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グーグルのSonosへの敗訴で大手テック企業による知的財産権侵害問題が改めて明らかに

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米国際貿易委員会(US International Trade Commission)は米国時間1月6日に、Googleがワイヤレススピーカーの技術でSonosが特許を持つイノベーションを侵害したと判決した。それは、知的財産権をめぐる複雑な抗争への、わかりにくい判決と思われるかもしれないが、それは米国のイノベーション経済と経済の国際的競争力を脅かしている問題を、改めて確認している。

その問題とは、知的財産権の盗用だ。

数年前にGoogleのような大手テクノロジー企業は、小さな企業の知財を買ったりライセンスするよりも、それらを盗んだ方が利益が大きいと判断した。GoogleやApple、Samsungなどはみな大金持ちなであり、法務の費用や、万一窃取と認められた場合の賠償金など気にしない。一例としてGoogleは、1420億ドル(約16兆1514億円)のキャッシュを有している。これは、多くの企業の1年の利益をはるかに上回っている。

大手テック企業は、こうして欲しいものを手に入れる。そして次は焦土作戦で、苦情を訴えたIP所有者を打ち負かす。訴訟を何年も長引かせて、正義を求める知的財産所有者に巨額の訴訟費用を課す。知的財産所有者の多くは、訴訟すらできない。それが自分を滅ぼすと知っており、自己の正当な権利を守ろうとする行為、すなわち長引き費用がかさむ訴訟が、自己を破壊すると承知している。

端的にいうと、大手テックは知的財産を盗むことから利益を得る。長年の訴訟で法務費用や賠償などが増えたとしても、それらは得られる利益に比べると微々たる額だ。

しかし、やり返す企業も少しはいるために、この途方もない権利侵害行為の存在が確認されている。GoogleがSonosを侵害した1件は、その明瞭な例の1つだ。

Sonosは、米国におけるサクセスストーリーの典型的な例だ。そしてGoogleによる、その技術に対する海賊行為は悲劇だ。Sonosはワイヤレススピーカーの画期的なイノベーションで特許を取り、2005年に革新的なスタートアップを創業した。Googleとは2013年にライセンス契約を結んだが、Googleはそのとき、同社の音楽サービスGoogle Play MusicをSonosのスピーカーに統合することで合意した。

しかしGoogleは単にこの契約を、Sonosの技術へのアクセスを得るために利用した。すぐに同社はSonosの技術を使って自社のデバイスを作るようになり、それらのスピーカーやオーディオ装置は、市場にあるSonosのスピーカーなどと直接競合するものだった。

Googleは、Sonosの開発費用を負担していない。検索エンジンの事業で大きな利益を得ているのだから、自社の新しい製品やサービスを下支えすることもできただろう。まさにそのとおり、GoogleはSonosの価格を下押しした。それは、特許海賊の常套手段である商業行為だ。

Sonosは最初、Sonosから略取した技術のライセンス料を求めてGoogleと協議した。Googleはその協議を何年も長引かせ、その間にGoogleの利益は膨らみ、Sonosはますます多くのお金を失った。7年後にSonosは、法廷で自己の権利を護る以外の選択肢はない、とい状態に追い詰められた。Sonosは、2020年にGoogleを訴えた。

Sonosは、国際貿易委員会にもGoogleを訴えた。この特別法廷は通常の裁判所よりも迅速に、侵害的な輸入を禁ずることができる。ただし、損害賠償はない。

2021年夏にITCの判事は、Googleが確かにSonosの5つのパテントを侵害したと判決した。先に同委員会は、この決定を再確認した。Googleは今でもSonosの主張を「根拠がない」とし、控訴を続けるつもりだ。

これは大手テック企業が、他人に特許のある技術を不法に利用する顕著な例にすぎない。あまりにも多いから、今では「略奪的侵害(predatory infringement)」と呼ばれている。法学者や政策立案者は「効率的侵害」(efficient infringement)と、皮肉な名前で呼んでいる。わかりやすくいえば、これは「海賊行為(piracy)」だ。

しかし大手テック企業は米国の特許システムに対する攻撃を続けており、海賊行為をさらに支持することを求めている。Googleなどの企業は長年、議会に対するロビー活動に数百万ドル(数億円)を投じて、規制当局に特許を弱体化し、排除させようとしている。つまり特許というシステムを、イノベーターに反するものに改装するつもりだ。たとえば彼らはパテント・トロールという怪物を作り出して、侵害で彼らを訴えようとする特許保有者を中傷している。あたかも、問題は彼ら自身の窃取行為ではなく、彼らと戦おうとする被害者たちのあつかましさだ、と言わんばかりに。

米国のイノベーション経済の中心的な推進者は特許に依存するイノベーターやクリエイターたちだから、ワシントンは彼らを護るために活動する必要がある。議会は、超党派のSTRONGER Patents Act法案を再提議し、成立させるべきだ。この法律は特許のシステムに均衡を回復し、ビッグテックがロビー活動で作り出した、略奪的侵害の戦術的実践の鍵となっている法規や制度をリフォームするだろう。

SonosのGoogleに対する法的勝利は、長年、政策立案者や法律家たちがいってきたことを確認している。すなわち、ビッグテックによる略奪的侵害は21世紀の海賊行為であり、Sonosは多くの被害者の1つにすぎない。ワシントンはこの海賊行為を終わらせる努力をすべきであるし、それができる。

編集部注:本稿の執筆者Adam Mossoff(アダム・モソフ)はGeorge Mason大学の特許法の専門家。STRONGER特許法について議会で証言しており、Hudson Instituteのシニアフェローでもある。

画像クレジット:erhui1979/Getty Images

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(文:Adam Mossoff、翻訳:Hiroshi Iwatani)