しんどい・眠いから、経営状態や資金調達までを共有するatama plusのチーム力

教育・学習を環境を進化させるEdTechスタートアップまとめ

生徒のつまずきをAIが察知して効率的な学習環境を提供するatama plus。前編では代表取締役を務める稲田大輔氏に、同社の事業内容やミッションについて話を聞いた。後編では引き続き稲田氏に、人材採用や社内コミュニケーションといった組織運営について取材。また、同社設立後に大手企業からの転職を決めたエンジニアの塚本純一氏に、転職に至るまでの経緯や社内の雰囲気について教えてもらった。

atama plusのミッション

【連載】教育・学習を環境を進化させるEdTechスタートアップまとめ

稲田氏は、これから求める人材について「スキルフィットとカルチャーフィットの両方が重要」と語る。「現在、リファラルとスカウト/応募半々ぐらいで人材採用を進めています。面接する方には、過去にどのような仕事を経験し、どのような役割を担っていたのかなどをかなり深掘りして聞き出します」とのこと。

「そのうえで、その人が持っているスキルがatama plusにとって必要かどうか、カルチャーがフィットするかどうかを判断します。採用にはかなりの時間をかけます」。「もちろん、atama plusが掲げるミッションをに共感してもらうことが大前提なので、社内の多くのメンバーと会ってもらって適正を見極める」という。

毎週1〜2時間ほどをかけて、付箋を使ってチームとしてのアウトプットをまとめる内の振り返りを行う

atama plusには現在40名超が在籍しているが、現時点では大企業のような細かな人事評価制度は作っていないとのこと。そのぶん、お互いのフィードバックを重視しているそうだ。「チーム内では毎週1〜2時間ほどかけて振り返りの時間を設けます。具体的には、付箋を使って○、△、×に当てはまる出来事や気持ちを記載してもらい、それについて各グループでディスカッションする」とのこと。記載する内容は、進行中のプロジェクトに関連することはもちろん、「しんどい」「眠いねむい」とかでもいいそうだ。「その意見を基に、業務過多になっていないか、仕事の進め方が間違っていないかなどをチーム内で相互確認し、チーム全体としての仕事の進め方を毎週改善するようにしている」と稲田氏。

新しく入ったメンバーにはニックネームが付けられる

一般企業では、チーム内の役割分担や仕事内容は把握できたとしても、リーダー以外はチーム外との交流が薄くなることが多い。会社の規模が大きくなればなるほど、こういった問題は顕著になってくる。atama plusではどうやってチーム間のコミュニケーションを取っているのだろうか。

稲田氏によると「別チームのメンバーとのランチ企画を定期的に実施しています」とのこと。さらに「入社したてのメンバーは、在籍しているほぼすべてのメンバーとランチに行ってもらって、個人間のコミュニケーションも図ってもらいます」とのこと。

さらに特徴的なのは「興味のあるプロジェクトには積極的に首を突っ込んでいい」というルール。「別チームが進めているプロジェクトであっても、そのミーティングに参加してもいいし、プロジェクトを手伝ってもいい」と稲田氏。

さらに驚きなのは、会社経営にかかわるセンシティブな情報までもオープンにしている点。稲田氏によると「atama plusでは財務状況をすべて公表している」とのこと。「あとどれぐらいで会社の資金が枯渇するとか、次の資金調達に向けてどこのVCと交渉中とか。そういった経営に関わる重要な内容を、在籍する正社員のメンバーはもちろん、インターンで働いている学生にも包み隠さず情報を共有している」そうだ。

興味のあるプロジェクトであれば、他チームであっても参加できるルール

一般企業では、立場によって共有されている情報が異なることが多い。その結果、経営陣の方針が理解できない、チーム内の意思の疎通がうまくいかない、危機感や緊張感を共有できないという問題が発生しがちだ。少数精鋭のスタートアップだからこそ実践できる手法かもしれないが、チームを運営する方法としては画期的だと感じた。

当初は転職する気はなかったがミッションに共感して最終的には入社

atama plusの初期メンバーで大手企業から転職してきたエンジニアの塚本純一氏

稲田氏が、大学時代の友人だった中下真氏と川原尊徳氏を誘って3人で2017年に4月に起業したatama plusだが、前述のように現在は40名以上の社員が在籍する会社になった。転職者の1人で初期メンバーでもある塚本氏に話を聞いたところ、「前職のヤフーではSRE(Site Reliability Engineering)関連の業務を担当していました。非常にやりがいがあり転職は特に考えていなかった」とのこと。その塚本氏が転職を決めたのは「2017年の夏頃に開催された外部交流イベントで、atama plusの業務内容やミッションを聞いて興味を持ったことがはじまり」だったそうだ

とはいえ、もちろんすぐに転職とはならず、その後もatama plusへの興味は持ち続けつつも仕事を続けていたという。転機が訪れたのは、前職で担当していたプロジェクトが一段落したとき。「別のプロジェクトを立ち上げるタイミングで、そのまま社内で新しい仕事にもチャレンジできたのですが、やはりatama plusでの仕事に魅力を感じた」と塚本氏。「大手企業から創業間もないスタートアップへの転職ということで当然家族からの反対もありましたが、atama plusがやろうとしていることをていねいに説明したら最終的には理解してもらえました。自分にはこれまでも転職経験があったので、転職自体には家族も慣れていたことも影響しているかもしれません」と話す。夏のイベントでatama plusの存在を知り、結局はその翌年の1月に入社することになった。

塚本氏は普段、室内の人工芝に設置してあるソファなどで仕事をすることが多いとのこと。社内はチームごとにエリアは分かれているが、基本はフリーアドレス

塚本氏が入ったころの社員は10名程度で、そのほとんどがエンジニアだったそうだ。これまでの職場との違いについては塚本氏は「atama plusでは各々が実現したい目標が同じなので仕事を進めやすいです。利用者(生徒)のためにどんどん開発を進められますし、開発のプロセスを考えるられるという面白さがある」とのこと。「少数なので、大手企業で発生しがちな謎のオーバーヘッドがないのもいい」とも。会社の規模拡大によって、エンジニアのグループも1チームから4チームに増えたが、前述のミーティングなどによってコミュニケーションは円滑に進んでいるという。

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