VC / エンジェル
AARP Innovation Labs(組織)
アクセラレータープログラム(用語)
健康 / 健康管理 / ヘルスケア(用語)
高齢者 / 高齢者施設(用語)

約950兆円の50歳以上の市場をターゲットにするコミュニティをAARPが設立

次の記事

人工衛星で地表温度データを収集・解析するHydrosatがさらに11.4億円の資金調達

高齢者を対象としたテクノロジーは、ヘルスケア、フィンテック、エンターテインメントなどの分野で、目新しいものではないが、スタートアップ企業、投資家、国際的な産業界リーダーからなる新しいコミュニティが、この年間8兆3000億ドル(約950兆円)と言われる市場に注目している。

AARPが起ち上げたAgeTech Collaborative(エイジテック・コラボレーティブ)は、T. Rowe Price(ティー・ロウ・プライス)、Walgreens(ウォルグリーン)、Cooley(クーリー)、QED Investors(QEDインベスターズ)などの組織を集め、スタートアップ企業の製品やツールをスケールアップして、それらをAARPの3800万人の会員の目に触れるようにしようという取り組みだ。

このコラボレーションには、Voiceitt(ボイスイット)、Rendever(レンデバー)、Trust & Will(トラスト&ウィル)、Mighty Health(マイティ・ヘルス)など、50社のスタートアップ企業が参加している。これらの企業は、製品を試用するための6つのテストベッドを利用できる他、10を超える投資家やベンチャーキャピタリスト、50歳以上のコミュニティに関わる大手企業やサービスプロバイダーとアイデアを交換することができる。

AARPでイノベーション・製品開発担当シニアバイスプレジデントを務めるAndy Miller(アンディ・ミラー)氏がTechCrunchに語った話によると、50歳以上の人々の消費力はすでに8兆3000億ドルに達しているが、30年後には3倍になると予想されるという。

ミラー氏は、自身が率いるアクセラレーターのAARP Innovation Labs(AARPイノベーション・ラボ)には、30社ほどの企業が集まったものの、AARPの会員にはアクセスを提供できなかったことが、このアイデアの発端になったと語っている。そこでAARPは、スタートアップ企業に規模拡大の道筋をつける方法を考え始めた。その中には、スタートアップ企業が試験的に製品を試す機会を見つけたり、製品を試してくれる企業と提携できるようにすることが含まれる。

また、AARPには、50歳以上の市場をターゲットにしたスタートアップ企業や他のアクセラレータプログラムについて、AARPの見解を聞きたいというベンチャーキャピタル企業からの問い合わせも受けているという。

「私たちは、このようなエコシステムを構築する必要性を強く感じていました」と、ミラー氏はいう。「この年代層では毎日1万人が65歳になり、ミレニアル世代の最高齢者はあと10年で50歳になります。経済的な誘引もありますが、しかし我々の取り組みによって人々がより幸せな年齢の重ね方をできるようにすることで、社会の利益にもなります。私たちは、AARPという究極のコネクターの力を、VCや企業、スタートアップに活用することができます。老いに打ち勝つことができるものがあるとすれば、それはAARPであるはずです。私たちは、すべての人に成功して欲しいと思っています」。

Aging 2.0をはじめとする他の組織もまた、エイジテック分野に参入し、次の最も優れたイノベーションを模索している。一方、スタートアップ企業はさまざまな製品やサービスのために資金調達を続けている。例えば、高齢者向けフィットネスプログラムをてがけるBold(ボールド)は、2021年初めに700万ドル(約8億円)を調達している。

新型コロナウイルスが世界的に大流行する以前には、高齢者向けのテクノロジーは「あればいいもの」だった。しかし今では「最高の人生を送るためには絶対的な必要なもの」となっていると、ミラー氏は付け加えた。QRコードをスキャンしてレストランのメニューを注文することから、医師との遠隔医療の予約まで、高齢者にとってテクノロジーに慣れ親しむことが必要になっている。

これら2つの分野に加えて、Voiceitt(ボイスイット)が取り組んでいるような、うなり声や音を認識して照明を点灯させる技術などの音声認識分野や、世代を超えたファイナンシャルプランニングなどのフィンテック(金融テクノロジー)分野でもイノベーションが起こると、ミラー氏は考えている。

フィンテックは、QED InvestorsのマネージングパートナーであるNigel Morris(ナイジェル・モリス)氏が注目している分野の1つでもある。

退職後の選択肢を理解し、子どもに貯金を渡すかどうかを考えたいというニーズや、60歳で退職したら海辺に隠居するのではなく、むしろギグ・エコノミーを活用したいというニーズもあると、モリス氏はいう。

QEDは、贈与管理のためのソフトウェアであるFreewill(フリーウィル)や、介護者の財務管理を支援するTrue Link(トゥルー・リンク)など、4社のエイジテック企業に投資している。

「いくつもの企業がこの問題を考えており、それは時宜にかなっています」と、モリス氏は続けた。「この層は伝統的に格好良いものとは見做されておらず、多くの投資家がこの層を理解していないため、これまで見過ごされてきました。そこにチャンスはたくさんあり、AARPがこのような活動を行うのはすばらしいことです。その創設メンバーになれることを、私たちは大変誇りに思います」。

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)