迫る「2025年問題」。超高齢社会の課題を解決するイノベーションとは


世界で最も早く高齢化が進む日本。団塊世代が後期高齢者となる2025年には、国民のおよそ3割が高齢者となり、人類が経験したことのない「超高齢社会」を迎える。このいわゆる「2025年問題」を乗り越えるための医療の変革、イノベーションも求められている。そこで今回は、在宅医療のリーディングカンパニーである帝人ファーマ株式会社の在宅医療企画技術部門長・中川誠氏と、高齢社会の課題解決プラットフォーム「Aging Japan(日本次世代型先進高齢社会研究機構)」の代表・阿久津靖子氏に、国内外の現状と課題、求められるイノベーションについて語り合ってもらった。

阿久津靖子 Aging Japan(日本次世代型先進高齢社会研究機構)代表理事
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。筑波大学大学院理科系修士環境科学研究科修了後、GKインダストリアルデザイン研究所入社。プロダクト製品開発のためコンセプトランニング・博覧会コンセプトプランニングや街づくり基本計画に携わる。その後、数社にて商品企画開発(MD)および研究、店舗の立ち上げ、マネジメントを行い、2012年、株式会社MTヘルスケアデザイン研究所を創業。2017年にAging Japanを設立。

中川誠 帝人ファーマ株式会社 在宅医療企画技術部門長
帝人ファーマの研究開発技術本部で、在宅医療機器の研究開発企画、開発プロジェクトマネジメント、バイオデザイン手法による医療イノベーション創出、ベンチャー企業との共同研究開発、医療機器の承認申請・認証申請、海外医療機器製造所の立ち上げなど幅広い業務に従事。現在、在宅医療の事業企画、研究、開発、製造に関わる部署を統括。昨年に続き、「在宅医療QOLコラボレーション:帝人ファーマ×アドライト アクセラレータープログラム」のプロジェクトオーナーを務める。

高齢者が地域で心豊かに生きられる社会をいかに築くか

-まずは超高齢社会となる「2025年問題」の課題についてお聞かせください。

阿久津:今後、首都圏をはじめとした都市部の高齢化が急速に進みます。コミュニティが崩壊している都会の独居老人をいかに支えるか。住み慣れた地域で病気と共存しながら、QOL(クオリティオブライフ、生活の質)を保ち、心豊かに暮らせる仕組みをいかにつくるか。それが大きな課題です。病院や医師などのリソースには限りがあり、医療スタッフの高齢化も進みます。ITによる効率化、オンライン診療や在宅医療の推進は不可欠です。

中川:少子高齢化の日本は今後、支え手が減っていくなか、高齢者のQOLを維持・向上しながら、限られた医療資源や財源をいかに効率的に提供していくかが課題です。そのためにも、これまでの病院完結型の医療から、地域で支える在宅型医療へシフトし、健康維持や予防、重症化の防止に力を入れる必要があります。

-地域包括ケアにより、一人ひとりの高齢者に寄り添い、健康寿命を伸ばすことが大事なんですね。

阿久津:ヨーロッパでは国民一人ひとりにGP(総合診療医)がつき、その人の健康や疾病を総合的、継続的に診て、必要なときに専門医につなげるプライマリ・ケアを実施しています。日本もその方向を目指してはいますが、まださまざまな壁があります。例えば、日本では患者一人ひとりの総合的、継続的な医療データを共有する仕組みが整っていません。また、平均年齢が60歳を超える診療所 (※)の医師が、診療での利便性やセキュリティ対策の点でITツールの導入をためらいがち、といった課題もあります。

(※)病院より規模の小さい診察・治療を行う施設で、入院用ベッド数が20床未満のもの。

中川:日本の地域包括ケアの取り組みやシステムは自治体ごとに異なる部分もあります。それをある程度共通化し、効率的にまわす仕組みづくりも大事だと思います。私どもは医療、介護関係者が医療データをスマホなどでリアルタイムに共有できるシステムも提供しています。最先端のテクノロジーを活用し、セキュリティも担保して、医療関係者の利便性を高めるなど、壁を一つひとつ乗り越えていく必要があると思います。

スタートアップの遊び心や新しい発想を取り込む海外のヘルスケア

(c)Adobe Stock
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-海外における最近の医療動向や、ヘルスケア事情について教えてください。

阿久津:医療とテクノロジーの融合で、先進的なのがデンマークです。個人番号に紐付けられた患者の診療データやヘルス情報が統一されたかたちで継続的に、クラウド上で管理されています。そのデータはGPや医療関係者に共有され、オープンAPI(あるシステムの機能やデータを別のシステムが利用するために、接続仕様を公開すること)でさまざまなベンダーとつながっています。そのデータをもとに、地域の医療政策が立案され、サービスやデバイスの開発も進められています。在宅医療やオンライン診療はもはや当たり前で、自宅で抗がん剤治療をしたり、妊娠中の状況を確認してもらったりする仕組みも実証実験されています。その結果、デンマークの平均在院日数は4日を切っているんです。

-日本が学ぶべき点も多いですね。アメリカやアジアはいかがですか。

阿久津:投資家が多く、産学連携によるエコシステムが整っているアメリカでは、新しい製品やサービスが続々と登場しています。とはいえ公的保険制度が整備されておらず、医療格差も激しいアメリカのやり方を、日本でそのまま適用するのは難しいと思います。アジアの動きで面白いのが、アジア版ウーバー「Grab」が総合プラットフォームとして、医療系サービスを始めていることです。ヘルステックの分野は中国も力を入れており、日本はアジアのなかでやや遅れをとっています。

-海外のヘルステックと日本とで、違いを感じますか。

阿久津:海外では、柔軟な発想の若い世代がどんどん参入しています。私どものイベントでも、脳科学をベースにしたMCI(軽度認知障害)の早期発見に取り組むシンガポールのスタートアップや、認知症やうつの人のためのミュージックセラピーのアプリを開発している人たちに講演してもらいました。デンマークではゲーム業界の若い人たちが、VRを活用したリハビリに取り組んでいます。皆さん、テクノロジーを使って新しいことができないかと、目を輝かせています。この点、日本人はやや真面目です。遊び心や柔軟な発想を持つ異分野の人に、もっと参入してもらいたいですね。

中川:医療業界で長年仕事をしていると、マネタイズも国民皆保険の枠組みで考えてしまいがちです。でも、それでは未病や予防に対するアプローチはなかなか難しい。ここを新しい発想でブレイクスルーできれば、サービスやデバイスの幅も広がってくると思います。

テクノロジーの力で、より開かれた“患者中心”の医療へ

-帝人ファーマが昨年から実施している公募型アクセラレータープログラムは、まさにそのような新しい発想を期待するものですね。

中川:私どもは30年以上、在宅医療のリーディングカンパニーとして、呼吸器疾患の患者さんなどに治療のための機器やサービスを提供してきました。ただ超高齢化社会では、治療以前の健康維持や予防、重症化の防止がますます重要になります。多様化する在宅医療のニーズに応えるためにも、新しい技術や発想によるイノベーションが必要だと考えているんです。

阿久津:日本は公的医療保険が完備されているだけに、医療が医療だけで完結しがちです。スタートアップも規制の多い医療分野に参入するのは大変なので、ヘルスケアの領域にとどまるケースが多いように思います。しかし、患者さんの立場になれば、ヘルスケアと医療は別々のものではありません。本来、一連の流れとしてとらえるべきです。日本ではここをうまくつなげることが、最大のイノベーションなのではないかと思います。

中川:その点も、私どもとスタートアップがコラボする大きな意義だと考えています。私どもは30万人以上の患者さんを1000人以上のスタッフが支えるサービスインフラを持っています。在宅医療の現場で、新しいアイデアの実現可能性やそれによって得られる効果などを評価し、仮説検証のサイクルをまわすことができます。医療機器としての認証を得て、世に出すノウハウも持っています。そのような私どもの経験や知見、ネットワークと、スタートアップの新しい発想やテクノロジーを融合させることで、新しい価値を生み出したいのです。

-昨年の応募内容はいかがでしたか。

中川:初年度から想像以上にすばらしい提案を多数いただきました。疾患のモニタリングに有用なツール、治療の継続や患者の行動変容を促すサービス、認知行動療法のためのアプリ、業務自動化ソリューションやAIロボットを活用した在宅疾患管理など、内容も多岐にわたります。これまで医療・ヘルスケアの分野で仕事をしていない企業からも多数応募いただきました。

2年目の今年はヘルスケアや医療のイノベーションのために、私どもの事業から離れた領域の提案を積極的に採択したいと考えています。とにかく突出した独自のテクノロジーをお持ちの企業、新たな価値を生み出すためのデータ活用に長けた企業、超高齢社会の課題解決に熱い思いをお持ちの方、医療の効率化や地域包括ケアを進めるシステムをお考えの方など、幅広くお待ちしています。

阿久津:在宅医療が普及すると、特殊な世界だった医療が一般化します。今まで一般の人には遠い存在だった医療を、誰にとっても身近で、開かれたものにしなくてはなりません。医療機器においても、誰もが使えるデザインやユーザビリティーが求められます。何よりもこれからの医療は、どこまでも患者を中心に、その生活や健康状態の変化に応じた適切なサポートを行う必要があります。このプログラムが、そんな新しい医療に貢献し、超高齢社会の課題解決につながることを期待しています。

「在宅医療QOLコラボレーション:帝人ファーマ×アドライト アクセラレータープログラム」概要
エントリー期間: 8月1日〜9月14日 (プレエントリー締め切り:8月24日)
説明会    : 8月19日
プログラム詳細ページはコチラ

この記事はスポンサーとの企画によって制作された特集記事であり、編集部の意見が反映されたものではありません。