協業と革新を紡いで伝統を生み出してきたBMW、“次の100年”を見据えた未来のクルマづくり

“駆けぬける歓び”というキーワードと共に世界のモビリティを牽引してきたBMWが、スタートアップ企業とのオープンイノベーションの推進や、バーチャルリアリティをはじめとする自動車開発への先端技術の採用など、革新的なクルマづくりを推進している。この記事では、BMWのクルマづくりへのこだわりを紐解きながら、100年余りの伝統と先端技術を融合した“未来のモビリティ”をどのように捉えているのかを紹介しよう。

●BMWの新型車が生み出すのは、モビリティの未来そのもの

一般的に、テクノロジー業界、特にスタートアップ企業が次世代の新製品や新サービスを掲げるときには最初に数年先を目標にした大きな構想を発表し、プロトタイピングや実証実験を繰り返しながら製品・サービスの実用化や社会への実装を模索するというアプローチを取る。残念ながら開発を続ける過程において様々な課題にぶつかり、アイデアの実用化が頓挫してしまうことも少なくない。

しかし、BMWのアプローチは少し違う。2013年に発表されて世界に衝撃を与えたプラグインハイブリッドスポーツカー「BMW i8」を皮切りに、運転支援技術、コネクティビティ、電動化技術、シェアード&サービスという4つの領域(ACES)で革新を追求するという「Visionary Mobility」というステートメントを掲げたBMWは、様々な企業と協業しながら新しい技術を搭載した製品を次々に実用化し、実際の製品・サービスとして世の中に問うことでイノベーションに挑戦してきた。つまり、未来の構想を見せるのではなく、BMWが世の中に送り出す新車そのものから未来を生み出してきたのだ。

2013年に発表されたBMW i3とBMW i8

例えば、BMWが電気自動車の技術開発プロジェクト(プロジェクトi)を発足させたのは、2007年。その6年後の2013年にはBMW i8と共に電気自動車「BMW i3」を発表。BMW i3は発売から5年近く経過した現在でも好評なのだという。以来、BMWでは2025年までに25車種の電動化モデルを世に出す計画を発表し、プラグインハイブリッド技術「BMW eDriveテクノロジー」はすでに3シリーズ、5シリーズ、7シリーズをはじめ幅広い車種に搭載されている。

さらに自動車に対してワイヤレス充電を可能にする「BMW Wireless Charging」を搭載した530eが日本導入予定だという。

BMW Wireless Charging

加えて、ドライバーの安全運転を支援するアクティブ・クルーズ・コントロール、アクティブ・サイド・コリジョン・プロテクション、パーキング・アシストといった運転支援技術は多くのBMW車に搭載され、自動運転技術レベル2(部分自動運転)もステアリング&レーン・コントロール・アシストを搭載した上位モデルで可能に。1970年代から40年以上に渡り開発を続けてきたコネクテッド技術「BMW コネクテッド・ドライブ」も着実に熟成を続け、日本でも導入されている。また、シェアリングエコノミーの領域では欧米でオンデマンド・モビリティ「DriveNow/ReachNow」をスタートし、次世代のモビリティにも積極的だ。

こうした動きを一見すると、様々な新技術や新サービスを打ち出すBMWは“時代の波に乗っている”とも受け取れるが、その解釈は正しくない。そこには、BMWが1916年の創業から100年以上に渡って脈々と受け継いできたクルマづくりのフィロソフィーが存在した。ビー・エム・ダブリュー株式会社 デベロップメント・ジャパン テクノロジーオフィスの研究員・テクノロジースカウトである山下祐作氏に、BMWが徹底的にこだわるモノづくりの哲学と未来に向けたビジョンを伺った。

ビー・エム・ダブリュー株式会社 デベロップメント・ジャパン
テクノロジーオフィス研究員
テクノロジースカウト 山下祐作氏

●100年先のモビリティを見据えた、BMWのビジョン

BMWのクルマづくりに対する基本的な考え方について、山下氏は「BMWのクルマづくりは、常に長期的なビジョンをもって行われている」と語る。

産業に関わらず一般的なメーカー企業は3年から5年の中期ビジョンを掲げて製品・サービスの企画・開発を行っているが、こうした企業は世の中のニーズに短期的に応えることができる一方で、経済状況の変化や市場ニーズの変化、経営計画の変更に流されやすいという脆弱な一面も持つ。

しかし山下氏によると、BMWは100年先のモビリティがどうあるのかを常に考え、そのビジョンを徹底的に貫くという企業姿勢を持っているのだという。「BMWは“今までの100年はこうしてきた。だから次の100年はこれを目指す”という意思をはっきりと持っている。プロジェクトiに代表される電動化技術についても、ただ電気自動車を作りたいのではなく、100年後のモビリティを見据えてBMWがチャレンジすべき技術はこれだというテーマを形にしている」と山下氏。100年後に自動車がどうあるべきか、そのビジョンを実現するためにいま実現できることはなにか。それを表現したのが「Visionary Mobility」というステートメントのもとに具現化される新車やサービスなのだ。

山下氏が語る“長期的なビジョンをもったモノづくり”は、様々な製品・技術から伺うことができる。例えば、自動車の様々な装備や機構の制御するコンピュータ通信システム。これまで自動車業界では、CAN(Controller Area Network)という技術を用いてきたが、BMWは2013年に発表した新型X5で、インターネット時代の到来に合わせて「イーサネット」を業界でいち早く車内通信システムに採用した。その構想は実用化した20年以上前から社内で掲げられ、長い時間をかけて開発を積み重ねてきたのだという。

「必ず製品化して世の中に送り出すという熱意のもと、長い期間を掛けて製品を生み出す粘り強さがBMWらしさ。時間は掛かるが着実に実現したい未来にたどり着くために変革を作り出していくという目標に対するコミットメントの強さが、BMWの強みだ」(山下氏)。

●“革新の追求”を続けるというBMWの“普遍的な価値”

加えて、BMWといえば“駆けぬける歓び”というキャッチフレーズを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。BMWはこれまで様々な車種を通じて徹底してドライビングプレジャーを追求し、ドライバーが“運転して楽しい”と思える、ドライバーオリエンテッド=ドライバーを中心に考えたクルマを世に送り出してきた。しかし、山下氏は「“駆けぬける歓び”はBMWのクルマづくりのすべての目標ではない」と語る。

「ドライバーに運転をより楽しいと感じてもらうために、各開発者が“より良いクルマを生み出すために今できるベストはこれだ”というこだわりを結集して生まれたものが、ドライバーの“駆けぬける歓び”に繋がっている。“駆けぬける歓び”はあくまでクルマづくりの結果であり、私たちがどのようなモノづくりを実現したいのか、ユーザーにどのような価値を提供したいのか、その長期的なビジョンを持つことが重要だと考えている」(山下氏)。

もちろん、クルマづくりに取り入れられる技術は時代と共に変化し、新しい技術も次々に誕生していく。そのなかで山下氏は、「Efficient Dynamics(パフォーマンスと燃費性能の両立)とBMWの中心にいるドライバーに“運転して楽しい”と歓んでもらうためのクルマを作り続けるという姿勢は、未来永劫変わることはない。その変わらない価値を実現するためには、常に新しい技術を取り入れて革新を生み出さなければならない」と語る。

BMWは、自動車産業において常に新しい技術をいち早く取り入れて革新を生み出してきた。そして、チャレンジングな新サービスや新機能を、新製品を通じて世の中に提供し続け、それにとどまらず顧客やマーケットの声を大切にしながらさらに試行錯誤を続け新たなチャレンジと共に未来を作り出している。その、常に変革のためにチャレンジし続けるという姿勢が、BMWの変わらない普遍的な価値のひとつなのだ。

「未来の自動運転技術を象徴するコンセプトカー『BMW Vision Next 100』でも、ドライバーは自動運転モードのオン・オフが可能で、革新的な技術を追求する一方でドライビングプレジャーを第一に考えるBMWの姿勢は変わらない。ACES(運転支援技術、コネクティビティ、電動化技術、シェアード&サービス)に象徴される最先端技術を次々と導入しながら、ドライバーに歓んでもらえる革新的なクルマを世の中に送り出していきたい」(山下氏)。

●自動車×デジタル技術で、モビリティの未来はどう変わるのか

BMWが「Visionary Mobility」というステートメントのなかで掲げているACES(運転支援技術、コネクティビティ、電動化技術、シェアード&サービス)という注力分野のなかで印象的なのは、コネクティビティやシェアード&サービスといったデジタル技術の領域への取り組みを積極的に打ち出している点だ。自動車がデジタル技術と融合することで、モビリティの未来はどう変わるのだろうか。

山下氏によると、ひとつは運転中の情報アクセスが変わるということだ。つまり、クルマがインターネットを通じて外部の様々な情報を収集してドライバーに提供することで、ドライバーは運転中に必要な情報や移動先で必要な情報に安全にアクセスできるようになり、行き先の映画館やレストランといった施設の予約も運転中にできるようになる。車外の様々な情報を取り入れることで、移動体験そのものの質が高まるのだ。

加えて山下氏は「デジタル技術を通じてメーカーとユーザーの接点が変わり、直接コミュニケーションできるようになる」と指摘する。一般的に、カーディーラーを通じて販売される自動車業界では、ユーザーであるドライバーとメーカーが直接コミュニケーションを取る機会は多くはない。しかし、様々な車内サービスをメーカーが提供することでメーカーとユーザーは直接繋がる機会を生み出すことができるのだ。「ユーザーから得られるダイレクトなフィードバックが、これからのクルマづくりを変えていき、多彩なサービス展開の可能性が広がる。BMWにとってテクノロジー産業は重要なパートナーであり、デジタル技術の良いところを取り入れてユーザーに新しい価値を提供していきたい」(山下氏)。

一方で、デジタル技術は自動車と社会の関係も変えるという意見もある。つまり、シェアリングエコノミーの発達によるカーシェアリングの拡大だ。BMWも欧米では「DriveNow/ReachNow」というサービスを開始し、このオンデマンド・モビリティの分野では競合企業であるダイムラーAGともタッグを組み、革新的なサービスの拡大に取り組んでいる。

BMWグループとSixt SEによる合弁会社が運営するプレミアム・カーシェアリング・サービス「DriveNow」

山下氏は、この点について「カーシェアリングが進むとオーナーカーが必要なくなるという意見もある。確かに自分でクルマを所有する人は減少するかもしれないが、結果的にカーシェアリングを通じてクルマに触れる人の母数は増えていくのではないか。クルマにふれる機会が増えることで、クルマへの関心喚起が生まれるのではと期待している。購入したい人、シェアしたい人、様々なオプションを消費者に提供していくことが重要だ」と語った。世の中のニーズが多様化するなか、そのダイバーシティに応えるモビリティを提供することも、BMWにとっては重要なテーマなのだ。

●VR、人工知能、IoT・・・先端技術が未来のクルマづくりを変える

デジタル領域の先端テクノロジーは、クルマそのものが作る体験だけでなく、クルマづくりそのものをも変革しようとしている。山下氏によると、BMWではビッグデータや人工知能、ロボティクス、IoTによるセンシング技術などあらゆる先端技術を研究しているのだという。

そのひとつの例が、Mixed Realityを活用した自動車開発だ。Mixed Realityは、現実のプロトタイプと仮想シミュレーションの組み合わせる技術で、車両開発の加速と最適化を実現することが期待できる。BMWはこの分野でリードし、消費者向けエレクトロニクスやコンピュータゲーム分野の技術を自動車開発に積極的に採用しているという。さらに、新世代のデータグラスディスプレイによって、多くのコンポーネントや車両機能を非常に現実的に視覚化できる。このようにして、物理的に作り出したプロトタイプを、仮想シミュレーションという疑似体験によって検証し、自動車開発を洗練させることができるのだ。

「具体的に、BMWがMixed Realityを使用する領域のひとつが、車内インテリアの開発。ここでは、コンピューターで生成されたシミュレーションとインテリアのモックアップが組み合わされている。これによって、車両開発の初期段階で未来のモデルでの室内運転体験イメージを包括的に作成して、ユーザーの視点で検証することができる」(山下氏)。

また、開発プロセスの面では、「モデルベース開発」と呼ばれる手法を1990年代後半に自動車産業でBMWがいち早く取り入れたのだという。これは、もともとミッションクリティカルの多い宇宙開発がきっかけで生まれた開発手法で、すべてのデザイン・開発・設計をシミュレーションベースで行い、開発プロセスをブロックダイヤグラムでつないでロジカルに構築していくというものだ。

このモデルベース開発において重要なのは、開発の初期段階ですべての課題と懸念点を洗い出すこと。検討・検証、事前準備に多くの時間をかけることで、開発が実行フェイズに移行した際にクリティカルな問題でプロジェクトが頓挫する可能性を最小限に抑えるのだという。「すべての課題や懸念点をクリアすれば、あとは開発工程を突き進むだけ。生じる可能性のあるすべての問題を想定の範囲内におさめて対処できるようにすることで、あとになって“実は上手く行かなかった”という事態を最小限に抑える。こうしたロジカルな手法をBMWは業界内でいち早く取り入れてきた」と山下氏は語る。

100年先を見据えた長期的なビジョンから現在実現しうる最も革新的な製品・サービスを構想し、モデルベース開発を用いてあらゆる課題と懸念点を洗い出しながら確実に実現までのプロセスを進めていく。BMWが実践するこうした堅実なモノづくりへの姿勢が、モビリティの未来を生み出す強力な推進力になっているのだ。

●BMWにとって、オープンイノベーションは“新しいこと”ではない

未来のモノづくりにとって、もうひとつのキーワードが大企業とスタートアップ企業がコラボレーションして革新的な製品・サービスを生み出す「オープンイノベーション」だ。しかし山下氏はこのオープンイノベーションについて「BMWにとっては100年前からずっと続けてきたことであり、新しいことではない」と語る。

「BMWは1916年にドイツで航空機エンジンメーカーとして誕生して以来、他社との関わりのなかでイノベーションを創出するという歩みを止めたことはない。今の時代はそのパートナーのひとつとして新しいアイデアをクイックに実用化することができるスタートアップ企業に期待しているが、それはBMWが100年前から今まで綿々と続けてきたイノベーションを生み出す作業のひとつであり、私たちにとっては特別なことではない」と山下氏。BMWはすでにシリコンバレーを拠点としたBMW iVentures、BMW Start-up Garageを通じてスタートアップとの協業を推進して積極的な投資・支援を行っている。しかし、これはBMWがこれまでの100年あまりの歴史のなかで追求してきたイノベーションへの挑戦の一環であり、変わらぬ姿勢のなかで“次の100年”を見据えた新たな挑戦なのだ。

「BMWテクノロジーオフィスでは、ドイツミュンヘン、米国シリコンバレー、中国上海、東京、韓国、シンガポールでテクノロジースカウティングやCVCの活動を行っており、スタートアップ、ソフトウェア、ディスプレイ、ロボティクス、人工知能、電池、デジタル技術、自動運転技術、マテリアルなど様々な領域で国・地域に合わせて重点分野を決定し、情報収集や研究開発の端緒づくりを行っている。日本に関しては、スタートアップ企業はもちろんだが、大企業のなかでもイノベーションに挑戦している研究者や開発者は非常に多い。スタートアップにこだわるのではなく、独創的なアイデアや日本らしい工夫は企業の規模に関係なく発掘していきたい」(山下氏)。

BMW i8 Roadster

そして、こうした変わらぬ姿勢は、これからのBMWが目指すモビリティへの考えにも表れている。BMW i8、BMW i3やプラグインハイブリッド搭載車に代表される電動化技術の実現、様々な運転支援技術の実現、コネクティビティや車内サービスなどの追求など、BMWはこれまでの歴史や伝統を活かしながら先端技術との融合から革新的なクルマづくりに挑戦しているが、山下氏は「伝統と革新の融合はBMWが100年以上に渡ってクルマづくりで体現してきた姿勢そのものである」と語る。

つまり、今はデジタル技術に注目が集まっているが、それは現在フォーカスしている最先端の技術がデジタルであるというだけに過ぎない。自動車開発は100年前から常に新しい技術を追求し続け、これまでの歴史のなかで革新を積み重ねてきた。イノベーションを追求するという姿勢はBMWのDNAであり、そしてその姿勢はこれから生み出される未来のモビリティにも続いていくのだ。

「BMWは自動車業界のなかでも特にテクノロジードリブンな企業であり、その時代の先端テクノロジーの粋を惜しみなく投入した自動車を世に送り出してきたと自負している。ただ、BMWのクルマに搭載された様々な先端テクノロジーは声高にドライバーに主張するのではなく、ドライバーのドライビングプレジャーに寄り添うようにクルマのなかにさりげなく存在している。実際にBMWのクルマに乗って、その楽しさをぜひ体験してほしい」(山下氏)。

BMWのこうした挑戦の歴史から生み出された未来のモビリティは、すぐそこにある。100年以上の歴史が受け継いできた革新的なクルマづくりのDNAによって、これから「Visionary Mobility」というステートメントのもとにどのようなクルマやサービスが世の中に送り出されるのか。これからのBMWの挑戦に注目したい。

(関連リンク)
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この記事はスポンサーとの企画によって制作された特集記事であり、編集部の意見が反映されたものではありません。