoなどだ。中国は検閲が厳しいため、コンテンツプロバイダーは、引っかかりそうなテキストやオーディオやビデオを事前に排除するためにより強力なコンピューターの力を必要としているだろう。

Tencentの上級副社長であるDowson Tong(ダウソン・トン)氏によると、同社のAI推論チップは主に、画像と動画の処理、自然言語処理、検索などに使われる。動画のコード変換用チップは、その名のとおりの仕事をしてTencentの膨大な量の動画処理に滑らかさと低レイテンシーを確保する。そしてスマートネットワークのインターフェースカード(SmartNIC)は、CPUサーバーのオフロードに利用される。

Tencentは、チップの開発だけに取り組んでいるのではない。トン氏によると、同社は今後、国内と海外のチップ企業が「深い戦略的なコラボレーション」を維持できるようなエコシステムを作っていく。たとえばTencentは4回の投資ラウンドで上海のEnflameを支援したが、同社はAIの訓練用チップを開発しており、Tencentもすでにそれを自らの事業に利用している

画像クレジット: Visual China Group / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)