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男性のポルノ断ちもサポート、あらゆるデジタル依存症を克服するツールを英Remojoが開発

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男性のセクシャルヘルスをテーマにしたスタートアップが数年前から活発な動きを見せている。初期のテックビジネスには、勃起不全などの健康問題を治療するための医薬品への(より簡単な)アクセスを提供することを目的とするものや(例えばRoman)、抜け毛を減らしたり性欲を高めたりすることを謳ったホルモン検査やオーダーメイドのビタミン剤を提供するものもあった(Manualなど)。時間の経過とともにより広範な遠隔医療が提供されるようになり(Ro)、そして最近では、男性のメンタルヘルスにも関心が向けられるようになった。

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この展開を長い間待ち望んでいた人も少なくないのではないだろうか。

ここ英国は今、起業活動におけるちょっとしたホットスポットとなっているようだ。例えば9月の記事では英国を拠点とするMojoのシードラウンドを紹介した。同社は男性の性的ウェルビーイングのためのサブスクリプションサービスを提供しており、勃起不全の解決策として錠剤ではなくセラピーを提案している。

また、男性専用ではないが、英国のPaired(ペアード)はアプリを通したカップルセラピーを提供している。

さて、今回はMojoと同じ年(2019年)に設立され、男性の性的幸福とセルフケアに対するホリスティックなアプローチを提供している英国拠点のサブスクリプションサービスをご紹介したい。似たような名前が付けられたRemojoは、性の健康に関する悩みを抱える男性をサポートするための技術ツールやアプリ内プログラムを提供しているが、まず同社が最初に着目したのは「ポルノの放棄」である。

Remojoのウェブサイトを見てみると、ポルノをやめることで時間の節約や注意力の向上を期待できるだけでなく、個人的な人間関係が改善され、さらには勃起不全などの健康問題が解決する可能性があるなどさまざまなメリットが説明されている。同社には急成長中の男性のセクシャル・ウェルビーイング分野と一致するところがかなりあるようだ。

価格の違い(RemojoのサブスクリプションプランはMojoよりも安い)を除けば、まず最初の違いはどう男性に関心を持たせるかというところである。

勃起不全に悩む男性よりもポルノを消費する男性の方が多いのは当然だろう。しかし、Remojoのターゲットは、ポルノを見ていて、かつポルノをやめたいと思っている男性だ。しかし単独創業者であるJack Jenkins(ジャック・ジェンキンス)氏は、このサブスクリプションサービスがポルノ依存症男性のためだけのものではないと強調している。

むしろ同氏によると、単純な自己啓発を目的とする人(自分の内側をよりコントロールできるようになりたいと感じている人)から、ポルノ消費の習慣が日々の生活(や人間関係)の妨げになっていると感じている人の他、宗教的信念を持っていて、たとえめったにポルノを使用しないとしてもポルノを使用することに恥じらいを感じており、求められる精神的基準に沿って生活できるようにするための助けを求めている人まで、さまざまな理由でポルノ消費をやめたいと思っている人に対応できるよう設計されているという。

ジェンキンス氏によると、Remojoの主要ユーザーには、キリスト教徒、イスラム教徒、ヒンズー教徒がおり、宗教的理想を実現するための支援を求めている人々が多い。彼らが置かれている環境では通常話すことがタブーとなっている問題について取り組むため、偏見のないサポートコミュニティを求めている場合もあるという。

Remojoによると、同社のサブスクリプションプログラム(1カ月4.99ドル、約580円。3カ月間または1年間のプランに申し込むとそれ以下になる)には毎月約5万人が登録しており、世界中(少なくともインターネットへのアクセスが容易な場所)からユーザーが集まっているというから、ポルノの消費が非常に普遍的な問題であるということがよくわかる。

現在、Remojoにとって最大の市場は米国、英国、ブラジル、インド。アプリ内のコンテンツは英語のため、英語圏の他の市場でも成長しているとジェンキンス氏は説明する。同社の典型的なユーザーは16~35歳の男性で「いつでもポルノにアクセスできる環境で育った」デジタルネイティブだといえる。

このような支持を受け、当然のことながら投資家も放ってはおかない。

ジェンキンス氏によると、同社は過去12カ月間に160万ポンド(約2億5000万円)のプレシード資金を、元Techstars Berlin(テックスターズ・ベルリン)のマネージングディレクターでAngel Invest(エンジェル・インべスト)CEOのJens Lapinski(ジェンズ・ラピンスキ)氏、同じくTechstars BerlinおよびAngel InvestのJag Singh(ジャグ・シン)氏をはじめとする多数の事業家エンジェルの他、銀行・金融業界のエンジェルや(匿名の)創業者などから調達したという。

ジェンキンス氏によると、同社は現在シリーズAの調達を進めており、500万ポンド(約7億7000万円)から600万ポンド(約9億2000万円)を目標に「1月までに」ラウンドを終える予定だという(おそらくシードをスキップして、Aに直行するだろうと同氏は話している)。

Remojoのウェブサイトには、ポルノをやめるための「90 day reboot」というものがあるが、これは同社で最も人気のある契約プランだという。

同社の技術が本当に有効ならば、3カ月ごとにユーザーが大きく入れ替わることになるだろう。しかしオンラインポルノには粘着性があり、簡単にアクセスできるため、再発の危険性が高く、ブロッカーツールが役立つ可能性が高いとジェンキンス氏は主張する。そのため男性にポルノをやめさせるというミッションが成功することによっておき得る、収入の激減を心配することはなさそうだ。

同社はより広範で継続的な、実用性と魅力を兼ね備えたコースもアプリ内で提供しており、ポルノの消費に関連している(あるいは悪影響を受けている)可能性のある男性の性的健康と幸福におけるさまざまな側面をサポートしている(ただし、やめたら改善が続くとは限らない)。

当初、自ら資金を調達して事業を立ち上げたジェンキンス氏。創成期にはユーザーがスマートフォン上でコンテンツをカスタムブロックして、ポルノソースへのアクセスを遮断できるMVPを発表した。

現在同ソフトウェアは、Android、iOS、Windows、macOSに対応しており、クロスデバイスで利用が可能だ。オンラインポルノへのアクセスに文字通りバリアを設ける単純なアダルトコンテンツブロッカーだけでなく、前述の行動変容コース、CBTテクニック、幅広いサポートコミュニティなど多くの機能が盛り込まれている。

今後はAIを用いてポルノコンテンツの識別を行い、ソフトウェアのブロック/フィルタリング機能を強化しようとジェンキンス氏は計画しており、コンピュータービジョンとオーディオを使用してポルノ視聴を進行中に検知し、ソフトウェアがリアルタイムに介入できるようなモデルの開発に取り組んでいる。

現在は、カスタムメイドのブロック機能とサポートリソースがミックスされたアプリになっている。

「いくつかの要素を組み合わせたハイブリッドになっています。習慣形成や習慣破壊に関する研究を行い、その分野で得られた知見や原理を利用しています。アプリ内コンテンツディレクターであるNoah Church(ノア・チャーチ)は、ポルノ依存症から抜け出すためのコーチングを7年間にわたって行ってきました。彼はYouTubeチャンネルを持っており、長年そこで講座やコーチングを行っています」とジェンキンス氏はTechCrunchに語っている。

「弊社のアプリの基礎構造の1つは『選択モデル』です。これは、英国のポルノ・セックス依存症研究の第1人者であるPaula Hall(ポーラ・ホール)博士が開発した回復モデルです」。

Remojoはプログラムから得られるユーザーの実用的な洞察、他のユーザーによる匿名のサポートコミュニティへのアクセス、ユーザーが進展を確認したり、コミットメントやアカウンタビリティを維持したりするためのツール(アカウンタビリティ・パートナーやインストールPINプロテクションなど)も行動変容のミックスに組み込んでいる。

ユーザーを完璧に「Reboot(再起動)」させてしまうことからこのプログラムは開始する。つまりポルノの消費を持続的に控える期間である(ここでRemojoのブロックツールとアカウンタビリティー機能が重要な役割を果たす)。マインドフルネス、運動、(ポルノとは無縁の)趣味への参加など、ポルノを放棄したことで空いた穴を埋めるための、代替習慣を身につけるための時間を確保させることがここでの狙いである。

ジェンキンス氏によると、マインドセットや思考パターンを変えること、そして男性の自己啓発が主な目的であるため、コースの内容には、習慣の変更、依存症の回復、性機能障害の克服(Mojoとの重複)などの関連分野が含まれているという。

今後は、デートに関してやパートナーとの関係・性生活の改善など、より幅広い分野をカバーするコースの他、特定の宗教的信条に合わせたアドバイスを提供するコースなども予定している。

「また、より困難な状況にある人には、心の穴を埋めるためにポルノのようなものを必要としないよう、より充実した生活を送れるようにするための支援をしています」。

ポルノ利用者の中には、利用に関連するより深い心理的問題を抱えている人もいるかもしれないが(幼少期の虐待など)、ポルノの消費自体には「便利な存在」だということ以上の深い意味はないのではないかとジェンキンス氏は主張している。つまり、消費を心理学的に分析することは必ずしも必要ではないという考えである。

そのため同アプリは人を判断することを避け、男性が自分の時間と注意力をコントロールできるようにサポートすることに重点を置いている。そしてそのついでに、注意を散漫させるポルノ業界を批判している。

「ポルノの使用は、必ずしも深い心理的問題によって引き起こされるものではありません。ただ非常に刺激的で、非常に強迫的な物質であり、人々の基本的な進化の欲求を利用して乗っ取ってしまうものなのです。そのため人々はただそこにあるから、そしてとても魅力的だからという理由で、純粋にポルノを見てしまうのです」と同氏は話す。

「これは世界中で共通した問題です。世界中の35歳以下の男性なら、宗教への信仰深さを問わずほとんどの人が直面しています。非常に大きな問題のため、すべてを一括りにすることはできません」と、オンラインポルノの魔力について説明する。「1日に3時間から7時間も見てしまうような深刻な依存症の人もいれば、イスラム教徒で月に1度しか見ないにもかかわらず、イスラム教では許容されていないため彼にとっては大問題です。それが自尊心に影響を与え、神との関係を絶ってしまうようなことさえあります」。

「非常に広い範囲にわたった問題であるため一般化するのはとても困難です。ユーザーの人生がいかに変化したかについて、さまざまな話やコメント、評価を聞くことが私やチームにとっての最大の喜びです」。

より広い観点から見てみると、オンラインでのポルノ視聴は、英国政府も10年以上前から関心を寄せている問題である。ネット上の不適切なコンテンツに簡単にアクセスできてしまうことで、子どもたちに悪影響が及ぶのではないかという懸念から、閣僚たちは現在大規模なオンライン安全法を施行している。

関連記事:英国が子どものためのオンライン安全法案の草案を発表

同様に、幼い頃から無限のポルノにさらされている男性は、後にさまざまな性的ウェルビーイングの問題を抱えることになると同社は考えている(月に5万人の男性がユーザーになるというのだから、あながち間違いではないのだろう)。

英国政府が以前、アダルトサイトへのアクセスに年齢認証を義務付けようとしたことがあったのだが、セキュリティやプライバシーへの懸念、年齢チェックを課したり規制したりすることの実現性をめぐる反発を受け、2019年に挫折した。

自分専用のポルノブロッカーとポルノ断ちのサポートコミュニティ(有料)によって男性が自らポルノをやめることができれば、話はずっと簡単だ。

ジェンキンス氏は自身がポルノをやめようと決心した際、アプリを使った支援ツールを思いついた。特にポルノへの依存があったわけではないが「より良い生活と自身を生きるための、より意識的な選択」として決意したのである。

辞めるためのサポートを探していた際、あるサブレディットで100万人以上のユーザーが同じようなサポートを求めていたことを知り、同氏はそこからこの問題の大きさとビジネスチャンスの可能性を感じ始めた。

「ポルノを完全に自分の生活から遮断するため、スマホやパソコンのコンテンツをブロックしたり、フィルタリングしたりできるガードレールのようなものを探したのですが、あまりいいものがありませんでした」と同氏は振り返る。「私は起業家精神があるため、この問題をもっと掘り下げようと思ったのです。同じようなことをしたいと思っている人や、このように感じている人は私だけではないはずだと思い、Reddit(レディット)でポルノ断ちやポルノ中毒について、あるいはポルノに関する問題や生活への影響について積極的に話している人たちにDMで連絡を取り始めました」。

「彼らにインタビューを始めたところ、Redditでどれだけ多くの人がこの話をしているかに驚かされました。約130万人もの人々が、ポルノをやめることに特化したサブレディットに参加しているのです。彼らはとても熱心に私に話をしてくれましたし、彼らがどれほど強く解決策を求めているのかを知りました」。

「最初のユーザーディスカバリーを行った後、すぐに(2019年12月に)作業を開始しました。私がこれまでに持っていたどんなに良いアイデアでも、これほどのレベルの同意を得られたことはありませんでした」。

「最初はブロッキングが目標でしたが、次第に人々が直面している問題を理解するようになりました。実際に人々の行動を変える手助けをするにはどうしたらいいのか、また習慣や中毒を断ち切るには、行動や考え方を変えるべきなのではないかということが理解できるようになりました。つまりブロッキングだけでは不十分なのです」。

勃起不全の治療をきっかけに、男性に対してより幅広い治療(ポルノ依存症のサポートを含む)を提供したいと考えているMojoと同様に、Remojoもまた、そのツールをより広範囲へと広げたいと考えている。ポルノ用に開発しているアプリベースのフレームワークを、オンラインギャンブルやソーシャルメディア、コンピュータゲームの依存症など「誰も本気で取り組んでいない、現代的な行動的デジタル依存症や強迫観念」にも適用できるようにしたいとジェンキンス氏は意気込んでいる。

「弊社のフレームワークを使って、ギャンブルや衝動的なゲームプレイをやめたり、ソーシャルメディアを減らしたりするための支援をしていきたいと思っています。これらは別々のブランドになりますが、同じ技術、同じフレームワークを使って人々をより良い習慣に導いたり、完全にそれらを断ったりすることができるでしょう。枠組みはまったく変えずアプリ内のコースを変えるだけです。アプリ内のコースを変更するだけで、その他のシステムに関しては、習慣や行動に変化をもたらしたり、デジタル依存症を克服したりするために何が有効かという点ではまったく同じです」。

つまりひょっとすると、Remojoはそのうち女性をターゲットとしたプロダクトを作る可能性もあるということだ。

(それにしても「ポルノをやめる」と「Facebookをやめる」が同列に語られるというのは、ソーシャルメディアに対する考え方がいかにネガティブなものになっているのかを物語っている)

同社のもう1つの開発計画には、独自のカスタムOSの開発がある。本質的にミニマルなOSで、自分の注意を引こうとするデジタル界のあれこれを、ユーザー自身がコントロールできるようにするためのものである。

「アンドロイドのスマホやデスクトップ機器向けにカスタムOSを構築したい」と語る同氏は、近日中に予定されているシリーズAの資金の一部を使ってその作業を開始し、最終的には「デジタルミニマリスト向けに、デジタルウェルネスコントロールをすべてOSに組み込んだ携帯電話を発売する」ことを目標としているという。しかしそれはまだ先の話になりそうだ。

シリーズAにより資金が潤沢になると予想される今後1年間の計画として、メッセージ性を高めていくことも重要だ。

ポルノ消費に関するより多くの人々の考え方を変えるために「世界的な会話を始めていきたい」とジェンキンス氏はいう。ポルノをやめるという考えが、お酒を飲まないとかタバコを吸わないという考え方と同じように「ありきたり」でごく普通なことになるように働きかけていきたいと同氏は考えている。

「まずシリーズAで実現したいのは、このテーマに対するタブーをなくすことです。お酒を飲まない、タバコを吸わない、肉を食べない、といったことと同じように、普通に広く受け入れられるようにしたいと考えています。このライフスタイルの選択を、メインストリームの話題や選択肢として受け入れられるようにするのです」。

画像クレジット:Remojo

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)