助太刀のビジョンに共感して大手企業や官庁から転身、世界を変えるビジネスを創りたい

建設業界に革命を起こすConTechスタートアップまとめ(3)

写真に向かって左から、助太刀で取締役COOを務める大塚裕太氏、管理グループに所属する藤本剛志氏

2020年の東京五輪や2025年の大阪万博を控え、建設ラッシュに沸く建設業界。しかし、職人の人手不足は深刻で、納期の遅れや着工時期の調整が必要な建設現場も多い。その一因として職人の高齢化、人手不足が挙げられる。裏を返せば、若手の職人の入職が増えていないため、職人人口が減っているのだ。この高齢化と人手不足の問題をさらに掘り下げると、不安定な労働環境や報酬体系などが浮き彫りになってくる。これらが原因で、空前の売り手市場で仕事には困らない状況であっても、建設業界に飛び込む若手がなかなか増えないのだ。

【連載】建設業界に革命を起こすConTechスタートアップまとめ

こういった問題をテクノロジーの力で解決しようとしているのが、前回紹介した2017年3月設立のスタートアップである助太刀だ。同社では、建設現場と建設職人のためのマッチングサービスを提供しており、これまでは各地域の同業者からの斡旋が多数を占めていた現場仕事を、専用のスマホアプリで近隣都市や近隣県まで手軽に探せるようにした。さらに、口座開設不要で作業に対する報酬をすぐに受け取れるペイメント機能「助太刀Pay」、傷害保険が付帯するプリペイドカード「助太刀カード」など、建設職人を支えるさまざまなサービスを展開している。

建設職人の70職種ほどに細分化されているが、派遣が法律で禁じられているため、人を集めるのはいつの時代も悩みの種だったそうだ。実はスマートフォン登場以前のパソコン全盛の時代にも同様のマッチングサービスがあったそうだが、職人のライフスタイルにはマッチせずあまり活用されなかったという。現在の建設職人はスマホ所持率が高いところなどに目を付けて助太刀のサービスが生まれた。現在の助太刀に登録している職人の数は7万人を突破しており、74職種の現場仕事に近隣県から職人が集まる仕組みが出来上がっている。ちなみにサンドウィッチマンを起用したCMを放映したことで、1万人ほどの職人の新規登録があったという。

現在300万人ほどいる建設職人のうち300万人が一人親方、つまり個人事業主。同社では自社のイベントスペースで定期的に説明会を開催して、助太刀アプリの活用方法を建設職人に直接教えている。来場者は20~40代が多いそうだが、60代や70代のベテラン職人も参加しているという。

今回は、助太刀のビジョンに共感して大手企業や官庁から転身した、大塚裕太氏と藤本剛志氏に話を聞いた。

大手金融機関から転身、世界を変えるビジネスを作りたい

同社で取締役COOを務める大塚氏は、大学卒業後にみずほフィナンシャルグループに入社。「金融の知識を広げて経験を積むために入行しました」と大塚氏。しかし、銀行業務に携わっているうちに、「デットファイナンス(借り入れ、融資)ではなく、投資家などから出資を募って最初は時間がかかっても世界を変えるようなビジネスをやりたい」という気持ちが強くなったそうだ。デットファイナンスでは金利が発生するため短期での収益化が必要となるが、投資家からの出資であれば一緒に事業を創っていくこともできる。

そんな想いを抱いていたときにTechCrunchで助太刀の記事を見かけ、当時4名程度の社員しかいなかった同社に興味を持つようになる。建設業界への知識はまったくなかったという大塚氏だが、助太刀のビジョンに強く共感して、2年弱勤めた大手銀行からの転身を決める。

入社後の最初の仕事は、社員数も少なく、当時は最も若い社員だったので、仕事用のイスを組み立てることもあったそうだが、営業をはじめさまざまな業務を引き受けていたそうだ。現在は取締役COOに就任し、事業開発やファイナンスまわりを統括している。

国税局から転職し、バックオフィス全般を統括

一方、同社の管理グループに所属する藤本氏は、今年の5月に転職してまだ2カ月。前職は国税局で税務職員として12年ほど働いていたそうだ。「30代の中盤に差し掛かり、これからの人生について考えるようになったの転職のきっかけです」と藤本氏。「税務職員はそのまま国税局に残るか税理士になるかの道も考えましたが、まずは自分の市場価値を確かめたくてダイレクトリクルーティングのサービスに登録しました」。

税理士は国家試験を受けないと資格を得られないが、税務職員として10~15年間勤務すると税法の試験が免除される。また、23年以上勤務して指定研修を修了すれば会計学を含む全科目が免除される制度がある。このため税務職員として一定期間働いたあとは、税理士として再出発する人も多いのだそうだ。

藤本氏が助太刀の存在を知ったのは昨年から放映されているテレビCM。税務職員時代に建設業の税務調査経験があり、一人親方の存在や仕事の受発注方法など建設業のさまざま側面を把握していたこともあり「CMを見て助太刀のことを詳しく調べたところ、ビジネスモデルに非常に共感できて興味を持った」とのこと。

ダイレクトリクルーティングサービスへはそのあとに登録することになるのだが、登録後にタイミングよく助太刀側からオファーがあり転職を決めたそうだ。個人的には12年間務めた国税局を辞めることにそれほど抵抗がなかったという藤本氏だが、家族や両親からは当初は反対された。国家公務員からスタートアップへの転職ということもあり、家族とも十分話し合い、最終的には自身のキャリアチェンジを応援してもらえたとのこと。転職後は「助太刀はフレックスタイム制度を導入していて、税務職員時代に比べると始業時間も遅いので子供を保育園に送ってから出社できるようになった」と藤本氏。

国税局時代との違いについて尋ねると「やはりスピード感。そして自走しないとついていけないところ」と話す。前職では上司から指示された業務をこなすというケースが多かったそうだが、助太刀では自らが提案して仕事をどんどん進めて行かないと、そもそも仕事にならないという緊張感もあるそうだ。藤本氏は現在バックオフィス全般を担当。前任者から引き継いだ業務もあるが多くの業務はこれから自分が中心となって作り上げていく必要があるという。

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